俺と俺と俺
3月は終わりの月、4月は始まりの月です。4月1日に人生のターニングポイントを迎えた人も多いのではないでしょうか。
何を隠そう筆者もその一人です。
共に頑張りましょう!!
改めまして、お久しぶりです。
今日から更新を再開していきます!!
最低でも週一で投稿をしていけたらなぁと考えています。勿論、余裕のあるときはハイペースに書いていくのでご安心を!
今週は日曜日にもう一話投稿予定です。
ヴォルト⇄南条 颯
シャランガ⇄水篠 梵
天井を見始めてから何時間経っただろうか。
梵からの呼び出しに対し自分も話したいことがあると返信した颯だが、実際には彼の話は定まっていない。その原因は自分自身について思案していたからだ。
俺は何をしてるんだ?梵に言われるがままサポートに徹している現状に満足か・・・?
そんなわけないだろ…、俺はMeTubeを通じて世間に自ら姿を晒す程の目立ちたがり屋、簡単に言えばスターに…カリスマになりたいのだ。サポートに徹して目立たないなんて南条颯の生き方に反しているし、今まで築いてきたMeTuberヴォルトの印象にも悪影響だ。いっそのこと自分が例の黒仮面だと名乗り出た方が良いのではないかとも考えたが、愚行だろうと自身で否定した。大々的に動画で告知をしておいて活躍できていないからって、「で、でも話題の黒仮面は俺なんだぜ!?」と必死になるなんてダサすぎる。それだけでなくチームに迷惑をかける。アナリストが機能した青山田高校には対策されてしまったが未だ黒仮面=仙ヶ谷高校VAULT という情報は漏れていないはずだ。
ならばどうすれば良いのだ??
人間・颯として、MeTuber・ヴォルトとして、仙ヶ谷高校VAULTとしての最適解を導き出そうとするうちに思考が雁字搦めに陥っていた。
……………………………、
「あーーーーーー!決めた。俺は自分の生きたいように生きるわ。」
思い詰めた彼が最後に優先したのは、人間・颯としての本心だった。
梵が評価し期待してくれているのは俺だ。MeTuberとしての作り上げた虚像の俺でも、一度の失敗で梵に反抗できなくなる仙ヶ谷高校サポート役の俺でもない。
“俺が俺じゃなきゃ俺じゃなくていい。”
一見単純な答えをようやく導き出し、颯は眠りについた。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日、颯は待ち合わせをしていたある駅のカフェに向かって歩いている。普段の彼を知る人ならば今の光景に衝撃を受けるだろう。彼が待ち合わせ時刻に間に合っているのだ。。遅刻魔の彼が遅刻しないほど大きなターニングポイントになると直感していたのだ。自分が自分らしく戦うためには梵を説得する必要がある。
「おはよう、颯。遅刻しないなんて珍しいな。」
「あぁ、今日はね…。」
「それならいつも遅刻するなよ、八都寧なんて呆れを通り越して慣れてきてるからさ。俺はカフェオレ頼んであるけど何か頼む?。」
「相変わらずだね。どうしようかな。」
颯はメニューを吟味し、ブラックコーヒーのLサイズを頼み小倉トーストのモーニングを付け注文した。会計を済ませ、流石はモーニングという速さで提供された品をトレーに乗せて梵のいる席へと戻る。颯が着席するや梵は触っていたスマホから目を離したが、今から始まらんとする重要な話し合いの主導権を握るべく颯が自分から口を開いた。
「俺の話から聞いて欲しい。いい?」
「勿論。その内容次第でこっちの言うことが変わるし。」
なんだか目上の人に話を聞いてもらう様な気分だ。高校の面接の10倍は気が引き締まる。BFカルナバルでは梵は日本を代表するプレイヤーで俺は初心者。上下関係の感覚はあながち間違ってはいない。
だが、このままじゃ俺は俺じゃない。あのときの俺が反面教師だ。俺を再度認めさせるんだ。
「梵が何を伝えたくて呼び出したかは分からない。だけど、俺が伝えたいことはただ一つ。もう一度俺を信じて欲しい。大会前に非常に期待してくれて、その期待を青山田高校戦で裏切ったのは理解してる。その後は色んな気持ちに縛られてお前に言われるがままサポートに徹してた。だが、これじゃ俺は俺じゃない……、今の俺はお前に期待されていた俺じゃないんだよ…。俺はもっと活躍したい、目立ちたい、世界に認められたお前に認められたい。チームを負けに導きかけた俺を信じる事はできないかもしれない。だけど、俺が俺であるためにお前に信じて欲しいんだ!もう一度、俺を、前に立たせてくれ!」
自分の想いを偽りなく恥ずかしさなどかなぐり捨ててぶつけた。これでダメなら俺のBFカルナバルは終わりだ。梵に視線を向けると口元が少し緩んだ気がした。
「ふふっ、俺、俺、俺って如何にも自分中心の考え方だな。色々と考えたって結局は自分の事を優先して突き進む…、俗な言い方をすれば自己中人間…嫌悪を感じる人もいるだろうし、社会人なら失格だ。だが、俺のチームメンバーとしては100点だ。颯の様な極度のエゴイストこそ俺の求めていた仲間だ。正直に言えば、最初は君を八都寧のおまけぐらいにしか考えていたなかった。だが、君の動画配信活動や日々の雰囲気、ランクマッチを見ているうちに君が想像以上の男である予感がした。俺の目指すチームに必要な人間は日本では珍しいんだ。なのに、一度の失敗で付き合いの短い俺でさえ感じとれるほど君は意気消沈をして、あからさまな俺の挑発にも自分を押し殺して黙って…、正直失望していた、態度にも出ていたかもしれない。でも、さっきのスピーチで確信した。君はエゴイストだ。君が君として活躍するために自由に戦えばいい、どんな失敗も俺が尻拭いしてやる。」
予想外の言葉の連続に心の中で苦笑が止まらなかった。俺は梵に試されていたんだ。自分の仲間足り得るのか?既に認めた八都寧と比べてどうか?共に世界を目指せるのか?と。
結果、梵主導の出来レースの様な展開だが、何はともあれ説得は成功できたみたいだ。
「梵も人のこと言えない程の自己中心的だからな…?次の試合から俺らしく活躍させてもらうよ。背中は任せた。」
「予選での活躍で八都寧の素性を隠し通せなくなった、彼女も今までの勢いに陰りが見えるかもしれない。これからは颯が活躍する番だよ。期待している。」
「え、まだ俺試されてる?」
「今日からの南条颯には心から期待してるよ。」
今日からの俺には期待しているという言葉は、以前は失望していた事の裏付けとなる。〝サポートを命じたのはあからさまな挑発だった〟との先程説明していたが、その言葉の裏には失望したお前の尻拭いは御免だという本心が見え隠れする。
世界の頂点は甘くない。それを目指している梵が自身の理想に相応しくない仲間を切り捨てるという思考を持っていても不満はない。彼も自己中心的な思考を持っているし、ジェーキッドに指摘されていた言葉からも彼の対人能力が万人受けするものでは無いのは事実だろう。だが、それを許されるだけの器が梵にはある。
だからこそ俺は燃えた。サッカーを始めたての子供がムバッペ(2020年頃の若手No1サッカー選手)に認められた様な高揚感だ。MeTubeで一定度の成功をし、ある意味ルーティン化していた生活に新たな風が吹く。MeTuberという虚像の自分ではなく、本当の自分を曝け出す機会を得たのだ。
青二才は迷いなき青二才へと生まれ変わった。いつの時代も怖いもの知らずのエゴイストが常識を覆してきた。その一歩を彼は踏み出したのだ。今はただ前を向いて進み続けるのみ。
後世に名を残すBFカルナバルプレイヤーVAULT が真の意味で生まれた瞬間だった。
颯と梵の関係性に疑問を持たれる方も多かったですが、今話で少しは改善できましたかね…??
颯は自由にスターな人生を生きていく為に、梵は世界の頂点を目指す為に邁進している人達です。お互い自分のしたい事を最優先する節があり、人から理解されない事も多いです。しかし、現実でも彼らの様なカリスマ的人間や世界のトップランナーの多くは自分のしたい事に対して脇見もせずに猪突猛進しているからこそ皆の憧れる地位にいるのかなと考えています。
そんな人間になりたかった。
Q.NitoOやTeLeSは梵が探し求めている仲間なのか?
答えはNo。彼女たちが低ランクというよりは、梵の判断基準が世界基準であるだけです。だからこそ何をしても失望しない。逆に颯には期待していたからこそ、試合中に口調が強くなったのかもしれません。




