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魔法と闇と絶望と  作者: 凛莉
最終章~騎士と王~
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最終話 少年の休息




「おはよう」

〈おはようございます〉

スピリーツと挨拶を交わして、レヴィンに雪矢の魔力を尋ねる。

僕はあまり魔力扱いが上手くないから、レヴィンに任せた方が安心できる。

あれからというものの、限界ギリギリまで待ってから、雪矢の魂を僕の身体から引き剥がす。

という方向に決まっていた。


レヴィンはピピッと音を鳴らして僕に伝える。

〈限界でしょう・・・〉

ふうと息を吐くように小さく、しかしハッキリと言った。

それを聞いて僕はスピリーツと目を合わせ、頷いた。


スピリーツはつかつかと近づいて、僕の左胸に手を当て、貫いた。

当然特殊なものなので、痛みやらは無いが、違和感はある。ちょっとくすぐったい?

ゴソゴソと何かを探られ、何かを見つけたと思うと思い切り引き抜いた。その衝撃で僕は後ろによろける。

「ううわ」


引き剥がし方とは、その名の通り。スピリーツが力を使って魂を捕まえ、身体から引き剥がす。

相変わらず荒っぽいやり方だと思ったけど、スピリーツの顔は真剣そのものだったしそれ以上の案も無かったから仕方がないだろう。

そのスピリーツはヒソヒソと何かを手の中の何かと喋っていて、その後ほっとした様子で、手の中のキラリとした銀色の珠のようなものを上に放り投げた。

それはスピリーツの魔力に包まれると光輝き、徐々に人の形に変わっていった。


肩までの白髪に、同じ灰色のローブ。ゆっくりと目を開けば、それは金に輝いていた。

初めて見る彼の目は何処か幼く、身体全体が靄のようにふわふわと不安定だ。


「こうやって会うのは初めてかな」

ニコッと微笑んでやると、あちらもそうだねと笑った。・・・会話が続かない。

正直、昔の自分を見ているようで凄く気まずい。しかし時間もそう残されていないだろう。

ばさばさと翼を広げてやれば、雪矢も意図を察したのかこくりと頷いた。


「それにしても、いいの?」

君なら僕を乗っ取る事も出来ないことはないだろうと言うと雪矢はにっこり笑った。

「僕は別に構わないよ、今回の僕の役目は果たしたんだしね」

永遠の命にも興味無いからね。次は平穏な人生を歩みたいものだよ。そう言った。

最後に雪矢はレヴィンをよろしくねと言うと、今まで黙っていたレヴィンが声を上げ、ぐいっと自らの意思を持って腕輪が抜ける。

〈・・・ッマスター!〉

「レヴィン」


ふわふわと浮く彼女を優しく受け止めた雪矢だが、透けている彼はきっと感触など無いのだろう。

だけどそんな事は関係なくて。邪魔をしちゃいけないと後ろに下がる。


「ごめんね、色々振り回しちゃってさ。マスター失格だよ」

あははと笑う雪矢だが、レヴィンと雪矢の仲は良い物だったと僕は思っている。現にレヴィンは「そんな事ない!」と叫んでいた。


その仲を引き裂くのは少し心が痛むとは思うが、仕方ないと割り切るしか無いのだ。

ぽつりぽつりと思い出話をしている彼らを微笑ましく見守る。

「リーディ」

「ん」

数分見守っていると後ろからスピリーツに声を掛けられて僕は足音を立てて前に出ると、レヴィンはすみませんと戻ってきた。

「・・・・気にしないで」


「時間取らせちゃったね。時間間に合う?」

「間に合わないほど長い綺麗事言える自信無いな」

「そうかな?リーディならやろうと思えば1時間位出来そうじゃない?・・・まぁ、始めよっか」

ふふふっと笑って雪矢は少しだけ下へ下がって目線を合わせた。自身も緩んでいた口元を引き締めて大きく翼を広げた。

すぅと息を吐いて、吸って。


「呪われた僕を開放するために選ばれた魂。


この器から脱して新たなる生に。運命に。

望まれぬ運命から、望む運命に。幸多からんことを。


忌々しき器からの開放に祝福を。・・・・お疲れさま」


しん、と広い部屋に響く僕の声。


色々考えて言ってみたけれどもやっぱり僕に堅い言葉は似合わない。

最後に誤魔化すように笑ってみたものの、こっ恥ずかしい。しかし雪矢は

きっとこの場には似合わないような顔をしているだろう。僕は気を取り直して腕を広げ、にこにこと笑みを絶やさない彼を緩く抱きしめた。

後ろの翼が光ると合わせるように、雪矢も輝いて更にその存在がゆらゆらと不安定になっていく。彼が現れた時と同じように。

そっと雪矢は目を閉じてただ一言。


「おやすみ」


とだけ言ってキラキラと固まっていた魔力は色をなくして散っていく。

銀色の魂はパチンと音がするように光をまき散らしながら弾けるように忽然と消えた。

残った魔力と銀色の光が上へ上へと舞い上がり、消えていく。

ふんわりと光る幻想的な光景は室内ながらも、空へ還る雪のようにも見えた。


今はしばらく、休んでいて。

少年が休息に入ったのを見て、僕達も一度昼寝をしようかとスピリーツに提案すると、彼女も頷いて了解してくれた。

レヴィンにも暫くは考える時間を与えるのもいいだろう。










〈リーディさん、準備が整ったようですよ〉

「ん。分かった」

レヴィンの報告に頷いて、もう一度持ち物を見直した。持ち物といっても、大事なものだけ。

戦うための剣。僕には剣主体で魔法をサブで使う方が合っている。無限の魔力といってもほとんど扱えていないし。腰につけておく。

右腕に付けている子供のにしては大きめの腕輪、レヴィン。金色の土台に赤色の石が4つに黒い石が1つ飾りが付いている、大事な仲間。

そして左胸のポケットに入れているネックレスは大切な主への忠誠の証、誓いの証。親友との思い出。

それだけ持てば後は十分。長い、永い旅に大きな荷物は必要ないだろう。


今まで着ていたパーカーからスピリーツがくれた故郷のものに似た服をくれたので、それに着替えてからその上に灰色のローブを羽織って僕は部屋を出る。

もう二度とこの部屋この家、この世界には戻らないだろう。

僕はまた自由気ままな旅に出るのだ。世界を跨ぎつつの自由自由な旅。スピリーツに頼んで色んな世界から花の苗を持ってくるのもいいかもしれない。


ユズキ達にはレヴィンから旅に出ると一言伝えてもらってるので気にはしないだろう。

それに今度は破壊活動なんてしないからね。


「待たせたね」

家の外で待っていたスピリーツに声を掛けると、空を見上げていたスピリーツは僕の方を見た。

「じゃあ行きましょう」

〈まずは何処に行きます?〉

そうだなと考えてから雪矢と同じような方法を取ることにした。

つまりはそう。


「飽きるまではランダムに飛んで、その世界を旅していこう」

「ま、それもアリかしらね。私でもできるけどここはレヴィンにお任せするわ」

〈了解しました。どんな世界に飛んでも文句は無しですよ〉


ピピピッと機械音を鳴らしてレヴィンは僕らの足元に魔法陣を展開させた。

金色の光が僕を包み込み、レヴィンが聞きなれない世界名を口にすると同時に光が強くなり、転移される最後に大体の世界で同じ、青い空を見た。

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