Green Youth ⑥
先週の週別ユニークが1000を超えていました!
読者の皆様には本当に感謝しかないです。
次の目標目指して頑張ります。
マンションは崩れ行く。
その被害にあったのは一階に居たニトと蘇生したスサノだけではない。マンションの中間層にある庭園…狙撃スポットに居たシャランガも対応に追われていた。彼の状況は高所であるが故に一階の2人よりも深刻である。
生身の人間が高層ビルから落ちたらどうなるか?もちろん答えは死だ。BFカルナバルプレイヤーの身体能力は現実世界に即する。つまり現実世界で死に至る現象はこの電脳世界でも同じように作用する。シャランガの死へのカウントダウンは着実に0に近づいていく。
「やべぇ…、下の2人が無事だったのは幸いだが俺が厳しいな。」
ニトとスサノの生存はトランシーバーの報告で確認済み…とりあえず物陰に隠れるように言ってある。仲間の心配をしなくていいのは精神的に楽だ…自分の事だけに集中できる。
「ここからの最善の行動は…やっぱアレするしかないか…。乱数も関係するから嫌なんだけどな。」
シャランガの二つ名“精密機械”は彼の正確無比のエイム力を評価されてのことだ。同じ条件で撃てば全て同じ場所に着弾するし、突然の会敵でもスナイパーとしては異常な速さで発砲ができる。つまり、普通にやれば大体は勝てるのだ。それ故に乱数が関わる勝負を極力避ける傾向にあった。
今回の試合でも、橋を渡り4SUの潜伏を勘づいた際も勝負ではなく煙幕による安全策を選んだ。真っ向勝負なら勝てるという自信が乱数に頼らず自身の実力を発揮できる状況を優先するプレイスタイルにさせていた。
勿論、安全策だけでは勝てない。だからこそスサノやヴォルトという異質の存在…乱数が関わる戦闘強者を味方に引き入れたのだが、この話はまた別の機会に…。
自分の方針を変えなければ落下死。彼は乱数に頼らないという方針を大事にしているが、勝利よりも優先する事ではない。他の選択肢がない以上方針は捨てる。
彼は乱数の女神に祈り、マンションから飛び降りた。
土煙が立ち込めるマンションを自由落下していく。マンションの崩壊によって自然発生している土煙は均一にマンションを覆っている訳ではなく、所々隙間が空いている。シャランガの体がその隙間に差し掛かる…彼は自身の足元にマニュアルアーマーを展開した。
◇ ◆ ◇ ◆
世界No1チームのスナイパー“KaIs4R”はあるスペイン雑誌の取材で語る。
「二年前?あぁ確かに僕たちスナイパーは窮地に立たされていたよ。ヘビーガンナーの砲撃で僕たちの居場所は徹底的に狙われた。一時期は僕らの必要性さえ問われ、ヘビーガンナー選択スナイパーなし構成が流行りに流行った。でも、僕らのチームは剣士にこだわる日本の爺さんがいるし、僕も妥協するのは嫌だった。だから必死に研究したよ、砲撃メタ対策を。」
「それで…編み出せたんですか?」
「解決策は意外な所に眠っていたんだ。」
マニュアルアーマー。
任意のタイミングで展開し身を守る道具。アーマーとは名ばかりで展開する盾のような形状である。オートアーマーの様に自動展開で銃弾を防ぐことができないのでオートの下位互換とされていた。だが、KaIs4Rがジャンプしながらマニュアルアーマーを展開した際に彼は気付いた。アーマーが宙に浮いてる!と。そして一つの検証結果に辿り着いた。
マニュアルアーマーは空中に設置できる。
◇ ◆ ◇ ◆
シャランガは足下にマニュアルアーマーを展開した。銃弾から身を守るためではなく空中に足場を作るために。だが、先述したように今回の行動…飛び降りからのアーマー展開には乱数が関わる。本人の体重差によって数字は前後するが、もし土煙の隙間が中々現れず26メートル以上落下していた場合、アーマーは落下するプレーヤーを耐えきれず壊れていた。
現在彼はマンションの12階付近の空中に浮いている。乱数の女神は彼に微笑んだ。
「よし、せめて一人は・・・」
スナイパーライフルを構え索敵していく…5秒後、橋の上を走るBossとスナイパーライフルを構える4SUを発見した。Bossの頭にエイムを合わせ発砲する。
-青山田高校・4SU視点-
彼は崩れ行くマンションを眺めていた。敵がいれば狙い撃つ…彼に今課せられた使命だ。出入口とシャランガが居るはずの中間層を交互に確認していく。
おかしい…。
一向に敵影が見えないし、死んだというアナウンスも流れていない。次第にBossの足音が近づいてくる。
「敵は見えないか?」
「見えないですね。この崩れ具合…まだ中で生存しているとは考え辛いですが…。」
「私は出入り口を監視する。4SUはシャランガの警戒を続けてくれ。もし2分経っても敵が見えない場合は閃光を設置しに行く。」
「了解です…といっても土煙がすごくて中々隙間なんて無・・・・」
4SUは土煙の間に宙に浮く敵影を発見した。素早く銃を構え、発砲。
何の因果か、シャランガの発砲と4SUの発砲は全くの同タイミングだった。2人の弾丸は空中で交差し、それぞれの的へと向かう。
‐仙ヶ谷高校・SharangA視点‐
自分の発砲音に遅れる事0コンマ数秒、敵のスナイパーライフルの音がした。音速のズレを考えればほぼ同時での発砲だろう。BFカルナバルは発砲した者が死ねば発砲済みの銃弾であっても消える。今回の状況であれば、SharangAの弾がBossを撃ち抜く前に4SUの弾が着弾するとSharangAのみがキルされる。
この試合全体の勝敗を分けるかもしれない2発の銃弾は同時に発砲され、Bossとシャランガへと向かっていく。
【SharangA killed Boss】
【4SU killed SharangA】
アナウンスからも分かる通り、2つの銃弾は同時に発砲されたにも関わらず、たった少しの差ではあるが先にシャランガの銃弾がBossに着弾したのだ。
この差はどこで生まれたのか?その答えは重力だ。シャランガは重力に従い上から下へ撃った、4SUは逆だ。この違いが運命を大きく変えた。
重力によって変化する弾速すらも電脳世界に再現しているBFカルナバルのクリエイター人の変態っぷり…いや、凄さが垣間見えるシーンだった。
何はともあれ2人の脱落で情勢は仙ヶ谷高校に傾いた。
-青山田高校・4SU視点-
「畜生!撃ち負けた!」
すぐ横で光の粒子になっていくBossを確認しながら4SUは叫ぶ。有能なアナリストを擁する青山田高校はシャランガがマニュアルアーマーを使い空中にいる可能性も把握していた。だからこそ4SUをシャランガ警戒に充てていたのだが……撃ち負けた。同年代世界一が相手なので仕様がないのだが、突きつけられた敗北に口がゆがむ。
悔しさは後回しだ。味方は自分だけ、敵はおそらく蘇生したであろう剣士を含めて2人。勝てる可能性はまだある。残り2人は遠距離攻撃を持たない剣士に実力が低いであろうガンナーだ。徐々に移動しながら相手をおびき出し、確実に仕留める。
だが、4SUが救難閃光の設置場所に到達しても敵は現れなかった。彼は思案する、設置すればアナウンスによって自分の居場所がバレる、しかもここには遮蔽物がない。しかし、ここまでの間に姿を見せないなら待っていても敵は出てこないだろう。設置のアナウンスで誘い敵を撃つ。
【救難閃光 設置開始。】
設置完了までは20秒、その間に必ず敵は姿を現す。2秒後スサノがX橋の麓から姿を現した。反射的に設置を中断しそうになったが、グッと我慢…剣士は遠距離攻撃を持たない、ここに来るまで15秒は余裕がある。おそらく敵は剣士をデコイにし、アサルトライフルを持つガンナーが本命だろう。ガンナーが現れるまで設置は中断しない。そのまま設置を続けた。ニトが足を失っていることを知らなければ順当な考察だ。
【救難閃光 設置中断。残り10秒で設置可能です。】
スサノが流石に放置できない距離に接近したことで4SUは設置を中断し、距離を取った。未だガンナーは現れない。4SUは目の前の剣士を仕留めることを決断する。接近されているので狙いを定めるまでもない。素早く銃弾を放った。
だが、スサノはその銃弾を避ける。
「は?なんで!?」
外すはずはない距離だ。冷静に心を落ち着かせもう一度放つ。
だが、スサノはその銃弾を再度避ける。
「ぃ意味わかんねぇ!?本当に龍造寺の爺さんじゃねぇか!?」
スナイパーライフルは一度撃てば次まで3秒必要だ。銃弾を避けることができるスサノとは相性が悪い。
【Susano killed 4SU】
「師匠と比べたら私なんてゴミカスよ?」
口ではこう言っているが目標にしている師匠と同一視されて少し嬉しいのか口元は緩んでいる。
「スサノさん!やったわね!!」
ニトはスサノに喜びのままに抱きついた。
「いやぁ、私が負けたらニトちゃんしかいないって考えたら頑張れた。」
「え?それどういう意味~?」
ニトはバックパックから救難閃光を持ち出し、設置した。
10秒後、閃光フラッシュが上空に打ち上げられ、その輝きと共に仙ヶ谷高校のフラッシュラウンド勝利が確定した。
【Flashフラッシュラウンド Winner 仙ヶ谷高校】
【仙ヶ谷高校 生存者2】
【青山田高校 生存者0】
【Bombardeoラウンドに移行します。】
◇ ◇ ◇ ◇
‐青山田高校・モニタールーム(死者の部屋)-
「皆…ごめん。終盤戦は俺の力不足です。」
4SUは頭を下げる。だが、Bossは制止する。
「お前のせいじゃない。俺の判断ミスだよ。完全に白仮面剣士を過小評価していたのが原因だ。後半で逆転すればいい話じゃないか。」
「で、でも。」
「それに私が最後の4SUと白仮面の戦闘をモニタールームで見れた事で収穫があった。」
「収穫?」
Bossはニヤリと口元を緩ませて、勿体ぶるかの様に一言…、
「奴が弾を避ける原理が分かった。」
!?
勝利が確定した瞬間に戦闘中に受けた傷は完治します。初期はそのままでしたが、進行に差し支える為にアップデートされました。勿論アーマーは治りません。




