第24話 氷結のアンサ
~アンサSide~
弟子として認めてもらった
それが何よりも嬉しかった
私の名は アンサ=ナイアント
私はいつも独りだった
両親は私が3歳の頃事故で死に、孤児だった
魔法や剣術を独学で学んでいた
私は暗殺者に向いているらしい
私はそれを知ってから、孤独を望んだ
人と関わる事はほぼ無くなった
だからなのか、私の得意属性は氷だった
そして12歳の頃だっただろうか?
ある一人の若い男がやってきた
その男は、旅をしながら強者と戦っているらしい
「手合わせ一つ、お願いします」
私はそう言って、戦いを挑んだ
結果は、惨敗だった
そして男はこう言った
「自惚れるな」と
今まで自惚れてなんて無かった
なのに何故、そう見えたのか
その時はまだ分からなかった
その後私は旅をした
あの男と同じように
たった二本の短剣を手にして
旅をして、弱点を見つけ克服した
そんなある日『ゼリスク』という組織を見つけた
正義の味方というのは好かないが、そこならば強者と出会える
そう思った
私の予想通り
霧島ユズキ
マーレ=ミゼ・シレナ
アール・ミラトゥネ
ソーミィ・ミラトゥネ
渦馬星武
この5人に出会った
あの男よりも、強いと思った そして
憧れた
雰囲気・・纏っているオーラが違う
私は霧島ユズキ、マーレ=ミゼ・シレナの教え子になった
「刃を覆え、氷よ! アイス・ダガー!!」
新しい技を、教えてもらった 名前は「アイスダガー」
私は詠唱無しで、この魔法を発動する事が出来る それ以外は出来ないが
「アイスダガー」
形だけの呪文を口にする 足元に
魔力が刃に集まり、凍っていく
「ハイド」
姿を見えなくし
「ダイヤモンド・ダスト」
さらに目晦ましの魔法を使い
アイスダガーを発動させ
「夜の舞」
これで踊るように斬る
私は半分魔導師、半分暗殺者みたいなものだ
ゼリスクの廊下を歩くと、すれ違った人に「氷結のアンサ」と言われた
他には「氷の騎士」「氷魔導騎士」と、色んな二つ名を聞いたことがある
それは魔法なのか、心なのか あるいは両方なのか それは知らない
ただ、私は正々堂々戦うような騎士ではない
私は、相手を混乱させ、その内に相手を落とす
闇に身を隠し、背後から襲う暗殺者と同じだ
そしていつも通りの時間が過ぎる
私は腰まで届く黒い長い髪を後ろに束ねる
そして同じ訓練生達と共に訓練室へ入る
最初に目にしたのは、私が密かに憧れている5人
次に見たのは
惑星破壊、生態系破壊及び殺人、器物損壊の罪があり
危険人物 指名手配犯 一級犯罪者 そう呼ばれている人だった
「あ!貴方は指名手配犯!?何故こんなところに!!」
イキュリーが犯罪者を捕まえようと前に出る
「わわ、イキュリーちゃん、皆、待って」
しかし、ユズキ教官がそれを止める
「ユ、ユズキ教官! ですが・・あいつは一級犯罪者なのですよ!?」
私はあの犯罪者の映像を一度だけ、見たことがある
狂ったように笑い、見たことも無いような魔法でモノを壊す
そして印象に残るのは嬉しそうな顔と、2枚の翼だった
「言う事は聞きなさい!」
マーレ教官がイキュリーの頭の上から一発殴る音がした
今は翼は無く、見るだけだと普通の少年のようだった
しかし内側から滲み出るような虚しさは
普通では到底有り得なかった
あの犯罪者には近づくなと、本能が警告する
「事情があるんだ、それを聞こう ・・望月、俺等よりも詳しく、頼めるか?」
「分かった」
星武副管理長も、まるで昔からの友達のように話す
そして犯罪者、望月雪矢もそれが当たり前のように答える
そして私達は、彼の過去を聞いた
聞き終わったとき、頭は真っ白になっていた
「大変ですね」とかそんな物は言えなかった
同情できる隙間も、無かったんだ
そしてそのまま訓練の予定だったのだが・・
「今日は、君達5人プラス私達VS雪矢君!」
『はぁ?』
全員が同じ事を思っただろう
「7対1人って酷くない?」
アール秘書補佐・・もっともだ
「何言ってるの?9対1だよ?」
「私達も参加ってこと?」
「ソーミィちゃん大当たり~!」
『・・・』
彼女の知らないところで「死神」と囁かれているのはそのせいなのだろうか?
断るだろうと思ったのだが・・
「はぁ・・僕は規格外だし、別にいいよ」
溜め息をつきながら、OKを出したのだ
そして規格外という言葉に、少し哀しくなった
意識しているのかは分からないが、自虐するのは・・
昔の私を思い出すようで辛い
だけど今は、とても楽しみなのだ
ユズキ教官達よりも、圧倒的に強いだろう彼と戦うのが!
「私達だって、あれから凄く強くなったよ?」
「ユズキ教官、マーレ教官、早く始めましょう!!」
「え・・あー・・ よーい、ドン!」
・・ユズキ教官、どうしてその合図を選んだのか聞きたい
しかし私は素早くバリア服を付け彼の後ろに立った
「レヴィン」
〈了解しました〉
彼のサロ・・? しかしアレはゼリスクに入らないと貰えないはず・・
そう考えてるうちに、彼の姿は、灰色のローブ姿になり、手には剣を持っていた
「アンサ=ナイアント、気配が消しきれてないよ」
「なっ!?」
何故・・気づいたのだ!?
「ハイド」
くっ、逃げられたか!?
「どこだ!?」
「・・何、やってるの? 早く、始めようよ 合図はもう、鳴っている筈だよ?」
皆の後ろの方に彼は居た
速い そして・・強い!
「ファイア!」
スペルヴが先手を打ったが、簡単に消されてしまった
「サンダーボルト!」
「ファイアブレス!!」
「ライトニング・・うわぁっ!?」
ソーミィ災害救命副隊長がライトニングを唱えようとしたのだが
彼のファイアで邪魔されてしまった
「アイスダガー!」
この隙に私は接近戦を仕掛ける!!
剣で弾かれ、守って・・ 攻防戦が続いた
どう攻撃すればいいのか・・?
「効かない・・!」
「アンサ=ナイアント、攻撃に迷いが生じている その為、読む時間が出来る そして攻撃が遅い」
「・・はいっ!!」
的確に弱点を言う
一旦私と彼は後ろに飛びのく
「ココから、本番だよ 覚悟してね・・」
彼はニヤりと不気味に笑っていた
その後私は、一旦引き下がった
しかし、去り際に聞こえた彼の声は、恐ろしかった
「今日は、見逃してあげるね」
・・と
───彼なら、私の師になってくれるかもしれない
そう、考えた
その後、ミラトゥネ姉妹がアウトになった時、私は動いた
「アイスダガー!」
「アンサ、さっきよりも良くなっている 弱点を少し、攻略した様ですね」
その言葉は、嬉しかった まるで親に褒められる子のように
だから私は決めた
「雪矢、貴方は強い、恐ろしい程にっ!!」
私の思いを・・今伝える!!
「だが同時に・・私の尊敬するべき人にもなったっ!!」
「・・?」
「だから私はっ! 貴方に剣を・・全てを教えてもらいたい!!」
これが私の本心だ
剣や魔法・・全て、あの人が上回っている だから教えてもらいたかった
「目や言葉でよく分かった、今日から君は僕の教え子だよ」
彼の顔は少し綻んでいた
そして止めを入れられる
「くっ!」
「4人目、アウト」
負けたのは正直、悔しかったが、とても嬉しかった
その後は、全員アウトで、師の勝ちだった
「そろそろアレだから、僕はもう行くね」
「・・うん」
「また、来てね」
そして私の方を見る
「勿論、また来るよ 教え子の為にも・・ね」
「・・師よ、待ってます」
少し顔が熱い・・ 風邪だろうか?
師よ・・貴方が来るのを、待ちます
ずっと、待っております
氷結のアンサは、どう変わるか、楽しみだ
~Side-out~
大分間が空いちゃいました
誰だよ更新速度上がるとか言った奴は




