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災華の縁 ~龍が人に恋をしたとき~  作者: エージ/多部 栄次
第三章 二節 人と龍の想い
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11.不死の龍と不屈の龍

深夜にボーッとした頭の状態で書いたので、能動受動、てにをは等の間違いがいくつか見られるかもしれません。

 王龍がどこへ吹き飛ばされたのかは、ただならぬ覇気を察知するよりも、直線状に盛り上がっては砕けている海底を見ればすぐに分かった。

 すぐにアーク海に着くが、王龍の姿は見当たらない。エラで酸素を取り込みつつ、辺りを見回す。擬態しているのだろうか。それとも、既に陸地の方へ……。

 遊泳するに伴い体の血が取れていく。血が漂い、それに鮫や魚竜が集うが、仰向けに倒れ、ぷか~と浮上していく。

「……」

 少しでも早く海から出なければ、自らの身体から分泌される粘液で汚染させてしまう。既にすれ違った魚群が悉く海面へと浮かんでいった。


「……っ?」

 前方が一面赤い濃霧で覆われている。

(血……?)

 リオラは凝視する。周囲の浮かんだ岩や沈んだ岩を凝視すると、それは何かの肉片であることに気づく。

(こいつは……)


 海王龍アルバハル。この大陸に訪れ、一度目の当たりにしたことのある巨龍。鯨を喰らい、伝説では白鯨を丸呑みするとも云われていた。島など丸呑みできるその規模の全容を見ることなど不可能だった。


 アーク海を統べる海王。その生物が今、王龍に喰われている。海の不敗王が、血で海を汚し、その身はバラバラに裂かれている。巨岩のような肉塊が漂い、ダムの壁並の大きさをした頭部がリオラの真横を過ぎる。骸と化した海王龍の光の無い目と合う。その眼球だけでも町の豪邸がすっぽり入りそうなほどの大きさだった。


 リオラは捕食中の王龍に向かい、口から海水を大量に飲み込んでは胸部を爆発したかのように膨張させ、ハイドロポンプを放つ。ウォーターレーザーをも散らせる水圧砲を繰り出すも、海王龍の肉を身に取り込んだ王龍は目に見えぬ速度で避け、真横に接近しては横蹴りする。海――海面から海底まで――が一瞬で二つに裂け、リオラの腹――骨や筋肉、内臓に赤い線がピシっと刻み付けられる。

 その斬撃は距離1万キロもの大洋を越え、極圏の氷大陸を両断する。裂けた海底は海溝と化し、底からマントルの熱光が漏れ出てくる。


「――っ!」

 竜化を解除したことによる、細胞質の変性に伴う爆発的な再生力の発揮。両断され、離れかけた肉体は瞬時に肉繊維が絡み、縫合される。

 人型へと戻ったリオラは海を掴み、海流を作る。流れの勢いは強くなり、海中の渦巻き(ホワイトストローム)を2つ発生させる。2つの海流は1つに合流し、それを王龍に向け放つ。


 王龍は海水を大きく吸いこみ、竜化していたリオラ以上の水圧ブレスを渦巻き状にして放つ。

 双方の海流はぶつかり、相殺される。否、海流というよりは海中の津波。まさに竜の如き暴流が海を荒げる。


 そのとき、リオラの姿はなくなっていた。

 王龍は辺りを見回すと、海底に人影を見つけた。リオラは両脚、両腕を海溝の斜めった地面に突っ込み、四肢を赤く発光させている。王龍がそれが何を意味しているのか、それを察した時、既に手遅れだった。


 リオラは四肢から膨大な熱や爆発性の液体を岩盤に放っていた。すると、周りの海底が沸騰したかのように盛り上がり、硫酸ガスなどの有毒ガスや何百度の熱をもった黒い噴煙が噴き出る。

 次の瞬間、海底は大爆発を遂げる。突然発生した地割れ、数々の海底火山の出現とその火山群の一斉噴火。

 王龍は突然目の前に現れたリオラに対抗しようと口を大きく開けたが、リオラの遊泳力は速く、その右腕は紅く光っていた。

 その燃え盛る腕に殴りつけられた王龍は体を屈めたと同時に腹から背中を貫通してボォン! と爆発が起きる。王龍は海溝のマグマの中へ突っ込んでいった。


 相討ちされたのだろう、胸部――心臓部に大きな穴を空けられていたリオラはもう一度海龍型の龍化を試みた。蛇と鮫が混じったようなリオラの首の根元から胴体、尾にかけて幾つもの切れ目が生じ、ニュロッと分割される。その胴体と尻尾はたこのような触手と化す。それは触手が胴体の表面上の代わりをしていたに過ぎなかった。本当の胴体は魚竜のような艶めかしさを放つ鱗が流れるように並んでいて、海竜のように逞しい体つきをしていた。


 その触手から高圧電流が放たれた。同時に口から光線状の冷凍ブレスを放つ。

 赤く熱されていた王龍は悉く避けていき、放電を発した両手の噴出孔から焼却砲弾を連発する。そして、口から爆発を起こしたかのような火炎ブレスを解き放った。


 電撃に当たったマグマの如き炎熱は電気と共に拡散され、海水の温度によって石と化す。冷却ブレスと燃焼ブレスのぶつけ合いの勝負は早く決着し、海が蒸発することもなく、凍りつくこともなく、何もなかったかのように海は再び閑静の空間へと戻った。

 そのとき、龍化したリオラは王龍の背後へと泳ぎ、その触手で王龍の身動きを塞いだ。王龍は発熱反応を起こし、リオラの肉体が溶けそうなほどの熱を放出した。触手は溶け、瞬く間に解放されたと同時、王龍の首に喰らいつき、アーマーのような甲殻ごと肉を抉る。その間に人体型に戻ったリオラは食い千切り、拳を振るう。

 水分に波動を伝達させ、大きな波として王龍の周囲の海水・体内の水分子を盛大に振動させた衝撃。怯んだ王龍に追い打ちを仕掛けた。顔面を殴られた王龍はどこかの大陸の沖へ飛ばされる。


 龍化を解いたリオラはすぐさま何もない、まるで大津波に飲み込まれた後のような沖へ向かおうとしたとき、隕石のような火山弾が海中に振ってきた。

「なんだ突然」

 天を覆う数。その上、リオラの耐性の無い溶解性の特異的な毒が含まれた火山弾。喰らい、その熱エネルギーを自らの身体に取り込むことはできない。

 そのマグマの塊に近い弾は王龍の両腕や翼腕、肩部と背部を変形させて突出させた砲身キャノンのような噴出孔から噴出されていたもの。天へと打ち上げられ、天より下される炎は天罰の如く。

 おそらく、絶島で一度遠くへ吹き飛ばした後、王龍が海王龍を喰らう前に仕掛けたものだろう。そう推測したリオラは海中で顔をしかめた。リオラは海水を掴みぐるぐると回し、周囲に独特の海流を作る。落された火山弾もその海流に巻き込まれる。

 海面では大きな渦ができていた。その渦からリオラが出てきては、起き上がろうとしていた王龍に向けて、海流の槍を放った。直撃し、海水の爆発が起きる。


 リオラは海から上がり、水霧に包まれた王龍の様子を見る。

 無理矢理くっつけたような左腕と左翼、捻れていた右腕。やがてそれは虫のあしのようにもげていた。

 両腕で防御したのだろう。そうリオラは推測した。

「これで少し余裕ができたな」

 そう呟き、一瞬安心した時だった。


 ――GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGGG


 "それ"は人間の声なのか。

 獣の雄叫びなのか。

 龍の咆哮なのか。

 自然の蠢く声なのか。

 機械の呻く声なのか。

 それとも、神か悪魔の叫びか。

 何も属しないサウンドだが、混じり合った5重奏のボイスに不協和音を加勢したノイズ。

 奇声と共に王龍の両腕や千切れた翼から無数の触手が生える。まるで磯巾着のように滑らかで、電線のように無機質。赤・青・白が黒く濁ったような人工血管に近い触手がうにょうにょと植物のように生えてくる。紫の瞳の焦点が合っていなかった。


「こいつ……っ! ほんとに龍かよっ!」

 作り上げた無数の触手。それがひとつの塊になり、リオラを殴り飛ばそうとした。

 リオラは避けようとするも身動きが取れなかった。王龍の腕の触手から生えた、肉眼では見えない程の細く、強靭な神経触手で動きを封じられたようだ。今の体力でこの触手から脱出することは不可能に近い。

「――ごぱぁッ!」

 細胞レベルの細い触手がリオラの体内に侵入し、致死的な毒――否、王龍の体内で共存していたウイルスを散布している。瞬く間にリオラの細胞は死滅し、ウイルスで満たされてゆく。


「あ……がが、ぎ……ぃぃいああ――ぐそっだれがァ!」

 リオラの体重は巨龍よりも遥かに重い。肉繊維から発する電磁力によって浮遊し、足に伝える地面への負荷を軽減している。

 しかし、その筋肉繊維――タンパク質がウイルスによって分解されている。電磁浮遊力は弱まり、リオラの踏み立つ地面に脚が埋まる。

 その負荷を利用し、リオラは脚力の力点を駆使し、大地をふたつに割る。股下を割れ目の境目にし、両方から起き上がった数百メートルもの岩盤を掴み、王龍を挟み込む。

 王龍は筋肉膨張による全身から発した瞬時の衝撃波によって、岩盤を消し去り、触手ごとリオラを弾き飛ばす。空中で無防備になったリオラをフックで殴ろうとしたが、リオラは対抗しストレートで王龍の拳を殴る。リオラの眼や口、耳などから血が噴き出す。

 だが、その決着は一瞬。王龍の触手の塊でできた右拳が破裂し、再生中だった腕の骨髄が変な方向に捻じれ曲がっていた。


「……っ、おい待――」

 だが、その捻じれた骨髄だけの腕にリオラは捕まり、王龍の口から吐き出された破壊的息吹ブレスによって、捻じれた腕ごと消し飛んだ。


     *


「――あぁあああががっががっがががががあああああがあああはあああうああぁあああぁううあああああがぎあああがああうあがあぁあぃひひひあはははぁぁうあああっがががあああがっうあがううああぎぎぎいっぎああああぁあ」


 痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい熱い熱い熱い熱い熱い!!!


 今まで感じたことのない痛みと苦しさ、熱さが頭の中を巡らせる。このまま狂いそうだ。

 このまま死んじゃうんじゃないかと思わせる程、人体の限界値をとうに超えている痛みだ。皮膚や筋肉が溶けているだけではなく、心臓が煮込まれ、脳味噌が焼き串で掻き回されている感覚が襲い掛かる。

 この毒――否、ウイルスの抗体は持っていない。作ろうにも時間がかかる上、抗体をつくる細胞がほとんど破壊されている。事実、身体のいくつかが欠損しているが、どこがあって何処がないのか、痛みが激しすぎて把握できない。

 なにより時間の問題だ。いつまでこの命がもつか。


(いや……ここで死んだらオレの住んでいた場所はどうなる……!)

 この地方の人々は、この世界の人々はどうなる。あいつは……サクラはどうなるんだ!

(生きないと……生きて、あいつをぶっ飛ばさないと、何もかも終わってしまう)

 絶対に、みんなを救わなければ。


「……うぅぁ……く、がぁ……ぁうぅ……がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああアアアア」

 もはや生物ではないこの生命力。彼は雄叫びと共にまた立ち上がる。死に匹敵する痛みがあれども、ただそれに耐えるのみ。無理矢理にでもその体は屈することはない。彼の意志に体が応え、生かしていく。

 決して死なないこの肉体と精神。人間じゃないからこそ成せるこの不撓不屈。

 限界突破。もはや彼は、人知を超えた。


「アアアアアァ――あぁ、やっと治まった」

 平静を取り戻す。その免疫力、回復力、再生力、治癒力は生物界でも頂点に君臨する程であろう。だが、戦闘にまで身体を動かせるための、自らの細胞が分泌したドーピング効果は思い込みに過ぎない。騙した体は後に多大なダメージを与える。

 段々と、細胞じぶんが死んでいく。


 周りを見渡すと辺りは草原だった。歪みがなく、ただただ平坦な緑の地。遠くには独立峰の峯山ほうざんや剣針山がみられた。


 ユモ平野。温泉で名が多少知れている「ヨズの村」が属するシェイダ郊外の隣地だ。

 しかし、自分の周りだけは黒ずんでおり、何かの腐敗臭が漂っていた。

 ここだけ凹んでいるので、ここに落下し、溶解性の神経毒にもがき苦しんでいたのだろう。災龍の身体は、触れるだけであらゆる命を死に追いやる。


 そのとき、上から触れても死ぬことの無い王龍が、落ちてきたかのようにリオラの前に着地してきた。

(こいつも相当キテるようだな)

 息切れをして唾液を垂らし、二足歩行から四足歩行の体勢になっているが、それでも体がふらふらさせている。

 先程切り落とした左翼と左腕はなぜかそこにあった。右腕も完全とはいえないが、元に戻っている。くっつけたのか? と思わせるぐらい歪な繋ぎ方だとリオラは思う。

(……いや、違ったな。さっきあそこから触手みたいなのが生えていたか)

 再生のための触手――細胞繊維だろうか。それでも完全に再生していない辺り、身体が対応できていないか、再生途中で無茶な移動をしたか。そのどちらもだろう。

 お互い無理をしている。互いに持つ意志の重さは比較しようがないが、王龍アポラネスにも、使命があることをリオラは感じ取った。


「やっぱりただの龍じゃないな、おまえ」

 リオラは全身から蒸気を発し、放熱、放電しながらゆっくりと王龍に近づく。そして無数にして瞬発的な殴弾おうだんを繰り出した。

 が、王龍はリオラが攻撃する寸前、二足歩行へと立ち上がり、リオラと同じように猛攻ラッシュを繰り出した。

 早すぎて見えない殴り合いが続く。生じた風が吹き荒れ、平原の草を激しく靡かせる。

 2対1の比率の大きさでの肉弾戦。体格的にリオラが劣っているが、双方変わらない力強さで立ち向かっていた。

 最後の一撃。互いにその拳を撃ち合い、衝突する。生じた衝撃波、熱波、電撃波が混じり合い、両者が緑の平らな大地と平行に吹き飛んでいく。その速さは音速といってもいいかもしれない。


     *


 ――バキバキバキィッ!

 森へと飛ばされ、木々が折れていくような音を聞きながら次の場所に辿り着いた。

 地面に掠った瞬間、身体が捻じれ、何回もバウンドし転がっていく。

 摩擦で勢いが収まり、ずしゃっと俯きに倒れる。

 倒れたまま顔を上げると、そこには白一色の海岸に青く染まった海。水平線には小さな島影が見えた。島国アーク国だろう。


 そしてここは白岩海岸。リン鉱石のように白く、ごつごつした岩が集結したような急斜面。その下には純白のさらさらとした砂浜。アーク国の領地だが、特にこれといったものはない。特筆すべき点がない場所だ。

 背後にはウェン平原が広がっていた。ここにはホスノの森付近にあるホスノ村や、既に滅んだ宗教の信者が作り上げたシェンネル遺跡がある。


「ハァ……ハァ……また随分と、穏やかなとこに……ハァ、着いたな……」

 空を見上げると、なんともいえない程の穏やかな空だった。その純粋な空にひとつの異物が目に留まる。

 鋼色をした巨大な球体。それはヨーヨーのように盾に高速回転を続け、回転の真ん中には空気摩擦の為か、発火し光の線が走っている。周囲の空気を焼き焦がす回転カッターのような、眩しくて太い光の線だ。


「……冗談だろ」

 リオラはそれが何なのかを瞬時に把握した。

 王龍が体を極限的にボール状に丸めて空中をホバリングしている。かなりの回転力や弾道のスピードがなければ、ここまでして飛ぶことはできない。

「よくわかんねぇ体してんな」

 リオラが呟いている間にも、鋼色の球体は高速でこちらへと向かってきていた。


「砕いてやる」

 地を軽く踏み込み、拳を握る。それを見たかのように、王龍は更に加速し、直進してきた。

 しかし、リオラは猛スピードでぶつかりにきた球体を横に避けたと同時、蹴りを球体の側面に入れる。球体は吹き飛んでいくが、軌道を変え、再び突っ込んでくる。

 リオラは腕に込めた空間地震の震動を球体正面にぶち当てる。辺りは隕石が墜落したように地面ごと捲り飛んだ。

「――なっ!?」

 球体が砕ける――同時に何かに掴まれる。そして、元の姿に戻した王龍は掴んだリオラを空へ蹴り飛ばした。意識を数秒失った。


     *


 光を失った目に意志を取り戻し、リオラは空を蹴る。脚部や足の特殊な力学的構造と万力による空中闊歩。見渡せば雲海。青さを越えた黒が天を染めていた。

 風と共に雲を打ち破り、王龍が翼を羽ばたかせて、リオラに襲い掛かる。どこまでも執着心が強いと、リオラはあまりものしつこさとしぶとさに、苛立ってくる。王龍の歪だった翼と腕は元に戻っていた。最初よりも少しばかり細くは見えたが。


 滞空はできない。翼の無いリオラは排気音エグゾーストを唸らし、発電・発火する。電磁力も増幅させ、斥力を上げる。空の移動にできるだけ適した体構造へと細胞を変性させた。


「――っ」

 息を吸い、常に大気を蹴り続けては空を翔ける。王龍も翼のみならず、各部位の噴出孔から発火的爆炎を噴き出しては飛行速度を上げる。

 命を削り、尋常では無いほど体力を使ったため、飛行型に龍化できない。腕のみを龍化させ、翼腕を形成させる。


 二頭の龍の上空交戦は平均速度がマッハ30超に匹敵する、生物界ていぎ科学じょうしきを遥かに超越したもの。

 薄い気圧、小さい空気抵抗であれ、その速度は身を摩擦発火させる。互いがぶつかる度、規模の大きいショックウェーブが発生し、分厚い雲を分散させる。3次元的な戦闘が繰り広げられていた。


 王龍の口から発する雷撃や噴出孔からの熱線を避け、リオラは空をも斬る蹴りを振るう。数キロ先の雲海や遥か百数十キロ下の北方の氷大陸に割れ目をつくる。

 成層圏あたりまで上昇したところで叩き落され、名もない小さな島を粉砕し、近辺の海を爆発させる。まるで水爆が落とされたような。

それでも衝撃が収まらないので、身体を駆使し、衝撃の方向性を変えては海面を滑るようにリオラは持ち出した。すぐに空へと翔け出し、王龍の追撃を避ける。点在する諸島を縫いながら高度を徐々に上昇させる。森やどこかの大国のある大陸を眼下に、山々に掠り、崩壊させながら雨雲の中へと突っ込む。

 再び対流圏に入ってはすぐに巨大な積乱雲に突入し、大雨と雷の嵐を駆ける。


「――ッ、ァアアアアアア!!!」

 対の方向からぶつけ合った拳は積乱雲を消失させる。それはあらゆる波長や原子を乱し、大気圏に穴を空ける程の威力。

 発した熱はこの惑星の半分以上の面積の範囲における雲のすべてを蒸発させ、暴発した衝撃波は直下の大海に大穴を空ける。十数秒後に穴を塞いだ海は数百メートルもの水柱を上げ、荒波を起こし、ただならぬ大きさの津波が波紋のように全方向へ広がってく。

「――ッ!」

 流石の両者もそれに耐久できず、音速の壁を越え、互いに遠くへとミサイルのように吹き飛んでいく。

 その拳は炭と化していた。

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