第2話 強引に外堀埋めたのはいいけど羞恥心で悶える系ヒロイン
作者は手のひらをずり剥いた。
執筆速度が落ちた。
ギルドの二階にある応接室で俺はエリシアに尋問されていた。机を挟んでソファーに向かい合い、どこに行っていたか聞かれた。
質問は200年もいなくなってたこと、だが俺からしたら三十分ほどの感覚だからなんと言えばいいか分からない。
俺は神秘の森に行って、気がついたら伏魔の森にいた事を話した。200年も経っているなんて知らなかったことも話した。
だってそのくらいしか説明できんし。
「それが200年もいなくなっていた理由ですか・・・。って、信じられるわけないでしょお!!!」
◇■◇■
顔を伏せたエリシアは絶叫し、拳をテーブルに叩きつけた。そしてエシリアは顔を上げルシアスを見た。顔を上げたエリシアの両目には溢れ出るぎりぎりまで涙が溜まっていた。
「私が私達がどれだけ心配しかわかりりますか!?一番信頼性してる一番愛してる人がいきなり帰って来なくてどれだけ心配したか。愛する人のいない間の寂しさが!!」
エリシアの息継ぎのない絶叫にルシアスはどうしたらいか分からないないようだった。そんなルシアスの顔を見たエリシアの頬を温かい雫が伝う。
「それなのにやっと帰ってきたと思ったら何も知らない?そんなの信じられる訳ないでしょ!!」
叫び終わった時には机には幾つもの染みが出来ていた。
ルシアスは何度か口を開けては閉じる。
エリシアはルシアスの様子を愛おしいそうに眺め、ルシアスより先に口を開いた。
「もう二度と突然いなくなったりしないでください。約束して下さるなら許します。今回のことは特別に許します。」
これが彼女のできる最大限の譲歩なのだろう。200年も音沙汰がなくても、もう二度とそんなことはしないでくれればいい。
エリシアからすると謝罪よりもこの約束が何よりも大切だったのだ。
「分かった。約束する。二度といなくたったりしない。」
ルシアスはエリシアを目を見てしっかりと約束を守る事を誓った。その瞳には誠実さがこれ以上ないほどに写っていた。
一 女の涙は無敵って言ってる奴の事笑ってたけど、撤回します。無敵です。
なんてルシアスが思っている事をエリシアは知らない。
世の中知らぬが仏である。
◇■◇■
涙が止まるとエリシアはルシアスにこの200年間で何があったのか説明した。その中身は王国はもとより他国のことにまで及びかなり長い説明になった。ちなみにルシアスがそれとなくエリシアとの関係を聞くとエリシアは夫だと答えた。
そしてその他の人物との関係、誰が死んだなども聞いた。
「 ~というわけで、貴方が魔王を殺した事で世界は平和になりましたが、その代わりに魔物をコントロールする存在が消えたので冒険者はより必要とされたのです。」
ルシアスはエリシアからの説明を聞き、大体の状況を理解したルシアスは、自分のしたことを知って口を開く。
「しっかし、その状況だと平和にしたのかどうか怪しいな。」
「そんなこと無いですよ。勝手な解釈ですが、悪魔の貴族立ちからしたら魔王を殺した相手に喧嘩なんて売れなはずです。その証明というわけではないですが、爵位持ちの悪魔の襲撃はこの200年ないですから。」
ルシアスの偉業を少し自慢顔で話すエリシアは、ついさっきまで泣いていたのが嘘のような、綺麗な微笑を浮かべていた。しかしそれは必然というものだ。なぜなら200年間も会うことができなかった最愛の存在を感じ、話し合うこともできるのだから。
「ところでちょっと聞きたいことがあるんだかいいか?」
ルシアスの聞きたいことを拒む理由などないとエリシアは首を縦にふる。
「1階で俺の事を大英雄とか英雄とか言ってる奴等がいたんだか、なんで俺が英雄になってるの?」
心底理解できないと言った様に聞くルシアスにエリシアはやれやれと言ったように説明を始める。
◇■◇■
エリシアに色々と聞いて分かったことがある。
まずゲーム時代のイベントは歴史上の大きな出来事となっていること。
ゲーム時代に俺が作ったNPCは全員生きているということ。
エリシアと俺が夫婦とになっていること。
オレが散々殺しまくってたNPCの貴族とか王族は大体嫌われものだということ。そして俺が殺したのはわかっているが証拠がなくて処刑できないこと。
俺個人のステータスだと小国と戦争できること。
ほかのプレイヤーは存在していないこと。
運営のメッセージは神の声と言われていること。
貨幣価値、隣国関係など色々分かった。
そこで一つの疑問が湧いてきた。のでエリシアに質問したした。
「1階で俺の事を大英雄とか英雄とか言ってる奴等がいたんだか、なんで俺が英雄になってるの?」
そう、なんで俺が英雄なのか?自慢じゃないが俺はゲーム時代大分とエグイ、つまりはプレイヤーシップにかなり違反したPKや攻略などをしていた。正直言って英雄なんて柄じゃない。完全に暗黒面側だ。
しかしエリシアはやれやれと言った感じで説明してくれた。
「いいですか、貴方は魔王を討伐しただけでなく、戦争をふっかけてきた帝国の皇帝を暗殺して敗戦間近の王国を救ったんです。」
うっそん、そんなに凄いことだったのかよ。大型の戦争イベントで帝国と戦うってのあったけど、「トップ殺せばおわるんじゃね?」的なノリで皇帝のキャラ殺したけど、まさかそんな扱いになっていたとは。
「つまり貴方は王国の救世主であり、世界の救世主でもあるんです。そんな人物が英雄でないわけないんですよ。」
「それってひょっとして凄く有名なこと?」
俺は一縷の望みを持って、神にでも縋る思いで質問したが、神はいなかった。
「救国のくだりは知らなくても、魔王を討伐した英雄だというのはこの世界の人なら誰でも知っていますよ。」
「・・・この世界に神なんていない。」ボソッ
「ん、どうかしました?」
エリシアに何でもないと答えて背もたれに体を預ける。そして長い溜息を吐く。
まさか、適当にゲームプレイしてただけなのに、異世界では英雄になってたとか、ナニソレワロエナイ。
この事実に俺は30分程頭を抱えることになる。
◇■◇■side エリシア
「はぁ~~~」
私はギルドの執務室で長い溜息をはいています。彼に溜息をつくと幸せが逃げると言われたことが懐かしいです。
今日も何もありません。とても暇です。買い取った素材の点数確認がやっと終わりましたが、早く仕事が終わっても彼に会えないのなら意味がありません。
「はぁ~~~」
なにも起きないのは良い事なのか悪い事なのか分からないですね。
今日の晩御飯に思いを馳せていると廊下を走る音が聞こえてきます。廊下は走らないように言ってあるのに、誰でしょう。
ドアを開けて入ってきた子は黄色の髪の子でした。
とりあえず私は廊下を走った事とノックもせずに部屋に入ってきたことのどちらを先に怒るか考え口を開きました。
「廊下は走ら一一」
「一一英雄が!!ラネット・ルシアスが戻りました!!」
その一言で私の頭の中は真っ白になった。そして聞き返した
「今なんて言ったの!?」
「ですから、ラネット・ルシアスが戻ったんです!!」
そんなはずない、あの日200年も経っている。音沙汰一つなかった。ああそうか、またなりすましか。
「嘘だったらどうなるか分かっ一一」
「証拠もありますよ!!」
そう言い彼女が出したのは、鉄で作られた一枚の板だった。そこには確かにあの人の名が、『ラネット・ルシアス』の文字があった。そしてその文字は冒険者ギルドの最高ランクの証拠である黄金の文字で書かれていました。
気がついた時には走り出していた。
◇■◇■side out
エリシアはルシアスが落ち着いてから声をかけた。
「ルシアスはこれからどこに行くか決めていますか?」
「あ~、とりあえずは『恵屋』に行こうと思ってる。」
RFOで金を稼ぐ方法は大きく分けて2つある。
1つ目はモンスターを狩り換金する方法、二つ目は生産職になり作った物を売る方法だ。
ルシアスは戦う生産職であったため、店をだしながらモンスターを狩っていた。
『恵屋』とはルシアスがゲーム時代に作った武器とポーションを売っている店である。ポーションの材料などは自然由来の物が多く、剣なども1部を除き鉱石などが原料であり、自然の恵を貰って作っている。
ルシアスは自然に対して韓者を忘れないようにと、『恵屋』と名をつけたのだ。
「恵屋ですか、それなら今から行きましょう。」
エリシアがソファーから立ち上がるとルシアスは慌てた。
「今からってギルマスなのに大丈夫なのか?」
「それなら大丈夫です。今日の仕事は終わりましたから。」
それならば大丈夫だろうとルシアスもソファーから腰を上げた。
ルシアスが立つとエリシアは自然な動きで、ルシアスの隣に移動し腕を絡めた。
「え!!ちょ、なにしてんの!?」
今までルシアスのロールプレイでかろうじて会話をしていた日向は、人生において女性と話すことなどほとんどなく、手をつなぐ機会すらなかった。そんな女性耐性ほぼゼロの日向は反射的は「なにしてんの!?」と聞いてしまったわけだ。しかしエリシアは涼しい顔で返す。
「いつも通りじゃないですか?」
「え?そうだったけ?」
「そうですよ。」
エリシアはさも当然の様に言っているがもちろん嘘である。エリシアはルシアスの記憶が曖昧になっていると思い、今のうちに既成事実を作ろうとしているのである。
2人でギルドの1階を通る時に、多くの冒険者が涙を流しやけ酒を煽っていたのは当然である。
◇■◇■
ルシアスとエリシアは恵屋に向かって大通りを歩いている。
通りを歩きながらルシアスは疑問を口にだす。
「あれ、人、多くね?」
ルシアスがこう思ったのも当然である。
RFO時代は他のゲームよりもNPCの数が多いとは言え、ザーバーへの負担が大きくならないように、一定数以上のNPCはいなかったのだ。しかしゲームが現実となった今、人口が増えれば人数が増えるのは当然であり、特に王国の場合100年前に人口爆発があったために人口が多い。
エリシアはルシアスにわかりやすく、今の状況を説明した。
「あ~、なるほどね。アレ?そしたら『アイツら』の子供とかいるんじゃね?」
ルシアスが言った『アイツら』とは当然自作CPUである。
「ふふっ、それは後でのお楽しみです。」
エリシアはとても楽しそうに微笑んだ。
2人で寄り添って道を歩いていると空腹を感じた。見回すとちょうど果物屋が見えたのでルシアスはよることにした。
どうやら店主は割腹のいい赤毛のおばさゲフンゲフンおばちゃんのようである。
「ぃらっしゃい。あらあらあら、エリシアちゃんが男と一緒なんて、珍しい日もあるもんだねぇ。これかい?」
これかい?言いながらおばちゃんは小指をたてる。するといつも凛としているエリシアは少し恥ずかしそうに俯いた。
「・・・ぇっと、その・・・なんです・・・。」
「そんなちっさい声で言っても聞こえないよ。」
聞き返された事でエリシアの顔は真っ赤になっていく。そして意を決すると顔を上げて大きな声でルシアスとの関係を告白した。
どのくらい大きな声かというと、ガヤガヤうるさい通りでも響き渡るくらいの声量である。
「だから・・・夫なんです!!」
エリシアが顔を真っ赤にして、告白すると、通りにいた男という男が泣き崩れた。
そしておばちゃんはというと。
「そうかいそうかい、やっと結婚したのかい、アタシが子供の時からずっと男っ気がないから心配してたのよぉ。男を待ってるってほんとだったのねぇ。」
よかったよかったと言っているおばちゃんをよそにルシアスはちょっと動揺していた。
一 いや、ちょっと待てよ。俺達ほんとに夫婦だっけ?違ってたら外堀埋められまくってね?
「あー、えー、エリシアさんや?ちょっと落ち着こう。」
「ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは夫ルシアスは・・・」
「oh......」
真っ赤な顔で地面を凝視し、同じ言葉を繰り返すエリシアに、ルシアスは黙るしかなかった。
こんな騒ぎがあったため、ルシアスとエリシアが恵屋に着いたのは1時間ほどしてからだった。




