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67話 衝撃宣言!


そうしてテンマ村へとたどり着く。

入り口に設けた門をくぐると、そこで待ち受けていたのはたくさんの住人たちだ。

その輪の中には、シンディーやキャロットといった英霊たちや、クマベア族など亜人の姿も見受けられる。


みなが一様に、表情が硬かった。

明らかに、緊迫した雰囲気が流れている。『高貴な人が来る』とだけ伝えていたのがまずかったのかもしれない。


どうしたものかと思っていたら、


「もう降りていいの」


凛とした声が馬車の中から響いた。


「うん、今開けるよ」


俺は答えるやいなや馬車の横につき、扉を開けると手を差し出す。

ナターシャはその手を取りながら、地面へと降り立つと、周囲を一度見わたして頭を下げた。


……無言かつ、表情の一つ変えないままだ。


これこそ、彼女が無の令嬢と呼ばれる所以である。

とにかく無口で、気を許せない相手に対してはまったくと言っていいくらい喋らない。


こんなふうでは、社交を大事にする貴族界では生きていけないのが普通だが、その点は問題ない。

彼女の纏う圧倒的な美貌、冷たい風にも映るその瞳、それらが作り出す優美な雰囲気は、言葉なしでも、畏怖や尊敬の念を集めるには十分なのだ。


実際、村人たちは戸惑った顔を浮かべつつも、深々と頭を下げ返していた。

もちろん例外もいるけれど。


シンディーはわなわなと身体を震わせながら、自らの裾を掴む。

なにやら強烈なオーラを放っていた。


「ディル様、今その方にお手を……?」

「えっと、なにか問題があったか?」

「ダメです、ダメです! いくら高貴な人相手だからって、これだけは譲れません! わたくし、妻として断固主張します!! 浮気です~!!」


うん、こんな状況でもまったく変わらないな、この子は……!

感心するんだか、呆れるんだか分からなくなりそうだ。


「この人は、浮気とかそういう次元の人じゃないんだって。あと、妻でもないだろ」


俺はシンディーを落ち着かせるため、彼女の方を向いて、そう言い聞かせる。

彼女は頬を膨らませて不満そうではあったものの、一応は受け入れて引いてくれたのだが、今度はすぐ隣から、より強烈な圧を感じる。


シンディーのそれとは違い、あまりにも冷たく、また強烈なものだった。

ナターシャは、元来から鋭い目をよりしかめたのち、扇子で口元を覆い隠して言う。


「あれは?」

「えっと、仲間だよ。細かいことはあとで説明するけど」

「……そう。ただならぬ仲ではなくて?」

「あぁ、まぁ家族みたいなものだな。一緒の家に住んでるし」

「……同じ、家に?」


短く切るような言葉だったが、刃物のような切れ味だ。背筋が凍る感覚に襲われる。

俺が焦りから何度か頷いていたら、彼女は唐突に再び、村人たちの方へ視線を振り向ける。


「私は、ディルックを旦那に貰いに来たの。そこだけ、覚えていて」



飛び出した宣言は、あまりにも衝撃的すぎるものであった。



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