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魔法と闇と絶望と  作者: 凛莉
第三章 ~騎士と本~
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第36話 蒼の森 後編


「・・・あっ!アンサ、そっちじゃないよ、こっちこっち そっちは崖だよ」

「あ・・すいません、何故でしょうか。 いつの間にか変な方向へ歩こうなんて」


死路の崖の森を歩いていると、いつの間にかアンサが変な方向へ歩いているのだ

アンサ自身でも何故かは分からないらしい


「それにさっきからボーッとしてしまって・・」

「うーん・・・僕は色んな物に耐性付いてるから大丈夫だけど、この辺には何かあるのかな」

〈周辺の空気を分析した結果、先ほどには無かった反応がありました。 行動麻痺毒素があるようですね〉

ピピッと機械的な音を鳴らしてレヴィンは言った


「行動麻痺毒素・・?」

「えっとね、行動麻痺は、ただの麻痺とは違って、一時的に無意識に一定の行動を起こすんだ」


「成る程・・、暗殺者が外へ脱出しようと思っていたらいつの間にか敵の方へ無防備に歩いていた。何てあれば一大事ですね」

何でアンサは暗殺者を例えに出したのだろう? まぁアンサが分かればそれでいいけど


「まぁそんな感じだね。気付いたら変な方向に歩いているのは、この行動麻痺の毒素がが空気中に広がってるからじゃないかな」

〈そうですね・・あっ。アンサさん、そちらではありませんよ〉

「・・すいません、感謝します。 私はどうやら行動麻痺の行動を起こしやすいようですね」

しょっちゅう変な方向へ歩くアンサ。このままだと目的の洞窟まで時間が掛かるなぁ

どうしようか?


・・・あぁ。そっか 浄化させればいいのか


「聖なる水で、清めたまえよ」

即興魔法。

これは拳大の球体の聖水を作り出して、それを霧状に発散させるというだけの魔法


本当、僕の能力の一つ、魔法創造の無駄遣いだよね・・・

即分析は色んなところで使えるから重宝しているんだよね


「これは・・霧?」

「うん。毒を中和させる霧だよ。 今創ったんだ」

「! ・・・そういえば師には能力の魔法創造が有りましたね」

今創ったと言ったらアンサが一瞬驚いたようだが、魔法創造を思い出したのか納得したような顔をする

アンサには伝えてたんだよね、僕の能力?の事


そういえばこれ能力って言ってるけど、魔導書で覚えたんだよねー・・・・

能力というより、魔法に近いかなぁ・・・・でも能力って言っちゃったし、


いっか。



「調子はどう?」

「ええ、スッキリしました」

先ほどより顔色もサッパリしているアンサが答えた


ノワールは霧の水が耳に入ったのか、顔をブルブルと震わせ、両手で耳を弄っていた


霧も少し落ち着いてきて、周りをぐるっと見回すと、先ほどよりも青い色の木が並んでいた

奥には何やら黒い物が見える

多分あれが洞窟の入り口なのだろう。 相当暗い


「アレですか?」

アンサにも見えていたようだ


「みたいだね、大分暗いなぁ」

まるでナニカの口みたいだ


入り口の前まで来たけど、入り口は思ったよりも大きかった

「うわ・・・」

「前が見えませんね」

〈・・・・いろんな意味で不気味ですね〉


「にゃー・・・」

レヴィンの言った通り、少し不気味だ

ノワールも毛が少し逆立っている



「入ろうか・・・」

〈マスター、お待ちください。この奥の空気成分、土壌成分を調べた結果、毒性です

マスターは兎も角、アンサさんやノワールに対して、生命の危機です。浄化を〉


・・! やっぱりここも毒性か


「うーん・・空気も土壌も・・・? うん、こうすればいいのか。アンサ」

「はい」


「地面に氷、張れる?」

「地面にですか? そうですね・・ 出来るだけやってみます」


アンサは一歩前に出て、右手を軽く下へに出す

薄水色の魔方陣が展開すると、魔方陣がキラりと光った

「」


アンサがボソリと魔法の名前を呟いたが、その声はとても小さく、聞き取る事は出来なかった


魔方陣が消えると、洞窟の地面に氷が張られていった

雪矢はその氷の上に乗り、屈んで氷に触れる

その氷は魔法で出来たため、冷たくは無かった


「上出来だよ」

「ありがとうございます」

やはりこういう魔法は魔力の消費が多いのか、アンサの顔が少し赤かった


雪矢は立って、アンサとは逆に、左手を軽く上に出した

「次は僕の番。 聖なる水よ、光を灯し清めたまえよ」

そう言うと、手を上げていた左手の少し上から、光る球が現れ、それを水が丸く包んだ

光る水の球の完成だ

そしてその球は先ほどと同じように霧を出している



うん、想像通りだね


「これは・・」

「懐中電灯代わりにね」

〈マスターが空気を、アンサさんが地面をですか〉


「これも修行の内ってさ」

「うにゃー?」

ノワールが雪矢を見上げ、不思議そうな顔をする



その後は光る水の球のお陰で、サクサク進めた

レヴィンが道案内してくれたお陰でもある


〈そこ左ではありませんよ、右です〉


本当・・頼りになる





「アンサ、ずっと氷を張ってきたけど、魔力は大丈夫?」

この世界、蒼の森には魔力が無い為、己の魔力のみが頼りなのだ

「そうですね・・。半分は、残ってます」


30分も魔力を消費し続けているのに半分も残っているのは、アンサの魔力量が多いのか、効率がいいのか

多分どちらもだろう



〈あ、マスター。次は真っ直ぐです 多分そこがこの洞窟の最奥になるかと〉

「了解」

レヴィンの指示通り暫く真っ直ぐ進むと、うっすらと光が見えた


「光ですか?」

「そうだね・・・」

〈・・? この先、毒成分が一切見当たりません〉


「此処だけですか・・不思議ですね」

「うん・・兎に角あそこに行ってみるしかないね」


もしかしたら特別な果実があるかもしれないね





光の先に見えたものは

家一軒建つんじゃないかという位スペースが開いた場所に


一本、大きくも小さくも無い木が立っていた


木の真上、天井部分には、穴が開いていて、そこから光が差していたのだろう


葉は金色に煌いていて、どこからか来る風に揺られてはまたキラキラと輝いていた

その木には、2つ実が付いているものと、1つ実が付いている細枝があった


「まさかこれが・・・」

〈その果実には毒性は無い模様です。多分アンサさんが言っている通りこれが『特別な果実』なのでしょう〉


雪矢達は木の下へ近づいて、その木や果実をよく見る

果実はリンゴのような形で、金色に輝いている。そこまでキツい色ではないので、逆に食欲をそそられる

大きさはリンゴを一回りほど小さくしたくらいの大きさである


雪矢は果実の下と近づいていき・・・

〈あ、マスター。この木、見た目と違って、樹齢が3万年を超えています。枝が1cm伸びるのに1年は軽く──〉


バキッ──バキィッ




その果実が付いている細枝二本を根元から折った



「!!?」

「うにゃ?」

〈なっ!?〉

アンサは突然の行動に開いた口が塞がらず、ノワールは何が起こったのか知らず、レヴィンもこれまた驚いている


「・・・ふふ。 これ、枝を根元から取れば、果実が永遠に食べれるんだよ」

「〈なんと・・〉」


見せるために雪矢は果実を一つ捥ぎ取って見せた

すると、捥ぎ取られたはずの果実がまた実っていた


「・・うん。アンサにはこっちの方でいいかな?」

雪矢はアンサに果実が一つついている細枝を手渡した


「有難うございます」



「さて、この世界にはもう用事がないかな」

「そうですね・・ そろそろ行きましょうか。 出来れば一休みしたいですね」


「にゃー」

〈では行きますね〉

足元に金色の魔方陣が展開される


〈ランダム転送開始します〉








──〈ランダム転送:ルナティア〉

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