弟子入り
《前回までのあらすじ》
親衛隊長ベルガの言葉に激怒した主人公・高橋勇翔は決闘することになった。果たしてその結末はいかに……。
――カンッ!――
箒の柄がかち合う。両手に有らん限りの力を込め、振り下ろした。だが一方のベルガはそれを片手で受け流す。
「何をそんなに必死になっているんだ」
「うるせぇ! 親方に謝れ」
オレは大立ち回りを演じた。その棒を相手に当てようと、ただがむちゃらに振り続けた。しかし一向に当たらない。ベルガはオレの攻撃をいとも簡単に交わしていた。肩で大きく息をするオレと涼しげな様子のベルガ、決闘が始まってものの二、三分しか経っていないのに両者の様子は対照的だった。
「もうへばってきたのか、口ほどにもないヤツだな」
「好きに言ってろ!」
オレは渾身の一撃を振るう。
「いい加減にしろっ!」
――カーンッ!――
オレの後方で何かが落ちた。手には……何もない。思わず膝から崩れ落ちる。
(なんだ……今のは……)
痺れの残る手をじっと見つめる。あの一振りでオレは悟った。
(この男には……勝てない)
そこでベルガはこちらに棒を向けて静かに言う。
「命拾いしたな」
そしてくるりと背を向けると、
「王女様、帰りますよ」
手に持った棒を投げ捨てると、その場を去った。
「ゴスホーク、ユウト、すまない」
それだけ言い残して王女も歩き出す。その申し訳なさそうな声、憐れむような表情、オレは悔しかった。情けなかった。そして自分の無力さを恨んだ。それら交々の感情が形となって頬を伝う。すると親方はそっとオレの肩に手を置いた。
「ユウト、ありがとうな……」
顔をくしゃくしゃにしながら嗚咽するオレを慰める。
「お゛や゛か゛た゛!」
言いたいことがあるのに言葉にならない。言い出そうと必死に息を整える。その間も親方は黙ったまま、ただ傍に寄り添ってくれた。
「オレ……強くなりたいです……」
それを聞くと、何度も頷きながら、
「わかった、わかったから、オレに任せておけ」
そう言って泣き止むまでずっと背中をさすってくれた。
ようやく落ち着き、歩き出した頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
(オレは変われるだろうか……)
「……あっ!」
その時オレは夜空にキラリと流れるモノを見た。しかし声に出して願いを乗せることはしなかった。ただその行方を黙って追うだけだった――。




