表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンチ転生論  作者: 金王丸
21/85

赤髪の夢


 昨日の三人組は約束の時間に王宮までやって来た。オレは事の子細を親方に説明する。黙って聞いているその表情はあまり乗り気ではないようだ。


 「それで……オレにこいつらの面倒を見ろってことかい」

 「お願いします、オレたち強くなりたいんです!」


 赤髪が土に頭をつけながら頼み込む。するとその姿を見て、残りの二人も同じような格好をとった。


 「お前ら、どこぞのごろつきだろう? まさか良からぬことを考えてないだろうな?」


 親方は威嚇でもするように胸の前で拳を突き合わせている。


 「いいえ、もう悪事からは足を洗います! ですから……」


 どうやら彼らなりに真剣な頼みなのだろう。切実な表情から窺い知れる。だが親方の性格からして、ここまで情に訴えられたら断ることは出来ないはずだ。しばらく考える素振りを見せた後、まとまったと言わんばかりに一回手を叩いて言い放つ。


 「わかった、今日からお前たちはオレの弟子だ」

 「ただし、万が一他人(ひと)様に迷惑でもかけようモンなら……タダじゃおかねえぞ」

 「はい、ありがとうございます! 親方!」


 昨日の敵は明日の友、こうして新たな仲間が増えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 あれから数日が経った。人間は増えたが、昼は仕事、夜は修行の生活サイクルは変わらなかった。そして今日もいつもと変わらず、馬屋回りの仕事をしていた。何も変わりない平和な昼下がりだった。


 「パットン、もっと真面目に掃除しろっ!」


 箒を振り回していた緑髪の男を注意する。


 「兄貴、薪が切れそうですよ」


 薪置き場から戻って来た青髪のモライザがオレに声を掛けてきた。


 「後で調達して来なきゃな……」


 そう言った途端、ドーンと遠くで砲声が轟く。


 (なっ、なんだ……?)


 突然のことに全身が固まる。それは絶え間なく辺りに響き渡る。


 「国軍の砲術訓練ですかね?」


 モライザは轟音の方を向きながら言う。


 (なんだよ、訓練か……)


 オレはてっきり敵が攻めてきたのかと背筋を冷やしたが、どうも杞憂だったらしい。そしてふと周りを見回すと、赤髪のデッドリーがいないことに気付く。


 「そう言えばデッドリーはどうした?」

 「水汲みに行ったきり帰ってきませんね……」


 そろそろ帰って来てもいい頃なのに姿が見えない。


 「ちょっと様子を見てくる」


 そう言い残して井戸の方へと向かった。


 (まさか事故とか……)


 良からぬ事態が頭をよぎり、少し不安になる。見た目はアレだが、心の芯はしっかりした男だ。仕事が面倒になって逃げ出したとは思えない。考えれば考えるほど、自然と駆け足になる。


 やがて井戸が見えてくると、その近くで王宮の外を眺めているデッドリーを見つけた。彼はバケツを両手に持ったまま、食い入るようにその方向を見つめていた。


 「おい、デッドリー! なにサボってんだ!」


 オレの声が聞こえているかどうか定かではない。だが一向にこちらを振り返ろうとはしなかった。


 「おい! 聞こえてるのか!」


 グッと肩を掴む。それと同時に彼は人差し指を平原の方に向けてつぶやいた。


 「兄貴、アレやばいっすね……!」


 オレはその方向に目をやる。するとそこで目に飛び込んできたのは、一斉に火を吹く無数の砲門、その眺めは壮観だった。そして彼は飽くことなく、目をキラキラと輝かせながらその光景を見続けていた。


そして一言、


 「オレ、砲兵になりたいっす……!」


 どうしようもないごろつきにも夢が出来た瞬間だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ