始動
◼️ 世界初の一枚
「あー、ノンノン、待って待って待って、ダメでやんす!」
本当にっちの人達は不器用な人が多かった。
外山の連日のノンノンが響き渡っていた。
「いや、これこうでやんす!」
作業員の簀桁を奪い取ると、外山の熱血指導が始まる。
「角度はこう!そして、こう! ちゃんとみるでやんす!」
こんな調子で紙作りが進められていく。
「タクちん熱いな。ほどほどにな」
「ふぉほほほ、まあ、あれくらいが良かろう。お主らの国はどうか知らんが、うちらは結構適当な奴が多いからな」
ハルアットは身も蓋もなく言い放つ。
外山は、そんなレベルじゃないでやんす!と、内心毒づいていた。あまりに雑すぎるのだ。
先程も、三回だ、三回も注意して、実施して見せたのに、何にも覚えてないときた。
あり得ないでやんす。
「おー、忘れるところじゃったわ。」
「どうした?」
外山は指導しながらもハルアットの話が気になってしまう。
「お主ら、明日は謁見じゃな」
「は? なんの事だ?」
和田は驚いているが、外山は当然だと思っていた。紙の発明は革命的なはずでやんす。
「まずは、先日のマッドライノ討伐、それからカミィ作りによる発展への貢献、充分過ぎる功績じゃな」
「謁見って、アニメでしかみた事ないぞ、でも、そんな王様が謁見するような事なのか?」
━━ 和田っちわかってないでやんすなぁ、これはレボリューションでやんすが! と、外山は内心呟く。
「王様が謁見してどうする。お主らが謁見するんじゃ。やれやれ、考えてもみよ、今国家間でやり取りされる連絡、商人や庶民まで、馬車に積まれた木の板が何枚あると思う?」
「そうだな、そりゃ大変そうだな」
はあ、とため息をつくハルアットと外山。
「主はあほうではないが、ちと鈍いのぅ。馬車何台もの国使、私信が馬車一台に収まるという事じゃ」
「なるほど、かなりのコストダウンできるな」
「カストォダウ?なんのことかわからんが、まあ、お主にわかるように言えば、カミィは全世界の者が喉から手が出るほど欲しいものになる、そういうことじゃ」
間違いなく、紙によって色んなものが、加速するはずでやんす。外山もこの場面に立ち会えたことに、興奮を隠すことができなかった。
「で、できました!」
「あー、ノンノン、そんな触ったら破けるでやんす!」
作業員の歓喜の声に駆け寄る外山。昨日乾燥していた和紙。そうこれが異世界初の異世界人による和紙の爆誕だった。
◼️ レッドアイ
「なあ、俺の格好変じゃないか?」
「和田殿、もうその質問七回目です。変じゃありません。ピシッとしてください」
「いや、王様だよ?謁見だよ?」
そりゃテンパるだろう。
あと、葉山大丈夫か? あいつ、王様に失礼な事しちゃうだろ?
「静かにせんかい、大丈夫じゃ。ワシが引率じゃわい。召喚したわしの義務じゃからな」
大賢者さん、頼もしいぜ。
「みな、行くぞい? 用意はいいかえ?」
「行くでやんす!」
え、なんかタクちんドヤ顔してない?
しかし、なんだこのでっかい扉は。こんな大きくする意味ってなんだ?
ええい、行くしかない…
━━ ゴゴゴゴ、ダーン
いや、この扉の音、有り得ないだろ? どんだけ重いんだよ。めちゃくちゃ豪華だし。
いかん、大賢者さんについて行かないと。
あれが王様か、横にいるのが、宰相って言ってたか?
「止まれ、ワシがするようにせぇ」
ハルアットが小声で囁いてるな。
ん? お、跪くのね。
「大賢者ハルアットよ、その方が召喚せし者を伴ったと聞く。これより、陛下より御言葉を賜る。謹んで受けるように」
宰相さんイケボだなぁ。声めっちゃ通るし。
「余が、ダスタル・ライノー・イストリア六世である。本日は特別に人払いもしおる、楽にして良い」
「陛下、ご機嫌麗しく。このハルアット、召喚に応じました異世界の戦士を連れて参りました」
ハルアット、こんな風に喋れるんだな。
「なるほど、冒険者をしておるとな。名を名乗る事を許そう」
「お主から全員しょうかいするのじゃ」
大賢者さん、小声で助かるぞ。
「私は、日本という国から参りました。和田と申します。それから、横におりますのが、外山、増山、葉山でこざいます」
大賢者さん、こんな感じでいいの?
微かに頷いてるな、セーフなんだな。
「王様、僕ねテイマーだにゃ」
「こら葉山、跪いてろ」
言わんこっちゃない。
「陛下大変失礼を致しました。この者あまり礼儀をわきまえず…」
「はははは、良い良い。構わん。人払いもしてある。しかし、汝らの名は言い難いものじゃ」
なんか許されたー。良かったぁ。
でも、なんか宰相さん、なんか怒ってない?
「今回はな、汝らに報いるため呼んだのじゃ。ワンジャンス、頼む」
「はっ、それでは陛下に代わり、このワンジャンスより論功行賞の儀、進めさせていただきます」
━━ 行われた論功行賞は以下のようなものだった
まずは、マッドライノ討伐に対する褒賞。これは王都城門前で、マッドライノの突進を防いだ功績、それから、紙作りの基盤を固め、量産体制に入った事への功績、この二点に対するものだった。
以上の功績を認め、冒険者ランクのシルバーへの昇進、並びに金貨五百枚を進呈する、そう締め括られた。
「すまんの、今回は人払いの非公式ゆえ、この程度の報酬となること許してくれ。ただ、今後はお主らは嫌でも表舞台に出ることとなる。その暁には、働きに応じ褒賞も弾むでな」
なんかだか、現実味ないよな。
ゲームやってる感覚かも。
「ところでじゃ、汝らパーティ名などあるのか?」
「特にございません」
「ならば、これを機に名をつけるが良かろう」
困ったな、まさかこんな展開になるとは。
タクちん、タエちゃん、任せたって眼差しだなぁ。
うえ、なんか葉山目を輝かせてないか?
「葉山、何も言わなくて良いぞ」
「ちょっといつも扱いがひどいにゃ!」
んー、なんか予想はできるが…
「わーった、一応聞こうか」
「僕ね、猫猫プリンがいい!」
「はい却下!」
「ぷー、本当ひどいよー」
困ったな、んー、スリーマウンテンズ?って、俺入ってないしな。
赤島倉庫…レッドアイランド…なんか締まらんな。
あ、これだ。
「では、レッドアイに致します」
「ふむ、レッドアイとな。なかなか良い名前じゃの」
良かった。猫猫プリンにならなくて。
でも、レッドアイも良さげだが、ちょっと恥ずかしい気もするがな。
「では、レッドアイにクエストを依頼する。ワンジャンス頼んだ」
「陛下に代わりまして、レッドアイへのクエストを申し渡す。キレスジレド国境付近の調査を依頼する…」
━━ ワンジャンス宰相から聞かされた依頼は少々危険な匂いがした
先月ごろからキレスジレド国境付近の通行で、支障が出ているという事だった。冒険者、商人が行方不明になる事案が多数発生していることから、冒険者ギルドもクエストを発行。
しかし、クエストを受けたパーティーは誰一人戻らず、クエストの難易度がアイアンからシルバー以上に格上げされた。
また、タイミング悪く、ゴールド以上のパーティが国外へ出払っており、シルバーパーティー中心での解決に当たっていた。
だが、そのシルバーパーティーも戻らない。
という経緯らしい。
なるほど、これはいくら俺が鈍いとか言われてもわかる。
このためのシルバー昇進なんだと。
「レッドアイとして、クエストお受けします。ただお許しいただきたい事がございます」
「ふむ、申してみよ」
「まだ誰一人戻らない、ということを勘案しますと、危険度は甚だしく、我々シルバーに昇進したとはいえ、圧倒的な経験不足でございます」
大丈夫かな?俺おかしくないかな?
ハルアットが微かに頷いてる。よし行けてそう。
「一旦、周囲の調査を入念にし、なんらかの痕跡を見つけて参ります。その結果により、必要であれば充分な用意をした後に、再度解決に向け動きたく存じます」
緊張するなぁ、噛まずに言えたぞ!
「なるほど、汝の言やもっとも。なかなか慎重じゃな。ふむ、ではレッドアイよ、頼んだぞ」
━━ 深々と首を垂れる面々
いやー、本格的な冒険始まったなこれ。
大丈夫なのか!?
いざ、キレスジレド国境付近へ、だな。




