27/97
サ
春は残酷だ。
暖かくなれば、人は未来の話を始める。
『桜、きれいだね。』
『冬服、もっと着たかったな。』
そんな何気ない言葉さえ、あの日は風に溶けていた。
出会いと別れの季節。
彼女は別れを惜しみながらも、新しい出会いを夢見ていた。
『推しぴ、進学しちゃったし。』
『あたしもそこ行こっかな。』
笑いながら語る未来。
『頭だけは自信あるんよね。』
『生徒会長にも勝ったし。』
根拠なんて、それで十分だった。
若い希望は、少しの自信で大きく育つ。
『○○大学かぁ。』
『行けるかな。』
そのとき、不意に音が鳴った。
彼女は顔を上げる。
『いやぁ、きっと絶対行けるよね。』
『君なら行ける。』
誰かの励ましは、春の風みたいに優しかった。
けれど私は知っている。
人は未来を語ることはできても、そこへ辿り着けるとは限らない。
桜は今年も咲く。
だが、その景色を見られる人間は、毎年少しずつ違うのだ。
違うくらいなら。殺しちゃっていいよね。




