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009 二日目

「夜になると徘徊する習性でもあるのか……」


 外の通りを歩いているゴブリンを見ながら呟く。

 ゴブリンと戦うことは可能な限り避けたかった。


 戦闘になればまず間違いなく俺が勝つ。

 敵の数は1000体を超えるが、負ける気はしなかった。


 斉藤邸に立てこもって突っ込んでくる敵を倒せばいい。

 いかに相手が多勢でも、家の中なら群がるのは難しいだろう。

 フィールド条件は今までで最もいい。


 それでも避けたいのは女子がいるからだ。

 俺は問題なくとも琴乃たちはそうもいかない。

 彼女らを守りながら戦うのは至難の業だ。

 戦いになれば誰かしらが負傷ないしは死ぬ危険があった。


「どうしよ……海斗……」


 琴乃が不安な顔で俺を見る。


「とりあえず電気を消してカーテンを閉めよう」


 由梨がネットで掴んだ情報を思い出す。

 ――魔物は光と音に反応する。


 その情報が正しければやり過ごせるだろう。

 正しくなければ戦闘だ。


「リビングの電気、消してきた」


「サンキュー、佳奈」


 電気の無駄遣いを避ける為、リビング以外は最初から消していた。

 魔物ではなく他所の人間から見えないようカーテンも閉めていた。


「俺はここから監視を続ける。三人はシェリーと一緒に中で待機していてくれ」


 三人は静かに部屋へ戻る。

 俺は大きく息を吐き、そっと覗く。


(光に反応するというのは本当みたいだな)


 魔物の群れはしばしば建物に踏み込んでいる。

 建物に共通しているのは中から明かりが漏れている点。

 なのでコンビニの中もゴブリンで溢れかえっていた。


 その中でも幸いなのは、魔物が人の食べ物に興味を持っていないこと。

 コンビニに入ったゴブリンは、余っている食品を完全に無視している。

 奴らが食いたいのはハンバーグ弁当より人間なのだ。


(この家は大丈夫そうだな)


 群れの先頭を歩くゴブリンが斉藤邸を素通りする。

 後続もそれに続いた。まるでアリの行列だ。

 最後尾のゴブリンが通り過ぎるのを確認してから部屋に戻った。


「もう大丈夫だ。リビングのカーテンを最初から閉めていたのが功を奏した」


 今は亡き大堂が夜に攻めてくるかもしれない。

 そう思って外から中の様子が見えないようにしていた。


「ヒヤヒヤしたぁ、攻められたら一巻の終わりだったね」


 ホッと息を吐く由梨。


「俺とシェリー以外は終わりだったな」


 シェリーは舌を出して尻尾を振る。

 吠えないのは魔物を警戒しているからだろう。


「なんで海斗は終わらないのさ?」


「屋内戦ならスタミナ切れにならない限り負けないさ。敵の強さはもう把握している」


 三人が「おー」と感嘆する。

 それから由梨がニヤニヤして言った。


「敵の強さはもう把握している、だってさ。かっこよすぎでしょ」


「別にかっこつけたつもりはないんだがな」


 三人は思ったよりも落ち着いている。

 俺と違ってゴブリンに襲われたら死んでいたかもしれないのに。

 俺が彼女らの立場だったらもっと青ざめているだろう。


(強いな、この三人は)


 小さく笑ってから、次の指示を出た。


「万が一に備えて一つの部屋に固まって寝ようか」


「いいけど、ベッドは1つしかないよ。大きいから運んでくるのも大変だし」


「琴乃の言う通りではあるが、クイーンサイズだから問題ないだろう」


「その気になれば四人で並んで寝ることができるね」と佳奈。


「じゃ、海斗は端っこでその隣が琴乃ね! やったね琴乃、イチャイチャするチャンスだよ!」


「ちょっとー! やめてよぉ」


 琴乃は顔を赤くして俯き、「うふふふ」と笑っている。


(こんな時でも呑気な奴らだなぁ)


 俺は「やれやれ」とため息をついた。


「ベッドは三人で使えばいい。俺は床で寝るよ」


 斉藤邸はどの部屋もふわふわの絨毯が敷いてある。

 敷き布団の代わりとしては物足りないが、この環境なら文句はない。

 別の部屋から掛け布団と枕を取ってくれば余裕で眠れる。


「えー四人で寝ようよー、いいじゃんいいじゃん」


 などと由梨は喚いたのだが、結局、俺は床で寝ることにした。


 ◇


 時間は流れ、日が昇り――。

 魔物と戦闘になることなく朝を迎えた。


 しかし、起きてすぐに問題が起きた。


「あああああああ! 電気がつかないよ!」


 悲鳴にも似た由梨の声が寝室に響く。

 他の二人も愕然としている。


 そう、インフラが死んだ。


 思ったより長生きだったな、というのが素直な気持ち。

 覚悟はしていたが、実際に体験すると衝撃的だった。


「キッチンに行こう」


「何するの?」と佳奈。


「諸々の確認だ」


 皆で1階のキッチンへ向かう。

 カーテンが閉まっているので、家の中は朝でも薄暗い。


「水道もダメ!」


「ガスも使えないみたい」


 琴乃と佳奈から報告を受ける。


「電気が使えないのは分かるけど、なんで水とガスもダメなの? 計画停電の時でも水とガスは使えたよ?」


 由梨が尋ねてきた。


「どちらも各家庭へ供給するのに電力を消費するからだ。停電で止まるは家庭の電力だけで、水道やガスの供給を行っている業者には電力の供給が続いている」


「東京に住んでいる棋士仲間は、計画停電の時にガスも止まったって言っていたよ?」


 今度は佳奈だ。


「たぶんその人の家で使ってるガスコンロはコンセントを使う物だったんだと思う。電池で動かすタイプだったら使えたんじゃないかな」


「なるほど」


「もしくは由梨の家がプロパンガスを使っていたかだな。俺自身が計画停電を経験したことがないから断言するのは難しい。すまんな」


 俺は冷蔵庫を開けた。

 すぐ隣の大型冷凍庫も開ける。


「何しているの? 電気が死んだんだから冷蔵庫もアウトなんじゃ?」


 琴乃が不思議そうに見ている。


「それは分かっているさ。ただ、いつ死んだかは分からないだろ? 今はそれを確かめている」


 冷蔵庫や冷凍庫にある物を触れば、電力の推定死亡時刻が大雑把ながら特定できる。


「どちらもかなり冷たい。冷凍品に至っては凍ったままだぞ」


「つまりさっきまで電気が生きていたってこと?」


「ご名答」


 そうと分かればやることは決まっていた。


「冷蔵庫や冷凍庫の物が腐る前に使わせてもらうとしよう。今日の朝は高級食材をふんだんに使って料理を作ろうぜ!」


 琴乃と由梨が「うおおお!」と興奮する。


「任せて! あたしが作るー!」


「ウチもー! 佳奈も一緒にやろうよ!」


「私、料理の経験ないよ。囲碁ならできるけど」


「いいじゃん。こんな立派なキッチンで調理することなんて、この世界じゃ二度とできないかもしれないんだよ。上手い下手なんか関係なく楽しまなくちゃ!」


「じゃ、じゃあ、頑張る」


 由梨に引っ張られて、佳奈も調理に加わった。


(この世界じゃ二度とできないかもしれない、か)


 たしかにその通りかもしれない。


 ◇


 カセットコンロを大いに活用し、朝から最高級のステーキを堪能した。

 ダイニングテーブルに所狭しと並ぶ皿には何の料理も残っていない。


 驚いたことにシェリーもテーブルで食事をとっていた。

 前肢をちょこんとテーブルに置き、器用にご馳走を食べている。

 流石はホワイトシェパードだ。


「ねーねー、スマホが使えないんだけど?」


 食事が終わって膨らんだお腹を撫でていると、由梨が尋ねてきた。


「スマホが使えないって? 充電が切れたのか?」


「そうじゃなくてネットに繋がらないの」


「ああ、それだったら三人が料理をしている頃からだよ。ネットも死んだ」


「ええええええ!」


 由梨はシンクに運ぼうとまとめた皿を床に落とした。

 どれだけ捻くれた見方をしても高級品にしか見えない皿が割れる。


「やっちゃった……でも、まぁいいか」


 割った本人はケロっとしている。

 破片を踏んだら危ないので、あとで掃除しておこう。


「で、ネットが死んだってマジ!?」


「マジだよ。サーバーが死んだのか、それとも回線が死んだのか。もしくはその両方かもしれない。とにかくインフラ各種と同じタイミングで逝ったようだ」


「最悪じゃん!」


「たしかにネットの死亡は想定外だった。スマホのバッテリーが生きている限りはSNSを出来ると思っていたからな。だがまぁ、問題ない範疇だ。スマホが役立たずになること自体は想定していたわけだしな」


「リュウのまとめをプリントアウトしておいたのは正解だったね」


 そう言って破片の掃除を始める佳奈。


 由梨は「手伝うよ!」と作業に加わった。

 そのセリフは佳奈が言うべきではないだろうか。


「印刷した情報は既に記憶しているんだけどな」と笑う。


 インフラの死亡に備えて、昨日の内にSNSの情報を印刷しておいた。

 リュウというのはネットの情報をわかりやすくまとめた中国人のことだ。

 ネットでは「Ryu」と名乗っており、どういう漢字なのか分からない。

 性別や年齢、そもそもリュウが本名なのかも不明だ。


 ただ、彼のまとめには多くの人が救われていた。

 ひとえにSNSといっても使用されるサイトは色々で、国によって異なる。

 さらに使われている言語も様々だから、有益な情報を漁るのも一苦労だ。


 リュウはそういった情報にまとめていた。

 それも複数の言語に対応している完璧ぶりだ。


「スマホの価値は大きく下がったが、それでもまだ使いようはある。それほど嵩張らないし持っていて損はないだろう」


 話が落ち着いたので席を立つ。


「俺はこれから北魔窟町に向かう」


「「「えっ」」」


「本土へ行くには船に乗る必要があり、船は北魔窟町の港にしかない。そして、そこには魔方陣があって紫ゴブリンが待っている。つまり、どうやっても紫ゴブリンとの対決は避けられない」


 三人は静かに耳を傾けている。


「だからまずは偵察だ。紫をはじめ魔物たちの行動パターンを把握する。で、可能なら紫と手合わせする」


「それは危険だって」


 琴乃がテーブルを叩いて立ち上がる。


「危険は承知だが、どこかでリスクを取らなければ前には進めない」


「じゃあ私たちも一緒に行く! リスクを取るなら皆で一緒にだよ!」


 由梨と佳奈が頷いた。

 シェリーも「ワンッ」と力強い声を出す。


「気持ちは嬉しいが今回は一人で行く」


「どうして!?」


「邪魔だからだ」


「邪魔って……」


 琴乃の目に涙が浮かぶ。

 悔しそうだ。


「言い方が悪くて申し訳ないが、今回の作戦は一人のほうがいいんだ。機敏に動けるからな」


 俺は琴乃の傍に移動し、彼女の頭を撫でる。


「ごめんな」


「いいけど……絶対に死なないでよ。あの大堂ですら紫にやられたんだから」


「俺は大堂の100倍強いから安心しろ」


「うん……!」


 琴乃が抱きついてきた。


 どうしたらいいか分からず目が泳ぐ。


 由梨が口をパクパク動かして手で何か合図している。

 唇の動きから「キスしろ、キス」と言っているのが分かった。


(やれやれ、この女は……)


 心の中でため息をついた。


「そんなわけだから俺はガレージのスポーツカーで北魔窟町までかっ飛ばしてくる。三人はシェリーと一緒に周辺の家から使えそうな物を集めてくれ。いつまで斉藤邸で過ごすことになるか分からないから、手当たり次第に確保してほしい」


 琴乃が顔を上げて「任せて」微笑んだ。


「あと、これは大事なことなんだが」


 そう前置きしてから真剣な顔で言う。


「俺のいない間は絶対に他の奴らと関わるな。たとえ相手が知り合いであったとしてもだ。性別も関係ない。もし誰か見かけたら作業を中止してこの家に立てこもるように」


「大堂が死んだのに誰か来るかもしれないと思っているの?」


 佳奈が尋ねてきた。


「いや、おそらく来ない。指揮系統が九頭竜で固まっているようだし、九頭竜も今は俺の相手をする余裕などないはずだ。だから俺も三人をおいて偵察へ出ようとしているんだ」


「じゃあ念の為ってこと?」


 そうだ、と頷く。


「この町、いや、この島において斉藤邸が最も安全だ。窓は全て割れない防犯ガラスだし、玄関の扉だって簡単に蹴破れるものではない」


 足下で尻尾を振っているシェリーの頭を撫でる。


「俺の留守中、三人を頼むぞ。他の奴が近づいたらすぐに教えてやるんだ」


「ワンッ!」


「よし、それでは行ってくる!」


 偵察任務の開始だ。


 ◇


 スポーツカーと言えば低燃費。速くてカッコイイのが全て。

 そんなのは昔の話。今時は燃費も重視されている。

 リッター20は当たり前。モノによっては30も超えてくる。

 というCMがあったのだが、まさにその通りだった。


 斉藤邸のガレージで眠るスポーツカーはハイブリッド車だ。

 桁違いのスピードでありながら燃費もいい。

 SUVに比べて低い車体が、数値以上のスピード感をもたらしている。

 車に興味のない俺ですら運転していて気持ちよかった。


 走っている場所もいい。

 海岸沿いの綺麗な道は遠慮無くアクセルを踏み込んでいける。

 昨日は退屈に感じたこの道が、今日はサーキットと化していた。


 窓を開けて歌いたい気分。

 一曲歌うか? 誰も聴いていないし問題なかろう。

 歌っちゃえ。


「OH! YEAH! ――って、おい! なんで道路で寝てるバカがいるんだよ!」


 気分が高まってきたところで障害発生だ。

 道路のど真ん中で誰かが横たわっていた。


 八校の制服を着ている男子だ。

 うつ伏せなので顔が分からない。


 慌ててブレーキペダルを踏む。

 天井知らずのテンションが底の底まで下がった。


 車から降りて対象に近づく。


「こいつ……小太郎か?」


 小さくておかっぱ頭。

 真っ先に浮かんだのが鈴木小太郎だった。


「おい、こんなとこで寝るな。危うく轢いてしまうところだったろ」


 こいつを轢いても心は痛まないが、俺のほうが危険だった。

 派手にコースアウトしていたかもしれない。


「やっぱり小太郎じゃねぇか」


 ひっくり返して分かった。

 九頭竜にいじめられていた鈴木小太郎だ。


「起きろ、生きているのは分かっているんだ」


 小太郎の頬をペチペチ叩く。


「うっ……ここは……パパ?」


「違う、俺は夏野だ」


「あ、ああああ! 夏野さん! 僕、ついに到着したんですね! 夏野さんのいる町に!」


 小太郎が抱きついてくる。

 意味が分からないので頬を引っ叩いて落ち着かせた。


「お前、南魔窟町に来ようとしていたのか」


 小太郎が赤く腫れた右の頬を押さえながら頷いた。


「歩いて向かっていたのですが、思ったより距離があって……。それに夜は魔物の群れが出てきたから隠れていて……。でも、どうにか着けました!」


「いや、着けてないからな。お前は道ばたで倒れていたんだよ」


「なんと!?」


 小太郎は妙にハイテンションだ。

 そういえばコイツ、昔から俺のことが大好きだった。

 何度かイジメから助けてやったことで勘違いしているようだ。


「それはいいとして、町に着いたら何をする予定だったんだ?」


「夏野さんの仲間に加えてもらおうかと……」


「無理だ」


「早ッ」


「すまんが人数オーバーでな」


 俺たちの移動手段であるSUVは既に満員だ。

 5人目の座る余地はない。


「そこをどうにかお願いします! 何だってしますので!」


「ふむ」


 小太郎からは熱意が感じられる。

 まるで頼りにはならないが、熱意があるのはいいことだ。

 俺としても可能なら仲間を増やしたいところ。


「何だってするのではなく、何ができるかが大事なんだ」


「何が……できる……」


「お前を仲間に入れられない理由は車だ。収容人数がオーバーしてしまう。この問題を解決するには、お前が――」


「運転できます! 車の! 免許あります!」


「え、免許あるの? それも車の?」


「あります!」


「よし、なら採用だ。仲間にしてやろう」


「いいんですか!?」


「原付の運転ができればそれでよかったんだが、車の運転もできるなら文句ない」


「ありがとうございます! 精一杯がんばります! よろしくお願いします!」


「おう。続きは車の中で話そう。南魔窟町まで送るよ」


「分かりました! 運転しましょうか?」


「いや、俺がする。お前の運転技術を確かめていないからな、まだ」


「はい!」


 予定を変更して小太郎と町へ戻ることにした。


「夏野さんの隣に座るとか興奮しますね!」


「誤解を生む言い方はよせ」


「はい!」


「それに俺はお前より女子を隣に乗せたかった」


 シートベルトを着用したら車を動かす。

 素早くUターンした。


「俺の町を目指していたのは分かったが、どうしてこの道を歩いていた? ホテルから徒歩で向かうならもっといいルートがあるだろ」


「実は僕、大堂さんに内緒で逃げ出したんです」


「それでは答えになっていない」


「あ、すみません! えっと、僕、北魔窟町の戦いに参加させられていて、それで、大堂さんと九頭竜が逃げるのを見たから、逃げ出すなら今しかないと思って」


「大堂が死んだ戦いに参加していたのか。壊滅だったと聞いたが」


「え、大堂さん、死んだんですか? どうして?」


 小太郎が不思議そうに俺を見る。


「どうしてって、紫にやられたんだろ?」


「それはありえませんよ!」


 強い口調だ。


「なんでありえない?」


「たしかに大堂さんは片腕を負傷していたけど、逃げ切っていましたよ。僕、近くにいたから全て見ていました」


「詳しく話せ」


「実は……」


 小太郎が戦闘の詳細を話してくれた。

 それによると彼は戦わずに隠れていたそうだ。

 ぶん殴りたくなる卑怯さだが、その点はいいとしよう。


 とにかく、大堂と九頭竜は無事に逃げおおせた。

 紫ゴブリンが追撃しなかったからだ。


「臭いな」


「え、僕、オナラなんかしていませんよ!」


「そうじゃない。臭い話だってことだ」


「嘘なんかついていません!」


「分かっている。臭いのは大堂の死因だ」


 紫ゴブリンに殺されたと言われている。

 しかし、小太郎の話がたしかならあり得ない。

 負傷して離脱した大堂が戦場に戻るわけない。

 戻るにしても援軍を連れてくるはずだ。


 つまり……。


「大堂は魔物ではなく人間に殺された可能性がある」


「そんな……! でも、誰が……!」


「大堂が死んで得する人間など一人しかいない」


「九頭竜!」


「そうだ」


 真犯人は九頭竜で間違いない。


「ま、だからといって何も変わらない。対岸の火事だ。どうでもいいな」


 いよいよ南魔窟町に到着した。

 コンビニを抜けて斉藤邸に向かう。


「あれが俺たちの……」


 そこで言葉が止まる。

 血の気がぞっと引いていくのが分かった。


 家の前に一台の車が止まっていたのだ。

 それは俺が発つ時にはなかったもの。

 琴乃たちが乗ったとも考えにくい。


 それに門扉が開きっぱなしになっている。

 嫌な予感がした。

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