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第10話 ビルからの狙撃そして


すでに深夜になる時刻、教団施設の中心部では、無数の戦闘員の死体が散乱している。


赤い髪に燃え上がる様な炎の剣を手にする少女が一人、筋肉質の引き締まった体躯、活発なスポーツ万能を思わせる。


快活で明るい雰囲気だが、今は鋭い眼光で何かを見つめる。


「みり、何か見つけたのですか?」


「るる、あれを見てごらんよ、あの建物の中に強い魔力反応を感じるよ!」


るると呼ばれた少女はロングストレートの黒髪をさらりと振って、華道や茶道の所作を思わせる清楚な立ち居振る舞いで、みりの見つめる方向にキリリと視線を向ける。


「なになに、二人してどうしたの?」


後から追い付いてきた茶髪の少女は、たわわな胸をワッサワッサと振り回しながら、辺りをキョロキョロと警戒しつつ近づいてくる。


「経験値はかなり稼げたし、回復薬が厳しくなってきたから終わりにしたいな~!」


「ゆい!何言ってんの?今回のクエスト期限今日までなんだよ!

 教団病院のボス攻略まで終われないよ!」


「だったら魔力回復薬ちょーだいっ!」


わざと胸の膨らみを強調するように、二人に向かって両手を差し出す。


「あまり魔力を使いすぎると後がキツイですよ!

 ゆいは遠距離攻撃を控えてくれないと魔力枯渇しますよ!」


るるは注意を即しながら、懐から小瓶を取り出してゆいに差し出す。


「るる、大好き~っ!」と小瓶を手にして腰のポーチにしまい込む。


「うちの攻撃は基本殴りだからさ~血とか汁が飛び散って汚くて~!」


ポニーテールの髪をフルフルと振り回し、自らの体を抱きしめつつ全身で体をくねくねとよじってさも嫌そうに震える。


「さて、行くよ!」


今回は教団病院施設の最深部、教団医療研究棟最上階が目標だった。


教団は普通の病院を装って、一般人に診療を施している。


入院患者に洗脳教育を受けさせて、教団の信者に成った者も多い。


そうした教団の人員の確保と資金調達によって魔人を崇拝する教団員が作られる。


この施設のどこかで拷問や人体改造手術が行われているという。


また、その中から怪人や戦闘員を作り出しているのもこの施設だ。


ここに到達するまで無数の怪人と戦闘員との戦闘を繰り返し、いま正に彼女たちは敵本拠の建物に踏み込もうとしていた!


「あっ!あいつら建物に入って行っちゃったよ!」


教団研究棟から300mほど離れた高層ビルの屋上、最上階からライフルスコープ越しに三人の魔法少女の戦いを観察していたファンシーりなは、やたらめったらに有象無象の怪人や戦闘員を切る殴るぶちのめすしながら、無人の野を行くがごとく進んでいく三人の様子を観察していた。


魔法少女って、まさしくバイオレンス!


三人から目を離して、周辺の警戒に入ると、教団の第一ビル屋上と第二ビル屋上に二名一組の戦闘員がいる。


あれは観察要員と通信員の組み合わせチームだ。


研究棟の4階にも何名かゴテゴテしたのがいる。


先ほど研究棟の裏側にいた別動隊がゆっくりと警戒しながら、彼女たちの入って行った扉に向かって歩いて行く、動きに無駄がなく、これまでのザコとは違う事がすぐにわかった。


恐らくこれは罠だ!魔法少女を捕えるための作戦が有るに違いない!


この研究棟は全ての窓に鉄格子が付いていて窓からの脱出は困難であり、入口は鋼鉄製の扉に成っていて、やたらと頑丈な作りだ。


まずは、第一ビルと第二ビルの監視チームを無力化する事に決めた!


第一ビルの一人は双眼鏡を首にかけてしきりと、無線手に怒鳴り散らしているさまがスコープ越しにも分る。


無線手よりも上位者なのだろう、無線手は首を縮めて聞いている。


まずはクロスラインを観察要員の額に合わせて射撃する。


側頭部の耳の少し上にヒットし、動きを止めて前のめりにゆっくりと倒れ込む、無線手は何が起きたのか分らず、倒れた観察要員を見つめている。


すぐにクロスラインを無線手に合わせて第二射を放つ、無線手は丁度振り向いた瞬間、左目にヒットし斜め右後方の後頭部を貫通して、盛大に脳味噌をぶちまけながら仰向けにぶっ倒れた。


続いて第二ビル屋上に目を向けると、観察要員がこちらに背を向け、手すりにもたれて前のめりに成りながら足元の何かを見ており、無線手は観察要員を正面に見ながら、彼の左側に立って大型の無線機を右耳に当てて何かを話し込んでいるようだ。


まず、無線手の無線機に一撃打ち込む、無線機を貫通した弾丸が頭部に到達したらしく、無線機の部品がバラバラに吹き飛んで、膝からゆっくりと正座するように座り込んでいく。


音に気が付いた観測用員が振り向く動作を見せる前に、第二射を放った。


後頭部から進入した弾丸は、脳内を貫通し額にバカでかい穴を穿って盛大に脳漿をぶちまけながら、体は手すりを乗り越えてビルの下に落下して行った。


魔法少女たちが入って行った鉄扉前に戦闘員を並べて、怪人がなにかの訓示をしているようだ。


4名の戦闘員が怪人の前に並んで整列し、じっとしている。


訓示をたれている怪人の頭部に照準を合わせる。


異様に大きな頭部には、キノコの様なデコボコが出来ており、手や足には鋭い黒い爪が生えている。


戦闘員は黒いお揃いの戦闘服を着用しており、胸には教団のバッジと教団での階級を示す階級章が見て取れる。


まずは怪人にクロスラインを合わせて射撃を行う、真っ先に最も高い脅威から無力化していくのが定石だ。


頭部中央のコブに小さい赤い穴が開いて、一瞬動きが停止する。


その後の経過を見ずに戦闘員のうち、最も左側から順に腹部に銃撃を加えていく、異変に気が付いて回避行動をとる相手には、的の大きな腹部を狙う。


それぞれ戦闘員の腹に着弾し、腸と内臓をぶちまけながら叫び、這いずり回っている。あの状態ならば全員助からない。


最初に撃った怪人は、左回りにゆっくりと体を回転させており、頭の側面半分がこちらを向いた。


弾丸が貫通して飛び出した側の頭は、割れたスイカの様に頭蓋がぶっ飛んで断面が見える。


ギザギザの割れ目からジクジクと体液を噴きこぼしており、キリキリと回転しながらやがて大地にぶっ倒れた。


地面で這いずり回っている戦闘員二名の上にぶっ倒れて、全員が動かなくなった。


建物の中を見通す事は出来ないが、建物の3階窓ガラスに赤い炎や青い稲妻の様な

光がひっきりなしに瞬いており、魔法少女たちが健在であるようだった。


さらなる脅威の存在が無いか病院敷地内の捜索を行うが、建物の外には怪人や戦闘員の姿を発見することは出来なかった。


魔法少女たちの侵入した建物の最上階4階はホールに成っていて、スコープ越しにみても柱がない体育館の様な広い大部屋だ。


ちょうどこちらの側からは後ろを向いていて、ゴテゴテとした飾りのついた衣装を着た怪人の様な人物?が中央に立っているのが見える。


その中心人物の左右に数名の、普通の戦闘員とは違う衣装を着た人物?が立っている。


ちょうど中心人物が右手を上げて何かに対して指をさして、左右に控える者たちに合図を送ろうと動いたタイミングに合わせて、弾丸を後頭部に送り込んだ。




それを合図に乱戦が始まったようで、炎や青い稲妻や血飛沫が噴き上がっているのが見られた。


「あちらさんは、どんな感じ?」


『みり、るる、ゆいが怪人の大神官に名乗りを上げている最中に、大神官の後頭部に弾丸が命中しました。

 両目から眼球が吹き飛んで床に落下し、額中央に直径約100mmの穴が開いてから大神官は倒れました。

 恐らく大神官は即死していて、身に着けていた額のサークレットも同時に破壊されました。

 現在は魔法少女3名が側近などの幹部を掃討中です。』


「では、任せても大丈夫だろう、こちらは本業に戻るとするか!

あのゴテゴテ飾りの付いたやつ大神官だったんだ。」


素早く伊藤琢磨の体に戻り、掃除用具の乗ったカートに有るバケツの中にぷぷるんを押し込むと、清掃用具カートを押しながら、夜間ビル清掃員のアルバイトに戻って行くのだった。


教団施設に襲撃する計画が分かった時に、狙撃に適したビルの清掃バイトに応募しており、短期ビル清掃員として採用されていた。


雑巾やモップの濯ぎのために自由に屋上へ出られるのが決め手だ!


上層階の清掃とモップ掛けを夜通し行うヘビーな作業だが、時給が高く魅力的なバイトだった、教団施設襲撃が速く終わったので、きちんと清掃作業が出来そうだ。


「俺には暮らしを維持していく必要がある!」


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