三悪党
《前回までのあらすじ》
王女マドレ―はいつもとは違った様子で主人公・ユウト(高橋勇翔)を街へと誘う。その真意とは一体……?
「ユウト、あそこの店にも寄っていいか?」
王女の声色がやけに明るい。とても楽しげなその姿はオレの知っている彼女ではなかった。彼女に対し、冷静で何事にも動じない、まさに「鉄の女」とも言うべき印象を持っていたが、本当のところは違うらしい。現代にもいそうな年頃の女の子、傍目にはそう見えた。
(まさか……)
彼女は「王女」ではない。それは当然影武者という意味ではない。本来の「君」は隣にいる「マドレ―ちゃん」なのだ。
(つまり、彼女は『王女』を演じている……)
そう考えるとゾッとしてきた。彼女、いやマドレ―は、王宮という鳥かごに押し込められて、自由に飛ぶことも、鳴くことも出来ない一羽のカナリアなのだ。その心境と言ったら……想像も出来ない。
「ユウト、これは旨いぞ! お前も食べろ」
そう言って渡された肉を頬張る。現代の味覚に慣れ切っているせいか、味が薄く感じる。
「不味かった……か……?」
彼女はいぶかしげに顔を覗かせる。気付かないうちに本音が顔に表れていたらしい。オレはすぐさま取り直す。
「いやいやそんなことないですよ! 美味しい、美味しいです……大将、もう一個くれ!」
その肉を口に放り込む。その固体は思いの外大きく、ハムスターの頬袋のようになってしまった。
「ほうほはは、ほいひいへふ」
「ハハハ、全く話せてないぞ!」
そんな無様なオレの姿を見て、自然と笑いが零れる。常日頃には見せないその表情、それを見ることが出来て、オレは無性に嬉しかった。今日は彼女を精一杯楽しませよう、そう心に決めた。
「あっちの路地には何があるんだろうか、ついて来い!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ~」
跳ねるように先行するおてんば娘を追いかけるように駆ける。見失わないように必死で走る。
彼女は薄暗い路地に入って行った。そこは建物の影になって日が差し込まないせいか、空気もどんよりとしていて、気味が悪い。
「戻りましょうよ! 危ないですって……」
「大丈夫だ、早く来い」
「何が大丈夫だって……? ああん?」
突然、ドスの利いた声がする。目の前には如何にも悪そうな男たち、それも三人組だ。手には黒くシミのついた棍棒を持っている。面倒なことになったなと直感的に思った。
「誰に断ってこの通りを歩いてるんだ? ここはオレ様たちのモンだぞ!」
その内の一人、青みがかった髪色の男が威勢良く突っかかってきた。
(マズい……ここは穏便に……)
そう思うや否や、彼らと彼女の間に割って入り、
「そうか、それは悪いことをしたな……カネだろ? カネを置いて行けば……」
そう言い終える前に彼女が冷たく言い放つ。そこには「王女」マドレ―がいた。
「おいごろつき、ここは私の国だ。そこをどけ」
「ギャッハッハ、『私の国』だぁ? 何言っちゃってんの?」
三人組は揃いも揃って大笑いをする。一方の彼女は全く表情を変えていない。
「面白いじゃねえか……おい、お前! その女置いてさっさと失せな!」
「たっぷり可愛がってやるぜ……」
今度は苔を生やしたような緑髪の男が彼女に手を伸ばす。
「汚い手で触るな!」
腰に差した木刀でその手を払う。そして考えるより先に行動した自分に驚く。内心は怖い。同時に三人の相手をしなければいけないから当然だ。だが不思議と負ける気はしない、というか負けてはならない。
オレの使命、それは夕刻までに彼女を無事王宮まで送り届けることだ。
「畜生~やりやがったな! やっちまえ!」
三人が束になって襲い掛かってきた。オレは……自分を信じ、太刀を構えた――。




