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定年間近の左遷先が冒険者ギルドなんだが!?  作者: Jiru-man


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20/20

始動

挿絵(By みてみん)




◼️ 世界初の一枚


「あー、ノンノン、待って待って待って、ダメでやんす!」


本当にっちの人達は不器用な人が多かった。

外山の連日のノンノンが響き渡っていた。


「いや、これこうでやんす!」


作業員の簀桁(すけた)を奪い取ると、外山の熱血指導が始まる。


「角度はこう!そして、こう! ちゃんとみるでやんす!」


こんな調子で紙作りが進められていく。


「タクちん熱いな。ほどほどにな」

「ふぉほほほ、まあ、あれくらいが良かろう。お主らの国はどうか知らんが、うちらは結構適当な奴が多いからな」


ハルアットは身も蓋もなく言い放つ。

外山は、そんなレベルじゃないでやんす!と、内心毒づいていた。あまりに雑すぎるのだ。


先程も、三回だ、三回も注意して、実施して見せたのに、何にも覚えてないときた。

あり得ないでやんす。


「おー、忘れるところじゃったわ。」

「どうした?」


外山は指導しながらもハルアットの話が気になってしまう。


「お主ら、明日は謁見じゃな」

「は? なんの事だ?」


和田は驚いているが、外山は当然だと思っていた。紙の発明は革命的なはずでやんす。


「まずは、先日のマッドライノ討伐、それからカミィ作りによる発展への貢献、充分過ぎる功績じゃな」

「謁見って、アニメでしかみた事ないぞ、でも、そんな王様が謁見するような事なのか?」


━━ 和田っちわかってないでやんすなぁ、これはレボリューションでやんすが! と、外山は内心呟く。


「王様が謁見してどうする。お主らが謁見するんじゃ。やれやれ、考えてもみよ、今国家間でやり取りされる連絡、商人や庶民まで、馬車に積まれた木の板が何枚あると思う?」

「そうだな、そりゃ大変そうだな」


はあ、とため息をつくハルアットと外山。


「主はあほうではないが、ちと鈍いのぅ。馬車何台もの国使、私信が馬車一台に収まるという事じゃ」

「なるほど、かなりのコストダウンできるな」

「カストォダウ?なんのことかわからんが、まあ、お主にわかるように言えば、カミィは全世界の者が喉から手が出るほど欲しいものになる、そういうことじゃ」


間違いなく、紙によって色んなものが、加速するはずでやんす。外山もこの場面に立ち会えたことに、興奮を隠すことができなかった。


「で、できました!」

「あー、ノンノン、そんな触ったら破けるでやんす!」


作業員の歓喜の声に駆け寄る外山。昨日乾燥していた和紙。そうこれが異世界初の異世界人による和紙の爆誕だった。


◼️ レッドアイ


「なあ、俺の格好変じゃないか?」

「和田殿、もうその質問七回目です。変じゃありません。ピシッとしてください」

「いや、王様だよ?謁見だよ?」


そりゃテンパるだろう。

あと、葉山大丈夫か? あいつ、王様に失礼な事しちゃうだろ?


「静かにせんかい、大丈夫じゃ。ワシが引率じゃわい。召喚したわしの義務じゃからな」


大賢者さん、頼もしいぜ。


「みな、行くぞい? 用意はいいかえ?」

「行くでやんす!」


挿絵(By みてみん)


え、なんかタクちんドヤ顔してない?

しかし、なんだこのでっかい扉は。こんな大きくする意味ってなんだ?

ええい、行くしかない…


━━ ゴゴゴゴ、ダーン


いや、この扉の音、有り得ないだろ? どんだけ重いんだよ。めちゃくちゃ豪華だし。

いかん、大賢者さんについて行かないと。


あれが王様か、横にいるのが、宰相って言ってたか?


「止まれ、ワシがするようにせぇ」


ハルアットが小声で囁いてるな。

ん? お、跪くのね。


「大賢者ハルアットよ、その方が召喚せし者を伴ったと聞く。これより、陛下より御言葉を賜る。謹んで受けるように」


宰相さんイケボだなぁ。声めっちゃ通るし。


「余が、ダスタル・ライノー・イストリア六世である。本日は特別に人払いもしおる、楽にして良い」

「陛下、ご機嫌麗しく。このハルアット、召喚に応じました異世界の戦士を連れて参りました」


ハルアット、こんな風に喋れるんだな。


「なるほど、冒険者をしておるとな。名を名乗る事を許そう」

「お主から全員しょうかいするのじゃ」


大賢者さん、小声で助かるぞ。


「私は、日本という国から参りました。和田と申します。それから、横におりますのが、外山、増山、葉山でこざいます」


大賢者さん、こんな感じでいいの?

微かに頷いてるな、セーフなんだな。


「王様、僕ねテイマーだにゃ」

「こら葉山、跪いてろ」


言わんこっちゃない。


「陛下大変失礼を致しました。この者あまり礼儀をわきまえず…」

「はははは、良い良い。構わん。人払いもしてある。しかし、汝らの名は言い難いものじゃ」


なんか許されたー。良かったぁ。

でも、なんか宰相さん、なんか怒ってない?


「今回はな、汝らに報いるため呼んだのじゃ。ワンジャンス、頼む」

「はっ、それでは陛下に代わり、このワンジャンスより論功行賞の儀、進めさせていただきます」


━━ 行われた論功行賞は以下のようなものだった


まずは、マッドライノ討伐に対する褒賞。これは王都城門前で、マッドライノの突進を防いだ功績、それから、紙作りの基盤を固め、量産体制に入った事への功績、この二点に対するものだった。


以上の功績を認め、冒険者ランクのシルバーへの昇進、並びに金貨五百枚を進呈する、そう締め括られた。


「すまんの、今回は人払いの非公式ゆえ、この程度の報酬となること許してくれ。ただ、今後はお主らは嫌でも表舞台に出ることとなる。その暁には、働きに応じ褒賞も弾むでな」


なんかだか、現実味ないよな。

ゲームやってる感覚かも。


「ところでじゃ、汝らパーティ名などあるのか?」

「特にございません」

「ならば、これを機に名をつけるが良かろう」


困ったな、まさかこんな展開になるとは。

タクちん、タエちゃん、任せたって眼差しだなぁ。

うえ、なんか葉山目を輝かせてないか?


「葉山、何も言わなくて良いぞ」

「ちょっといつも扱いがひどいにゃ!」


んー、なんか予想はできるが…


「わーった、一応聞こうか」

「僕ね、猫猫プリンがいい!」

「はい却下!」

「ぷー、本当ひどいよー」


困ったな、んー、スリーマウンテンズ?って、俺入ってないしな。

赤島倉庫…レッドアイランド…なんか締まらんな。

あ、これだ。


「では、レッドアイに致します」

「ふむ、レッドアイとな。なかなか良い名前じゃの」


良かった。猫猫プリンにならなくて。

でも、レッドアイも良さげだが、ちょっと恥ずかしい気もするがな。


「では、レッドアイにクエストを依頼する。ワンジャンス頼んだ」

「陛下に代わりまして、レッドアイへのクエストを申し渡す。キレスジレド国境付近の調査を依頼する…」


挿絵(By みてみん)


━━ ワンジャンス宰相から聞かされた依頼は少々危険な匂いがした


先月ごろからキレスジレド国境付近の通行で、支障が出ているという事だった。冒険者、商人が行方不明になる事案が多数発生していることから、冒険者ギルドもクエストを発行。


しかし、クエストを受けたパーティーは誰一人戻らず、クエストの難易度がアイアンからシルバー以上に格上げされた。


また、タイミング悪く、ゴールド以上のパーティが国外へ出払っており、シルバーパーティー中心での解決に当たっていた。


だが、そのシルバーパーティーも戻らない。


という経緯らしい。

なるほど、これはいくら俺が鈍いとか言われてもわかる。

このためのシルバー昇進なんだと。


「レッドアイとして、クエストお受けします。ただお許しいただきたい事がございます」

「ふむ、申してみよ」


「まだ誰一人戻らない、ということを勘案しますと、危険度は甚だしく、我々シルバーに昇進したとはいえ、圧倒的な経験不足でございます」


大丈夫かな?俺おかしくないかな?

ハルアットが微かに頷いてる。よし行けてそう。


「一旦、周囲の調査を入念にし、なんらかの痕跡を見つけて参ります。その結果により、必要であれば充分な用意をした後に、再度解決に向け動きたく存じます」


緊張するなぁ、噛まずに言えたぞ!


「なるほど、汝の言やもっとも。なかなか慎重じゃな。ふむ、ではレッドアイよ、頼んだぞ」


━━ 深々と首を垂れる面々


いやー、本格的な冒険始まったなこれ。

大丈夫なのか!?

いざ、キレスジレド国境付近へ、だな。


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