成長
《前回までのあらすじ》
王女・マドレ―に言われるがまま街へ繰り出した主人公・高橋勇翔は彼女の本当の一面を垣間見る。しかしその途中で三人組に絡まれ、戦うことに。果たしてその結末は……。
「おらっ!」
まず最初に緑髪の男が棍棒を振りかざしてきた。
(……脇が甘い…!)
すかさず木刀を水平に振り抜く。
「うぅ……」
途端に顔を歪ませ、唸るようにしゃがみ込む。手加減をしなかったからなのか、相当痛そうだ。
「お前……やりやがったな!」
次は青髪の男だ。棍棒を振り回しながら手数を打ってくる。だがオレはビビらなかった。冷静にかつ確実にそれを受け流す。そして相手の疲れが見えたところで、思い切り一撃を加えた。
「いってぇ!!!!」
男は額を押さえてのたうち回る。
「……やるじゃないか……!」
最後の相手は、このグループのボスであろう赤髪の男だ。その男も前の二人と同様に棍棒を振りかざす。
(……重い!)
恐らくこの男は強い。少なくとも前の二人とは違った。こっちの動きを予測して的確に攻撃をしてくる。オレも必死に応戦するが、形勢は一進一退の五分、どちらが勝っても、どちらが負けてもおかしくなかった。
「なかなかやるじゃないか……」
そう言って大声を上げながら殴りかかってきた。今にも木刀が折れそうなくらいの強烈な打撃を受け止める。オレは腹に力を入れてそれに耐える。一方、男も向きになって更に力を込める。
(……今だ!)
その瞬間、オレは力を抜き、棍棒を木刀に滑らせた。そして前につんのめった相手の背後を取って、すかさずその首元に太刀を当てる。
「くっ……」
最後の男も地面に伏せった。こうして戦いは終わった。しかし勝利の実感も喜びもない。ただそこにあるのは、王女様を守ることが叶い、心底安堵した自分だった。
「命拾いしたな」
かつてベルガに言われたセリフを言い放った。だがこの言葉は自然に出たモノではない。然るべき状況になったら言ってやろうと決めていたのだ。
「王女様、戻りましょう」
そう言って三人に背を向けると、
「お、おい! ちょっと待ってくれ!」
赤髪の男がオレを呼び止める。
(まだやる気なのか……)
思わず木刀に手をかける。
「お前、強いな……良かったら弟子にしてくれないか……?」
「今のセリフ、めっちゃかっこよかったっす!」
「うぅ……額が痛い……よろしくっす……」
三人の想像だにしない言葉に拍子抜けした。
(こういう時、どうしたらいいんだ……?)
不良の弟子入りという空前絶後の事態にオレは混乱し、対処に困惑した。そして思い出したのは親方の顔だった。
(そうだ! 親方に弟子入りさせたらいいんだ!)
「よしっ、明日の昼頃、王宮まで来い! 今日は帰れ!」
「はいっ!」
三人は元気よく返事をすると、そこから立ち退いた。
「ご苦労、大事ないか?」
「ええ、なんとか」
そう言い終えるや否や、全身にドッと疲れが押し寄せた。肉体的疲労ではない、神経をすり減らした代償の精神的なそれだ。
「戻らねばな……」
ため息混じりにそう吐き出す彼女はひどく寂しそうだった。




