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魔法と闇と絶望と  作者: 凛莉
最終章~騎士と王~
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第64話 絶望を砕いた-02



「行くぞ!」



そう一言発して地面を蹴って飛び上がる。

人面樹はとてもデカい為、ひたすら根っこでポカポカしても仕方がないし、空中の方が何かと都合がいいだろう。

僕が意識して飛んだ事はないが、力に飲まれている時に飛んでいた為か、雪矢がよく中に浮いていたからか安定して飛べている。

しかし、足元に地面が無いのには違和感を感じる。


ギュルギュルと2本ほど枝がこちらに向かってくるが、真ん中に隙間がある。

それに向かってスピードを上げて突っ込む。

白い翼も撃ち抜かれないよう畳み、脇に枝が通って行くのを見て、顔の上部分に剣を振るう。

ガキッと金属を切ったような手応え。

「くっ・・!?」


思わず手を引く。

硬いとは思っていたが・・・・。

見ると傷が付いているが、傷の中を見るとほとんど傷ついていない。


本当に木なのかそれとも金属か。僕が知らないだけ?

どうしようかと人面樹を見るが枝で木が見えない。ガードしているようだ。ってことはあまり強くはないのか?

次の攻撃に移ろうと動こうとすると、真下の地面からベキベキと何かを砕く音がして咄嗟に避ける。


グォンと先端が槍のように鋭い枝が出てきたようだが、気にせず身を守っている枝を切りに行く。

近寄る前に枝が分かれて行く手を阻むが、これはどうやらただの木のようで簡単に切れる。木にしては硬いが。

人面樹は顔のある前を強く守っている為回り込んで守りの薄い脇を攻撃する。


表面の皮は普通の木より少し硬いものの、斬れないほどでもない。

しかし中身は、細ければ問題ないだろうが凄く硬い。

そしてただの木と言っても、枝は普通の鉄位はあるだろう。


これはどこかで弱点を探さなければ・・・と!


「っ!」


一瞬の隙を付いて、枝がこちらに向かって伸びてくる。

後ろに下がって避けるが後ろにも枝が迫っていたのに気づかず左肩を貫く。


「くあっ?!」

痛みを堪え、刺さった枝を、後で抜けるように長く斬りそのまま横に回転して迫り来る枝を斬り、弾く。

剣に当たらなかった分は足元や腹を掠め、傷を作っていく。

足に当たった枝は蹴って怯ませるが・・・あまり効果はないようだ。


だが一瞬だけでも怯んだのならっ!

空中で足元の枝へと剣を振り下ろす為に一回転。

左肩に突き刺さっている枝を強引に引っこ抜き投げ捨てる。

血が出ていて左腕が動かしにくいが、何とかなるだろう。


周りを見渡すと、部屋全体に枝が伸びている。


「囲まれた、か」

そう呟くと全方位から枝が伸びてくる。

避けるにも、隙間が・・・あったっ!


「くっ!」


ある一点目指して全速力で飛んでいく。

人一人がギリギリ通れるかの隙間。


翼が傷つくが仕方がない。

串刺しにされるよりは・・・。

左腕を右手で支え、隙間を抜けていく。


頬を掠め、髪を数本散らしながら何とか通り抜けた後、後ろを振り返ると枝の塊ができていた。

どうやら複雑に絡み合っていて解けないようでグニャグニャと動いている。


それに白い翼をよく見ると光の粒子で出来ているらしく触ろうとしても通り抜ける。

・・・ほう、これは便利だ。


もう悠長に考えている暇もないだろう。

人面樹を睨み、一気に加速する。目標は、人面樹の顔。


枝を斬り払い、人面樹の目へ思い切り剣を突き刺す。

意外と柔らかいのを感じて深く剣を刺していく。

途中で剣を回したりして抉り、更に深く剣を刺す。


『アアアアアア!!!』

少女の声と、それに混じった獣のような甲高い悲鳴。

人面樹の顔が苦痛に歪み、樹が震え地面が揺れている。

・・・枝の動きも止まっている。


そろそろ限界だと思い根本まで刺した剣を一気に引き抜いた。

「・・・根本から枝を切れば少し楽になるか?」


ビクビクと痙攣している枝を見てから高度を上げ、太い枝を斬りに行く。

「ふっ・・・!」

流石に硬いなっ!!


しかし少しずつ切れているようで、少しずつ剣が埋まっていく。

「はあぁっ!!」


ガキンと太い枝が切り落とされ、その反動を利用して人面樹の本体を刺していく。

流石にヤバイな。・・・後ろと両脇から来てる。


「なら、下に逃げればいい!」


体勢はそのままに、下へ急降下し一度枝を避け、回りこんでから枝を切り落とす。

大分下に来ていた為、地面から槍のように根が生え出てくるので今度は高く上がる。

追いかけて来るがそれもタイミングを合わせ落とす。


いつの間にか絡まっていた枝が消えている。

そういえば、枝の量も少し少なくなっている?


「好都合!」

顔を狙いに行く!!


枝に阻まれつつも全速力で顔へ飛びつく。

片目は潰れている為、もう片方の目を潰す。

十数秒目を潰してから浮き出ている鼻を蹴り飛ばし、後方へ下がる。


「雪矢だったら、もっと楽なんだろうな」

一言呟く。


身体は同じだけど、僕にあんな超越した才能は無い。

チートで、最強。


僕には程遠い、未だ訓練中の身だ。騎士と言ってもまだ新米。

雪矢に任せれば楽で、早く、最高の結果を残すだろう。

だけど、これは僕の世界の事。


コイツは全く関係無いが、きっとコイツを倒さない限り、何も始まらない。

そんな気がする。

緑溢れる世界にする為には、害虫を駆除しないといけないんだろうね。



枝を避けながら狙う場所を定める。

レヴィンを刺したものと同じような針が雨のように飛んでくる。

弾いて、避けていくが動かしにくい左腕に傷が多く付いてくる。

数本刺さったが、一度針が止んでいる間に抜いていく。


「・・・っ」


やっぱり、レヴィンに刺さったものと同じだ。

そしてやはり、この程度でこの金属やあの石は砕けたり、しない。きっとこれが無くてもレヴィンは近いうちに・・・。

じっと人面樹の潰れた両目を見つめ、思考を振り払う。


視界はこの両目だけではないだろうが、かなり見づらくなっただろう。

「次は・・・」


決めた。

弱点探しのついでに、周りを覆っている木を削ろう。


「せーのっ!」


一度高く飛び、天井近くまで飛び上がる。

上から見た人面樹も、枝がうごうごしていて気持ち悪い。

ただ、ところどころ枝が切られているため、最初よりは少ないだろう。


「突っ込め!!」


急な角度で突っ込む。

途中で切れそうな少し太めの枝は途中で切り落としていく。

剣を両手で持ち人面樹の表面だけ刺して引っ掛ける。

後は一気に急降下する。


自然と斜め下へと向かう為、人面樹の鼻も削れた。

悲鳴が聞こえたが、一番下まで辿り着くまで気を抜かない。


「っと」

斬り落とすと重い物が落ちた音がしたので、思ったより重かったのだろう。

地面スレスレになって下にも根が出てくるのを忘れず避けて、斬る。

隙を見て着地するが、根は出てこない。


一度離れて見るが、一部だけテープがめくれたようになっていて、これまた気味悪い。



「次、行ってみよう」


再び幹を剥ぐために飛び出した。

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