弐章/英雄/挿話参拾/時を隔てた再会
燿炎達、討伐軍の別働隊は崙土達を倒すと、
後は何事も無く、露衣土城へと辿り着いた。
恐らくは、もう、強力な敵は残っていないのであろう。
露衣土軍の本隊は湘の国で展開し、
討伐軍の本隊と睨み合いを続けている。
そして、先日、司令官の崙土も倒したのだ。
燿炎達、討伐軍はそのまま露衣土城へ突撃して行った。
露衣土城の中へはすんなりと入る事が出来た。
しかし、城の中に入った途端、
残っている城兵達の襲撃を受けた。
それ等、城兵達は他の者達に任せ、
燿炎は一人、露衣土の下へ向かった。
燿炎にとってはかつて知ったる露衣土城である。
懐かしくも感じたが、
今は感慨に耽っているわけにもいかない。
それよりもやけに簡単に進む事が出来る。
露衣土の下へ向かう燿炎を阻む者がいないのだ。
燿炎は感じ取った。
〈これは罠だと〉
〈一騎討ちをする為だと〉
例え罠だとしても、燿炎は戦うしかない。
燿炎達にとっても露衣土と燿炎の
一騎討ちを狙っていたのである。
此処へ来て、露衣土と燿炎達の思惑が一致したのだ。
露衣土にとっても予定通りであり、
燿炎にとっても予定通りなのである。
もう少しで城の屋上へと辿り着く。
屋上の広場の先に露衣土の部屋がある。
そこで炮炎が殺されたのだ。
それも燿炎の目前で殺されたのだ。
燿炎は屋上へと出た。
燿炎が露衣土の部屋の方へ体を向けると、
露衣土が自室の前で待ち構えていた。
燿炎は露衣土の表情がはっきりと判る位置まで近づき、
足を止めて露衣土と向き合った。
本当に久しぶりの対面である。
かつて燿炎は、この露衣土と共に、
精霊の星を統一するべく戦っていたのだ。
それより以前は、炮炎も含め、
幼少時代を共に過ごしてきた幼馴染みでもあった。
そして、燿炎にとって実の兄でもあった炮炎は、
この先にある露衣土の部屋で露衣土に殺されたのだ。
その後に、燿炎は露衣土の下を離れ、
反乱軍に身を投じる事となった。
それから、二人は直接対面する事はなかった。
そして、十数年の時を隔てて二人は今、再び対面している。
今度はお互いがお互いの敵となって、である。




