子供部屋おじさん、新車を購入する
鈴木は教習所へ行き、ペーパードライバー講習を受けた。
教習所のスクールカーに乗り、教官と共に教習所のコースを走り、道路を走った。
5年ぶりの感覚は、思ったほど離れていなかった。
体に染みついた運転の感覚は、そうたやすく失われなかったのだ。
これならば大丈夫だろうと判断し、講習の後、ディーラーへと足を運んだ。
今回は200万ほどのコンパクトカーを購入した。
契約手続きを終えて、家へ到着する頃には夜になっていて、すぐに夕食となる。
車を買うことを告げると、あら良かったねぇ、と母が反応する。
それほど驚かれはしなかった。
夕食を一緒にしていた父が、ふと問いかける。
「今は、探索者でどのくらい稼いでいるんだ? 副業でやっている人は何人か聞いたことがあるが……最初は年収200万、300万ぐらいか?」
「えっと、今は1日10万だ」
「10万か……10万!?」
「ああ……手取りで、そのくらい。まあ、ここから確定申告になるわけだけどね。あと、運良く宝箱にありつければ、臨時収入が得られる」
「おお、配信で見たことがあるなぁ。俺が見た時は、低級のポーションが出たくらいだったが」
「40万の剣が出たことあるよ」
「よ、40万……? 深い所へ潜っているのか?」
「いや、まだ第七階層だよ」
「配信で見かけるような階層ではないな……それなのに、そんなに貰えるのか。ううむ、なるほど、副業で流行るわけだ」
ここまで来れば、もう生活には満足といえば満足だ。
あの若手2人のような、パッションも夢もない。
ただ当たり前生活と……真由美を幸せに出来る男になれれば、それでいいのだ。
(これまでと変わらないといえば変わらないが、マイペースにやっていこう)
「ところで、あんた」
「ん?」
母がにこりと微笑む。
「孫の顔、期待してるわよ」
「ぶっ!? ご、ごほっ、ごほっ、な、なにを」
「ふふふ、真由美ちゃんとのことよぉ。アンタなんかにはもったいないくらい、本当に良い子なんだから、頼むわよ」
母の笑顔は、やや圧を感じた。
鈴木は1人っ子だ。
孫の顔が見れそう、と嬉しさ半分、はよしろという圧半分のようである。新しい家族を作るのはたしかに親孝行だが、こればかりはしっかりと土台を作ってから、勧めるべき話だ。
「しょ、将来のこともあるから、変な圧をかけないでくれ。このご時世、子供1人だって大変なんだから」
「あら、そう? ちゃんと考えてはいるなら、一旦は良しとしましょうかね~」
「勘弁してくれ」
これまでそういうことがなかったので、ちょっと驚きであった。




