245「本来の力(1)」
「ふっふっふー。それがそうでもないんだな〜」
「ちょっと待て」
タケルの突然の意味深な物言いにマーレが「一言物申す」といわんばかりに反論を示してきた。
「⋯⋯タケル。お前の言いたいことはわかる。たしかに櫻子は元々我らと同じ世界の者だから魔素も吸収するし魔法も使える。だが、奴は現代に来てその力を失った」
「え? 何、櫻子たんと戦ったことあんの?」
「セリナ・サンダース⋯⋯としてだがな。その時模擬戦のようなものをやったが、異世界で聞いていた強さは正直なかった。魔法も使ってなかったしな」
「ほう?」
「おそらく現代に来て『サクラコルン本来の力』を失ったのだろう。だからあのような『のじゃロリ』といわれるような風貌になりはてて⋯⋯」
「ん? ああ、なるほど。そうか。マーレはそういう認識だったんだな」
「ん? 認識も何も現にそうだろう? たしかに力を失ったとはいえ今のサクラコルンも《《それなりに》》強いがそれはあくまで『探索者レベル』においてだ」
「ほ〜ん、なるほど、なるほど〜」
タケルがニヤニヤしながらマーレの言葉に首肯する。
それを見たマーレが訝しんだ顔をする。
「なんだ、その態度は? 何が言いたい?」
マーレが少しキレ気味にタケルに突っかかる。
「ぶっちゃけ⋯⋯⋯⋯櫻子たんは今でも『サクラコルンの力』は失っていない」
「何!? あいつは本来の力を失ったからあのような風貌になったのではないのか!」
「いや違う。それにむしろ《《逆》》だ」
「逆?」
「ああ。櫻子は『サクラコルン本来の力』を《《隠す》》ためにのじゃロリになっているというのが正しい。少なくとも探索者とやり合う時や探索するときはギリギリごまかせる範囲で魔法も使っている」
「なっ?! そ、そんな⋯⋯それじゃあ私とやったときもまさか⋯⋯」
「ああ、魔法なんて使わなかったんだ。手を抜いていたと思うぞ? だって当時お前は『セリナ・サンダース』として戦ってたんだろ? そりゃ隠すだろ?」
「たし⋯⋯かに⋯⋯」
マーレは手を抜かれていたという事実にキレかかっていたが、しかし、それはそれで喜んでもいるようで。
「ふ⋯⋯いいだろう。今度あったらお前より先に櫻子とガチでやりやってやる!」
「おう。がんばれ、がんばれ」
そんなマーレの矛先が自分から櫻子に移ったことに安堵すると同時にけしかけるタケル。ろくでなしである。
「まあ、そんなわけだから今『四つ柱』と戦うとなったらさすがの櫻子たんも力を解放すると思うぞ? それだけの相手だともわかっているみたいだし」
「エルフ族元族長サクラコルンの力⋯⋯か。異世界ではエルフ族族長サクラコルンの魔法の凄まじさは有名だったからな」
「だろ?」
「だが、しかしそれでも私は、そう簡単ではないと思う」
「何?」
そういうと、マーレが一度言葉を切り一呼吸置くと神妙な面持ちで話を始めた。
「⋯⋯私は一度『四つ柱』の中でも最強といわれる『《《ルシフェル》》』と模擬戦のようなものをしたことがある」
「ルシフェル?」
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「四つ柱のルシフェル⋯⋯?」
「ああ。『四つ柱』最強の男といわれている奴だ」
「ふ〜ん、最強ねぇ。で、やってみてどうだったんだ?」
「⋯⋯正直強いとは思う。私と同じかどうかは別としてだが」
「ほう?」
「まずあいつは《《私に合わせて戦っていた》》⋯⋯。私も手加減していたとはいえ、しかしそれができるってことは⋯⋯」
「お前に匹敵する強さを持つかもしれない、てことか」
「認めたくはないがな。しかしただそれ以上にやりにくさを感じた」
「やりにくさ?」
「ああ。実に掴めない奴だったよ。まぁいずれにしてもあいつと戦うとなれば手加減せずに全力でいかないと下手したら足元を掬われかねん⋯⋯そう思わせるだけの奴ではあった」
「⋯⋯『四つ柱のルシフェル』か」
「それにルシフェル以外の3人もなかなかに強いぞ? 直接戦ったことはないから詳細まではわからんが、しかし少なくとも《《世界トップ10ランカー程度》》の探索者じゃ勝てんだろうな」
「いやそうでもないぞ?」
「何?」
勝ち誇ったような言い草のマーレに今度はタケルが「一言物申す」いきおいで反論を示した。
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