遭遇
1階まで下りて靴を履き替えて、校舎を出たところで樹と別れた2人は、駐輪場を出たところでそれぞれの家の方向に向かうために別れた。そして陽葵は自転車に乗って帰途につく。正門を出て400メートルほど進んだところの交差点で信号が赤に変わり、陽葵はそこで止まった。片足を地面につけた彼女の隣で、後ろから来ていた自転車が同じように停止する。陽葵が何となく横を見ると、そこに居たのは同じ制服を着た生徒だった。
「……どうも」
メガネをかけた真面目そうな男子生徒。彼は陽葵と目が合うと、淡々とした声で言った。
「同じクラス、だよね。今日、かなり目立ってたから知ってる。君は僕のこと、覚えてはないと思うけど」
「う、うん。……ごめんなさい」
「別に謝ることじゃないと思う。まだ会ったばかりだし、中学も違うだろうから初対面だよ。僕は燕谷理仁。よろしく」
「あ、私は佐藤陽葵。……その、よろしくね」
お互いに名乗り合って、その後少し沈黙が続く。信号はとっくに青になっていた。
「……あ。そろそろ行かないと、だね」
点滅しだした青信号を見て、陽葵は急いで自転車に跨がる。理仁と名乗った男子生徒は、その横で同じように自転車に乗った。
「僕は4丁目なんだけど、君は?」
「あ、私も4丁目だよ。偶然だね」
「そうだね。……朝、大騒ぎしてたのは彼氏?」
「ち、違うよ! ……えっと、色々あって……告白されたりしたけど、まだ付き合ってないから!」
「そう。別に僕には、どうでもいいことだけど。……ここで会ったのも何かの縁だし、1つだけ忠告しておくよ。玲央が君のことを気にしてる。どうしてかは知らないけど。どこかで、絡んでくることもあるかもね」
帰り道。理仁と並走しながら、陽葵はそんな話をしていた。話の途中で、聞き覚えのある名前が混じる。陽葵は目を見開いて、その場で止まった。理仁は気にせず、先に進んでいく。
「……まあ、アイツは見た目で損してるだけで悪い奴じゃないから。怖がらなくてもいいと思う。じゃあね。また明日、学校で」
最後にそんな言葉を残して。彼は陽葵の前から去った。残された陽葵は自転車から下りて、スマホを取り出した。画面に映る、御門樹という名前を見て。彼女は少し迷ったが、結局電話はかけなかった。
(……明日、学校で。夏穂がいる時に相談すればいいよね。樹くんと一対一で話すのは、ちょっと緊張するし)
そう思いながらスマホをしまう。そして陽葵は、自転車を押しながら家に帰った。




