呆気なく終わった最終戦
ドールが空を飛び魔王を誘導させ俺が隙をついて攻撃をする。飛び回っているドールは夜に光っている蛍光灯に集まる蛾みたいだし、下でちょこちょこ切っている俺はなんというかセコい。終わり良ければ全て良しって言葉があるんだよ! 例えどんな手段で勝とうが勝ちは勝ちなんだよ!
自分から見てもセコい戦いだと自覚するレベルでセコかった。
「のほぉ! な、なんで私ばっかり来るんですかっあれですか、神の威光にひれ伏しちゃう的なあれですかね!?」
「ひれ伏すどころか寄って来てる件について。威光って言うより蛍光灯の光だろうがよ……あら、成り行き的にだがモテてるじゃない?」
オホホホ、と手を口元にやる動作をしながらおちょくる。うん、相手が違うな。
まぁ、それに対抗してかドールは先程よりも速度を上げ、魔王の無数の手を掻い潜り……何故か俺の方へ。
「ちょ、それは洒落になんないから! 確実に終わるやつだからっ!」
「――男は度胸、女は愛嬌……ね?」
「ね? じゃねぇからっ!」
さらっと俺を担ぎキメ顔で語るドールに抗議しようとするがそんな俺も人間。はるか上空の場所で暴れるまでのクソ根性は備わっていない。備わっていないのだが……えっと、ドールちゃん? 上空に逃げるのはまだわかるけど何故俺を担いで魔王の頭上に? えっと、もしかしてだけど
「……ここから落とそうって考えはないよね? そんな非人道的な行動をするドールちゃんじゃないよね? 大丈夫だよね?」
「すてんばーい、すてんばーい……」
「多分それ違うやつだから! スタンバイもしなくていいか――」
「ゴー」
言い終わる前に腰にあった二つの支えが無くなり、ゴずラ型の巨大生物の頭上から落とされた。
「――ッ! ――ッ! ……んほっ、お、おお、おおお! こ、こうなったらとことんやってやろうじゃねぇか。そう、頭上から降ってくる人類最強の爆弾として――って、やっぱムリ! 絶対ムリだって! い、キョオオオオオ」
奇声を上げながら半泣き状態の人間が降ってくる。ハッキリ言うと美少女でも受け入れられるかどうか瀬戸際なのに半泣き……あ、うん。見栄張っちゃったけど本泣きに入りかけている男が降ってきたら普通の人はどうすると思う?
死 に 物 狂 い で こ の 場 か ら 立 ち 去 る
そう、実際はそうなのだ。空から美少女が降ってこようと天使が降ってこようと同じなのだ。天気予報が「明日から明後日にかけて優男が降ってくるでしょう~」並みに尋常じゃないほど現実離れしているのだ。
考えてみれば頭の中で「へっ、連続殺人犯? んなの俺のニート拳法で討伐してやんよ」と、考えていても目の当たりにしてみれば足が生まれたての小鹿のように激しく震え立っているだけでも辛く、果ては腰が抜け糞尿垂らしまくる結果になるだろう。まぁ、まとめると想像通りには早々いかないって事な。
「死ねぇやこらぁ! あ、はぁ~!」
余りの突然の事に動けなかった魔王の脳天目掛けて剣を振り下ろす。俺の体重×高さ×重力とか諸々込みの攻撃だ。脳天で止まってはい、終わり。最後の力を振り絞って道連れに~何て事はなく、異常に切れ味が良い事にずぅんずぅん魔王の脳天から足先まで貫通させる。
地面に近付き、もう終わりかと思ったが背から羽が生え衝撃を受け止めてくれた。
仰向けの状態で混沌としていた世界が崩壊していった。
脳天からぶち抜かれた魔王の体表が捲れ、眩い光が漏れ出す。その光は何故か上空で俺を落とした状態で待機していたドールにぶち当たり、弾けた。
今まで奪い、壊してきた希望を元に戻すかのように光が流星になり、何もなかった地上に降り注ぐ。魔王の表面が完全に捲り上がり、光と化す頃には地上に降り注ぐ流星の勢いが一層強くなり、遂には地面を消し飛ばした。
そんな光の雨は死屍累々、地獄絵図のようだった王都を一掃し、赤く染まった地上を緑豊かな大地に変えてしまった。
人が住んでいた痕跡の一切も存在しなく、ただ緑豊かな大地が広がり、少しだけ残った地上の人間が城壁から顔をだして覗き、地下から褐色肌の人形の生物が戸惑いながら空けられた穴から出てきた。
既に不毛の大地だった面影もなく、地上の緑豊かな大地とは真逆に、山脈が連なる大地へと変貌していた。
ちなみに褐色肌の生物――魔王によって消されていた魔族が地上に出る際に一人の少年と、無駄に光っている少女を生け捕りにしたという。双方に意識はあり、確実に暴れていたのだが言葉が通じないのか終始、担いでいた魔族の青年は笑顔だった。
はい、次で最終話です。無理矢理感尋常じゃないのですが切り上げないと無駄に長続きしそうだったので……
ラストは少し、時間が過ぎた世界の事です。




