第11話 マジカルファンシーX
ここに到達するまで無数の怪人と戦闘員との戦闘を繰り返して、いま正に彼女たちは敵の本拠地に踏み込もうとしていた!
「さて、行くよ!」
赤い髪に燃炎の剣をひと振りして、気合いを入れたみりは、医療研究棟と書かれた鋼鉄の扉を蹴り開けて、中に躍り込んだ。
「みり! ちゃんと何があるか確認してからって、いつも言っているでしょ!」
るるの注意も耳に入れず、目の前に立ちふさがる戦闘員に袈裟がけの一刀を加えると、付近の敵をバッサバッサと切り倒して掃討していく、るるも近場の敵をマジックロッドで殴りつけてボコボコのミンチに変えていく。
戦闘員は脳にロボトーミー手術を施されて、教団に絶対服従する元人間で、怪人は戦闘員の力をさらに強化した改造人間だった。
魔法少女と成り強化された彼女たちにとって雑魚キャラだったが、ここが本部施設だけに、どのような敵が待ち受けているか分らない。
「本当に敵しかいないのかしら?」
彼女たちは変身すると、視界の隅にステータス表示が現れ、視覚の邪魔をしない様に、レベルや能力が常に表示されている。
敵を倒すと経験値が加算されてレベルや能力がアップして行くのだが、敵ではない一般人に危害を加えると、経験値が激減しレベルが下がる。
敵は赤色のポイントが浮かんで見えるので、瞬時に敵を判別して片付けて行く、今回は敵だらけで、今のところ一般人は見当たらない。
「あらら、もうやっつけちゃったんだ!」
ゆいは、最後に室内に入ってきて鉄扉を閉めながら、
「次は先頭に出て頑張るね!」
てへ、ぺろといった感じでゆっくりと、みりの隣に並ぶ。
「いつも通りのフォーメーションで行くよ!」
「はーい!りょうか~い!」
「わかりました。」
みりとゆいは並んで一歩を踏み出す。
と、ホールの出口付近に科学者風の白衣を着た男と戦闘員がバラバラと入ってくる。
「魔法少女よ!よくぞここまでたどり着きました。
しかし、ここであなた達もおしまいです!
これから最強の怪人があなたたちの相手をします。
さあ、最強の怪人ゴリアテス入ってきなさい!」
と白衣の男は建物の入口である鉄扉をジッと見つめる。
「なんですって!」
「挟み撃ち?」
魔法少女も迎撃態勢を取りつつ、鉄扉側と白衣男の両方に備える場所に移動して体制を立て直す。
そして、お互いをにらみながら、いくばくかの時間が過ぎていく。
「んっ!・・・・はったり?」
みりは素早く動いて炎の剣で白衣の男を一刀のもとに切り捨てる。
ゆいはパンチで周囲の戦闘員の顔面を陥没させてノックアウトしていく。
るるもマジックロットの先から青白い光弾を放って敵を倒していく!
「何だったんだ、あれ?」
倒れた白衣の男と戦闘員たちを見下ろしてみりが呟いた。
「何か切り札が有ったのか? はったりで時間稼ぎでしょうか?」
るるが何事か考えながら疑問を口にする。
「もう~きったない~っ!」
倒れている白衣男の袖へ、拳に付いた血しぶきを擦り付けながらゆいが叫んでいる。
「さてと!先に進むよ!」
白衣の男が何をしようとしていたのかは分からない。
ただ、今は死体となって血の海に転がっているだけである。
その横を魔法少女たちは颯爽と通り過ぎて行くのだった。
その後散発的な抵抗に遭いながらも魔法少女たち三人は、4階の両開きの扉の前に立っていた。
「ここの部屋の中に魔力反応の源があります!」
るるは扉の中を睨みつけ、そして自分に言い聞かせるように、マジックロッドを構えながら言葉を発する。
「ボス部屋って訳だな、気合入れていくよ!」
キラリと輝く歯を見せて、獲物に近づく猛獣の様にみりは剣を構える。
「了解~!魔力回復薬飲んどこ~!」
いそいそと腰のポーチから小瓶を取り出して、一気に小瓶の中の液体を飲み干す。
「準備は良い?」
扉を勢いよく押し開けて、三人の魔法少女は部屋の中に突入する。
部屋は大きなホールの様で、中央の高くなった壇の上に数名の男女が立っている。
中央にはやたらと飾りのついた神官服の様な格好の男が居て、こちらを睨んでいる。
教団の高位神官と、そのお付きの人らしく思えた。
「よくぞここまで辿り着いたな!魔法少女よ!
私は魔人様に力を授かりし、神聖なる大神官ネメタス!
最高傑作の怪人ゴリアテスとその戦闘員を倒して、ここまで来たこと誉めてやろう。」
「お前たち魔法少女に最後の敬意を払おう!さあ、ここに名乗りを上げるが良い!」
ネメタスは凄まじい魔力を放出している額のサークレットを輝かせて、こちらを見下ろしながらニヤリと笑った。
「炎の煌きは正義の光、美少女戦士ファンシーみり!」
「青き光は正義の裁き、美少女戦士ファンシーるる!」
「緑あふれる生命の力、美少女戦士ファンシーゆい!」
「「「三人そろってマジカルファンシーX!」」」
三人の決め台詞とそれぞれの決めポーズが決まった、大神官は額のサークレットに向けて手を動かした瞬間!
ボスッ!と何か柔らかく湿った物に固いものが当たった様な音がして、大神官ネメシスの顔面から赤い霧の様な飛沫が飛び散った。
額のサークレットはバラバラに砕けて床に飛び散り、破裂した顔面から眼球が飛び出して、魔法少女たちの方に転がって行った。
「「「エッ!」」」
間抜けな顔をして大神官を見つめる三人。
額から鼻にかけての大部分のパーツが粉々の霧状ペーストに成って飛び散り、脳と脳漿がゲル状のブツブツとした粥の様にダラダラと床に流れていく。
そのままゆっくりと棒倒しの様に、正面に倒れこみ、頭に辛うじて溜まっていた脳と脳漿をぐしゃりと壇上の床一面にぶちまけた。
「大神官様!」
壇上にいた面々は、大神官が倒れた時に初めて異変に気が付いた様子で、わらわらと大神官に近寄って慌てふためいてい居る。
おぞましい事の成り行きを見てみりが呟く。
「るる、ゆいなんかやった?」
自分の体を抱きしめながらつま先立ちに成って、少し腰が引けた状態でゆいが問う。
「みりかるるが新技出したんだよね? グロすぎる!」
少し蒼白になった顔で、るるがマジカルロッドを抱き寄せて、
「私は何もしていません!」
大神官は倒れた、恐らく有ったであろう必殺の何かを使う前に。
その為に呼ばれていた側近たちが慌てふためく中、いち早く立ち直った、三人の魔法少女によって全員が倒された。
これまでの膨大な魔力反応は消失した!
ミッションコンプリートで今回のクエストは完了したのだ。
目の奥に映るステータス表示はレベルアップを告げて、能力値が加算されたが、彼女たちに達成感は得られなかった。
何か釈然としない奥歯に物が挟まったままの様な感覚に陥っていた。
しかし、まだ魔人の本体を倒した訳ではない。
次の使命が彼女たちに待ち受ける。
がんばれ!魔法少女、戦え!マジカルファンシーX!




