(越智視点)冴えないドッグデイズは冴えない
僕、AKA、越智 時徳 は、古臭い名前を持つ、昭和末期生まれ、実家から離れた大学1年生である。そして、通学とアルバイトのバランスを保てて、市内のある住宅団地に住んでいる。古い家とはいえ、大学生として気軽に1人暮らしくらいの家賃ではない。幸と不幸との重ねて、数日5階登って風呂上がりしでも落とせない匂いを浴びながら、ルームシェアする相手が手作りラードで店でのとんこつラーメンをようやく再現したところ、そいつが食中毒で病院にしばらく転移したから、この無駄にひろい3LDKを使えるようになった。
そして、時が進み、大学に入って1つ目の夏休みとなった。
今日も原付より1回り大きいスクーターに乗って、炎天下を乗り越してバイト先に向かう。だけど無駄にひろい道で渋滞するときすり抜けるから免許も取って買ったバイクは、駐車スペースを管理組合に申し込んだら、この坂に建てられる団地群の頂上にとめられることとなったから、5階建てを降りてすぐ、やや急な坂を歩かなければならない。
すき間があれば針を刺すほど、2輪と4輪の乗り物がとめられている。わざと数えなくとも目に映るものは目に入る。ある黒ナンバーの軽バンは見覚えがある気がするね。
思い出した。先々…先週にお世話になった死神と自ら名乗るちょっと変わったシロアリ駆除業者だ。この団地に住んでいるんだ。よく見ると、軽バンの中に偶像が積んである。なんかいつでも動き出せると思っている。気のせいか?
大通り沿いにバイクで走って10分、バイト先のどの街にでもあるホームセンターについた。今日も店長がいないと思う。最近、心血管疾患でなくなった、本県もと知事の代わりに、県知事日補欠選挙が行われている。普段家電製品エリアでお客さんに捉まれて商品の紹介をさせられた店長でもテレビある日、テレビの中から顔を出すようになった。300万円を費やして十数日に公の場で話題人物となるのは至極的贅沢だ。これより爽快なことがないかもしれない。でも、店のスダッフにとって、この十数日が地獄絵図だ。
「ときくん、これ、どこに置いたっけ?」
ホイール付きの全身鏡を自分に面しながら押して歩くバカが僕に尋ねてくる。
バガ、言い直して、五月 ここみ は物覚えが悪そうだ。レジに配られた時も、商品をお客さんの袋に詰め忘れたり、おつりを床に落としたりしてきた。だけど、この初心者大歓迎の人員の入れ替わりが激しい職場で辞めず辞めずに、いつからこの職場においての大先輩となった。
「ここだよ」
僕が全身鏡をここみセンパイの前を話して、センパイ傍のドレッシングテーブルと一緒に並べた。
「あっ」
「あっじゃないよ」
「ときくん、頭いいのね」
「五月さんも、県の最低時給プラス50円に合わせた仕事くらいはちゃんとやってば」
出勤してすぐにも疲れがたまってくる。