第八話
おおー、走ってる走ってる。脂肪の塊も走れるもんなんだなー…
バタンッ
キュー
あ、倒れた。
「行け」
3番が慌ててポーションのビンを掴んで駆け寄る。
…ちょっとポーションの消費が激しいな。まぁ適当に作ったやつだからいいけどね。
うーん…勇者たちの伸びが悪い。やっぱり魔剣使うか…
「団長、程々に…」
副官が微妙な顔して言った。何故だ。
ふと、顔をあげて空を視た。また入道雲がいた。
あぁ…めんどくさい。
やっぱ、勇者の訓練に魔剣を導入しよう。うん。勇者たちだって走ってばかりじゃ退屈だろう。
「走りは午前中で終わらせて、午後は魔剣の素振りを500回入れよう。」
「!?」
「あー、初回だから200でいいや」
「…」
3番が信じられないものを見るかのようにこちらを見てきた。失礼な。
「鬼がいる…」
意味は分からないながらも嫌な予感を募らせてつぶやく生徒A。失礼な。
「天使の間違いだろ」
俺は真顔で言った。3~5番が一斉にカクカクと頷く。
副官が信じられないものを見るような顔をして言った。
「魔剣素振り200回!?私たちは800回でほぼ毎日誰かしら追加されているのに!?…とだけ聞くと天使ですけどなれない人にあの魔剣使わせて200回振るわせるのは鬼ですよね!!?アレ、触れただけで全力疲労しますよ!?」
「おいおい、今からゆーしゃを怖がらせんじゃねーよ。カワイソーだろ」
俺はニヤニヤしながら言った。勇者たちが戦慄してる。爆笑。
勇者たちは午後、魔剣で死んだようになった。カワイソーに。勇者たちがヒィヒィ言っている様はなかなか見ものだった。従わないやつは鉄槌を下したし、みんななかなか良い子だ。もちろん、寝るやつにも鉄槌を下す。何故か俺の訓練中に寝るやつが多い。そんなに俺の訓練眠いのかなー、緩すぎたか?
「いえ、限界まで疲労した状態で真夜中まで訓練させられていれば誰でも疲労で強制睡魔に襲われるかと。意識あるだけで奇跡ですね。」
7番よ、何か言ったか?
「…!いいえ!何も!!っ、ギャアアアアアアアアアア!!」
大げさな。お前は俺の鉄槌くらいじゃHP20くらい残ってるだろ。ほら、勇者たちが変な目で見てるじゃないか。
「ま、がんばれ?」
「何故に疑問形!?」
叫ぶ元気があるなら結構。
俺はのんびりと座る。さっさと魔王倒してくれねーかなぁ、勇者たち。
「はーやく強くなぁれ、っと」
「笑顔で鉄槌を振りかざすなあああああああ!」
「え、教官にタメ口とか…ありえないね、空耳だな」
「すみません、ごめんなさい、やm…ギィヤアアアアアアアア!」
「わお、まるで魔物みたいな叫び声。爆笑ー」
「表情筋動いてないしっ」
俺は自分のタメ口を棚に上げて鉄槌を振る。このお手製鉄槌、かなり頑張って衝撃和らげるようにバッドステータスつけたから重く感じる。
ああ、めんどくさ。ことに勇者どもが。
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あァ、こノ世の全テがメんどくサい…
ブクマされると喜ぶ作者。