ロークス連邦横断 影の奔流編
◼️ エルダードラゴンの力
バストールの復活を見届けると、エルダードラゴンは去って行った。
(大賢者よ、わかっておるな?)
去り際に一言だけ残し、飛び去っていった。
辺りから圧倒的なプレッシャーと、張り詰めた空気も消える。
和田が葉山の肩に手を乗せ、大賢者/ワーラットへ問いただす。
「おい、エルダードラゴンと知り合いなのか? なんで直接話せたんだ? いったいなんなんだ?」
一気に捲し立てる和田。
「お主は、変わらんな。まあ落ち着け。ワシも三百年生きておるからな。まあ、昔に色々あってな」
やれやれと頭を振る大賢者/ワーラット。
「昔、イストリア建国に我らが携わったのは知っておるな?」
「ああ、実際に見たからな。待てよ、でもエルダードラゴンの記憶なんて無かったよな?」
和田は、かつてハルアットの記憶を直に見ている。
「エルダードラゴンは、ウェスガルガンの台頭を予見し、ワシに働きかけてきたのよ。その接触はエルダードラゴンの精神世界じゃからな、ワシの記憶には残らんのじゃろう」
「そもそも、エルダードラゴンって何者なんだ?」
和田が当然の疑問を口にする。
「それはワシにも完全にはわからん。だがの、この世界と同じくらいに古い。世界の秩序を保つ存在というところか」
「なるほどな。で、なんでさっきは大賢者さんの声が、エルダードラゴンみたいに、直接精神に響いてきたんだ?」
「まあ、これはワシの推測も含むがな…」
大賢者/ワーラットは少し考え込んで、説明を始めた。
エルダードラゴンは秩序を保つ存在として、この世界の理を断ち切る力を持つ。
そのため、本来なら大賢者/ワーラットや、エルダードラゴンとの会話で、何らかの媒介を必要とするのだが、理を無効化しているため、普通に会話できるとの事だった。
「エルダードラゴンは、この世の秩序と言っても良い。生物の命を直接どうこうできんが、空気の巡りや、潮の満ち引きそういった全ての理を無効化できる。だから、この世界を破壊することは容易なのだ」
和田は身震いする。
「ほんとヤバい事聞いてたな俺…」
「ダハハハハ、和田君はせっかちなんですぞ」
豊明が和田をイジる。
「おお、そういえば…トヨアケのスキル不干渉は、エルダードラゴンの力と同じと言える。ただ、エルダードラゴンは世界規模で自由に無効化できるが、豊明は本人のみが対象となる」
皆の視線が豊明に注がれる。
「いやぁ、豊っちはほんとに凄いでやんすね」
「ダハハハハ、意識したこともないんですぞ」
これは本当に、豊明の存在は今後の鍵になるのでないか?
そう思わずにいられない和田であった。
◼️ ウディリスの村
バストールの体調問題も解消し、快適にTTタンクを進めていた。
ロークス連邦に入り、走ること八日。
残りも全道程の2割というところか。
バストールの体調が解消しても、やはり急いだ方が良いとの結論に至り、同じセイダール山脈沿いのルートを辿っていた。
「ダハハハハ、和田君! 前方に村ですぞ!」
外山と運転を交代していた豊明が叫ぶ。
「豊明さん、旅の物資も調達したいので、村に寄りたいです」
窓から顔を出して、和田が豊明に叫ぶ。
「承知した!」
村の手前で、粗末な木の柵で囲まれているのが見える。
ひとまず、小さい村の小さい入り口なので、柵の外で全員降りる。
周囲は標高が高く気温も低い、そして所床に雪が残っていた。
村人は見当たらず、かなり寂れている。
粗末な手前の小屋から、よたよたと老人が出てくる。
「ほぉーっ、これは旅人とは珍しいことで…」
老人は甲高い素っ頓狂な声を上げる。
「どこからかなさったね?」
「はぁ、キレスジレドから来ました。ここはなんという村ですか?」
何があるかわからないので、イストリアの名は伏せると、みんなで決めていた。
「ここはウディリスといいますじゃ。砂漠を越えて来なさったか、さぞお疲れであろう。何にもない村ですが、ここの井戸の水だけは別格ですじゃ!」
そういって、老人は村の真ん中を指差した。
「ガハハハ、そうかそうか、ちょうど喉がからからだ」
バストールが走り出し、井戸の釣瓶を落とし、水を汲み上げる。
── ヒュン、ガタン
水を飲もうとした時、釣瓶に矢が当たりバストールの手から弾き飛ばされた。
「なんだ! どうした?」
バストールが振り返ると、弓をもった長野がいた。
「その水、飲まない方がいいわよ? ここの村、敵しかいないわ」
「そう言うことか!?」
村に入る前に、隠密での索敵を長野へ依頼していたのだ。
すぐさま事情を察したバストールは、ウォーハンマーを構える。
先程までよたよたしていた老人が、素早く建物の裏手に回る。
老人が裏手に消えると、各建物の扉が開き不気味なフードが走り出る。
ざっと見て六名が走り出て来て、ダガーを手に襲いかかる。
ダガーの刃は紫色の液体を滴らせている。
── ヒュン、バシッ
「奴らのダガー、何か塗ってるみたい! 気を付けて!」
長野の放つ矢が、一人の手からダガーを弾き飛ばす。
「鬱陶しいやつらよ!」
── ブゥォォォォァ
バストールのウォーハンマーから風魔法の斬撃が放たれる。
── ドゴォ、ドゴォ、がガッ
ウォーハンマーの斬撃で、三人が弾け飛ぶ。
残りの二人が、増山に迫る。
「タエ様!」
── ゴゴゴゴゴゴッ
外山が手を伸ばすと、増山と外山の周りに土壁が競り上がる。
── ザシュッ
間一髪で土壁にダガーがめり込む。
── ダダダッ、バスッ、バシュ
土壁の反対側へ回り込もうとしたところへ、和田の飛び込みからの斬撃で、フード二人が倒れる。
建物から躍り出たフードは、全て片付けた。
「んー、なんか他にもたくさんいるにゃ! これ、なんか気持ち悪い」
感覚共有での察知で何かを見た葉山が警告する。
── クエェェェェッ
何かの鳴き声が聞こえる。
こちらに迫っているようだ。
鳥のような声の出所を探る。
「く、こいつは厄介なのがきたぞ、コカトリスだ!? 目を合わせるなよ! 石化するからな」
いち早く気がついたバストールが叫ぶ。
あちこちから鳴き声が上がる。
鳴き声の感じから、十数匹はいそうだ。
「葉山! 大賢者さんになんか手がないか聞いてくれ!」
こんなところでコカトリスと遭遇するのは想定外だ。
そのために、石化解除の用意はしていない。
「和田にゃん、今は用意もないしマズイって! 逃げろってさ!」
「なんてこった、みんな…」
和田が撤退を告げようとした時だった。
「ダハハハハ、任せるんですぞ!」
豊明がコカトリスへ突撃している。
「豊明さん! 何してるんです!」
叫ぶ和田の声も無視して、豊明は止まらない。
みるみると豊明の四肢が石化してきた。
和田がなす術もなく息を飲んだ。
── !!
ところが次の瞬間、豊明の四肢が徐々に元に戻って行く。
「ダハハハハ、やっぱりですぞ!」
豊明はコカトリスの背後に回り込み、しっかりと動かないように羽交締めにする。
「長野さん矢を撃ち込んで!」
── ブシュ
コカトリスの頭に矢が突き立つ。
さらに豊明が押さえ込み、長野が止めを刺す。
この行為が繰り返され、あっという間にコカトリスを討伐した。
「皆んなオッケーよ、もう何もいなくなったわ!」
長野が索敵で確認し、敵がいなくなったことを確認する。
「豊明殿、怪我してますね、治します」
増山が豊明の治療に入る。
「豊明さん、びっくりしましたよ」
「ダハハハハ、エルダードラゴンと同じ力と聞いたのでね、石化もしないですぞ!」
呆れてしまった和田だが、豊明がいなかったらと考えて、ゾッとするのだった。
── 村の建物を手分けして確認する
「この村、廃墟だったなこりゃ」
戻って来たバストールが呟く。
「家の外は補修されてたけど、家の中は朽ちてたでやんす!」
どうやら外目だけを補修して、待ち伏せをしていたらしい。
黒死教もなりふり構ってられない、そういう状況なのだろう。
アフテンスラットまであと少しだ。
最終結着をつけてやる、そう思いを新たにする和田がであった。
本作品の世界観や設定の補足情報、登場人物についてまとめました。
あれ、これなんだっけ、誰だっけ、そのようなときにご覧ください。
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