子供部屋おじさん、デートする
土曜日。家族で集まって朝食をとっていると、母が上機嫌そうに言った。
「昨日、真由美ちゃんと久々に会ったわよ~」
「え?」
「これからもよろしくお願いしますって言われたわ~。良かったわぁ、まだ付き合ってたのね~」
結婚も視野に入れた付き合いだったので、昔は両親に真由美のことを紹介していた。
どうも再会したのをきっかけに、わざわざ家に来てあいさつしたようだ。
(なんという積極さ……真由美はすごい女性だな……)
しかも今日の土曜日は真由美からデートに誘われている。
そのことを告げると、母親は増々上機嫌になって、楽しみだわぁ、などと言っていた。
女性達が連携した時特有の、プレッシャーを感じた。
恐ろしい。
鈴木は朝から、冷や汗を流した。
☆
「ふ~。映画感動したね~」
「そうだな」
真由美とショッピングモールの中にある映画館から出ながら、そんな話をする。
ドライブデートだ。
車は真由美のもので、運転してくれている。
「ちょっと買い物付き合って~、亮太さん」
「ああ……構わないが」
真由美に手を引かれたりしながら、買い物に付き合ったりもした。
久々に感じる手の温もり。
これではもう恋人同士のようになっている。
(きょ、距離感がやたら近いな……付き合っていた頃のようだ……)
この間の話はなんだったのかと思うのと同時に、嬉しいような、まだ心の準備が出来ていないような、そんな複雑な心境になった。
だけど大切で楽しい瞬間なのには変わりなくて、あっという間に時間は過ぎていく。
そうして夜になり、真由美の運転する車の助手席に座りながら、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「その、探索者という仕事は、良いのか」
「ん?」
「そういう仕事が嫌という人も、いるからな」
もしも今後、結婚などを考えるにあたって、探索者のパートナーというのは、人によっては理解を得られない場合もある。
なにせ命がけの仕事なのだ。
パートナーが毎日モンスターと戦うというのは、精神的に負担がある。
しかし真由美は受け入れていた。
「大丈夫だよ。それに配信見たけど、戦っている亮太さんの姿も好きだよ」
「そ、そうか。ありがとう」
ストレートに好きと言われて、つい、照れてしまう。
真由美の真っ直ぐな思いと言葉は、よく伝わっていた。
そうして、やがて真由美の運転する車は鈴木の実家の近くに辿り着く。
「またね、真由美」
「うん! またね~」
言葉を交わし、車を降りる。
真由美の車が去っていくのを、見送った。
「やっぱり車が欲しいな」
そんなことを思った。




