夜行
夜陰に紛れて目的の場所に赴く。言葉少なの一行とは対照的に、煌々と灯る松明の明かり、それのみが雄弁にして我々をかの地まで導く。長い沈黙はオレを柄にもなく内省的にするようで、今更ながら作戦が相手に伝わっているか不安になった。勿論、ユウトを信じていないわけではない。ただいくらか日にちを急いだため、彼には随分な無理難題を押し付けてしまったと心苦しく思う。それと同時に、後続の有志を無謀な戦いに巻き込んでしまうことへの後ろめたさを感じていた。これら諸々の責任は作戦の成否に関わらず、一人で背負わなければならないものだ。
「デッドリー」
静かなトーンで赤髪を呼び寄せる。
「親方、どうしました?」
「お前に折り入って頼みがある」
赤髪は常ならざる気配を感じたらしく、馬上で背筋を正してオレの話に耳を傾ける。
「万が一の話だ。オレがこの戦いで斃れるようなことがあれば……」
「シガーラ城のユウトに接触しろ。次の作戦はヤツに託してある」
「……わかりました……でも……」
しばらく言葉を詰まらせた後、腑に落ちない様子で続けた。
「どうやって兄貴と落ち合えば……城内に潜入するのは難しいかと……」
「大丈夫、あいつは夜に城外を巡回するはずだ。そこで接触を図れ」
ここでも赤髪に無理を強いていることに気付く。つくづく無能な上司だと自己嫌悪に陥りそうだった。
「もしそれが出来なければ……」
不安そうにこちらを見つめる赤髪を不憫に思いながらも、
「その時は……皆で話し合え」
場当たり的な指示しか与えられなかった。
「親方、まさか……死ぬつもりじゃないですよね……?」
その言葉を受けて、オレはハッと気が付いた。内心に抱えた責任逃れの選択を見透かされたような気持ちになる。慌てて取り繕う。
「そんなわけあるかっ! 万が一の話だ!」
「第一、天下に名立たる強者・このゴスホーク様が死ぬわけなかろう!」
「それよりもお前はどうなんだ? オレのことより自分のことを心配しろ!」
そう吐き捨てるように言うと、赤髪は平謝りに謝って元の隊列へと戻った。そしてふと周りを見渡す。すると今まで辺りを支配していた漆黒の闇は姿を消し、ほのかに明るくなっていた。日の出は近い。前方には敵の牙城、背後には生まれたての太陽、オレは今この時を生きようと心に決めた――。




