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Chapter 4 そういうヤツがいないと、物語がすすまないからね

初手で、ゾンビの強さを見せつけつることに成功したスピカは、ほっと一息つく。


いきなり戦闘巧者であるコール刑事に襲いかかるハメになるとは予想外だった。

キースのおかげで一時的にアンデット化(禁術。人間界追放モノ)しているおかげで、ゾンビ攻撃は成功したが、所詮はただのゾンビだ。

冷静さを取り戻されて、ヘッドショットされたらどうしようかと、スピカはビビっていた。

だが、ゾンビが人間にビビってどうするんや!と、勇気を出してガブリと噛み付いたスピカの気合勝ちである。


スピカがふと我に帰ると、既にホールには、誰もいない。皆、恐れをなして、逃げ出したのだ。


「ふふっ……今頃はあちこちで大パニック……鉄板シチュだわ……」





別荘の正門から橋へと続く道は、逃げようとする人々で大パニックだ。

靴が脱げ、ドレスが破れるのも構わず、皆、一目散に、唯一の脱出ルートである、橋へ向かっていた。

ところが、ここにちょっと機転の利く貴族がいた。

アシ・ヒッパール伯爵である。

彼は、目ざとく、玄関の隅に馬車が一台停まっているのに気が付いた。


「おい、僕を乗せて今すぐ、出発するんだ」アシ伯爵は、御者に声をかける。

「いえ、この馬車は、王家専用でして」御者は言った。

「僕はヒッパール伯爵家の次期当主だぞ?」

「いくら、伯爵様でも……」

「ええい、非常時だ」アシ伯爵は、剣を抜いた。

「!! そんなことをすれば、王家から罰を」

「パパがなんとかしてくれる。なんてったって、伯爵だからな。邪魔だ」


アシ伯爵は、剣を抜いて脅しても、自分を乗せようとしない御者を斬りつけた。

御者は血を吐くと、力尽きた。


「ふんっ、僕に逆らうからだ。僕は悪くない」


アシ伯爵は、御者席に飛び乗ると、馬車を発進させる。


「乗せてくれええええ!!!」

「後で、いくらでも褒賞を出すっ、頼む!頼む!」


馬車でスピードを出して道を進む。ときおり、馬車にしがみつこうとする貴族たちがいるので、アシ伯爵は御者席に置いてあったムチで振り落とす。


「ふん、僕が生き残るのが大事なんだな」アシ伯爵は、フンと鼻で笑う。


馬車では駆け抜け、先頭へと躍り出た。

そのまま、陸地へ続く橋を駆け抜ける。


ガタッ……ガタッ……


「なんだこの音?」


アシ伯爵は周囲を見回す。けれども、見えるのは、湖の暗い水面と橋の路面だけだ。

馬車は、橋の中央部にたどり着いた。


「あと、もう少しで、逃げれるんだな。僕は、おウチへ帰るんだな」


ガタッ……ガタッ……


また、異音が聞こえた。

その時、となりの席に転がっていた御者の死体の指先が動いているような気がした。


「まっ、まさか。気のせいなんだな……」アシ伯爵は、死体を凝視しながら言った。


そして、彼は前方確認のために、一瞬目を離した。その瞬間だ。


「グオオオオオオオ!!!」御者がゾンビとなって、アシ伯爵へ、嚙みつこうとする。

「ひいい!!」


アシ伯爵は、意外にも動けるデブである。情けない声をあげながらも、ちゃっかり剣でガードする。御者の歯は、剣の刃に噛み付くかたちになった。

が、反撃はそこまでだった。

ゾンビの馬鹿力には敵わず、剣は押される。

剣先に寄った位置でゾンビが噛み付いていたため、ゾンビがアシ伯爵に噛みつこうとその顔を近づけるほど、剣の先端が、次第にアシ伯爵の眼球に向かってくる。


「やっ、やめて欲しいんだ!助けて……いくらでも出すから、領地も渡すから!」


剣先がアシ男爵の左目に触れ、次第に押し込まれていく。剣先が、眼球の表面の柔らかい部分を刺し、ペリペリと薄皮を剥ぐように、その傷口を拡大していく。剣先から次第に太くなる剣が、眼球に開いた傷口を拡大し、二人の揉み合いから生じる振動が剣を通じて、ジャムのような眼球の内部を攪拌かくはんする。


「ぐぎゃああああああああああ………」


闇夜にアシ男爵の悲鳴が響きわたった。


そして、お待ちかね。

コントロールを失った馬車は、橋の真ん中で横転する。

荷台には、不思議なことに、油が大量に積まれていた。油は、橋にぶちまけれる。そして、都合よく雷が落ちた。


橋の中央部は燃え上がり、橋は落ちた。

こうして、脱出経路は失われたのだった。




誰もいなくなったホールにひとり、橋の様子を観察している女性がいる。スピカである。

血糊のついたスーツを着たドランが、ティーカップに紅茶を注ぐと、彼女は外の阿鼻叫喚を眺めながら、一気に飲み干した。


唯一の出入り口である橋の爆破に成功したという報告をゴースト君から聞き、スピカはガッツポーズする。


「よっしゃあああ!!!完璧。しかも、襲われる側の自滅型なのも得点高いわよ!」

「これからの展開はどうするつもりだ?」キースは、隠蔽魔法を解いて、スピカの前に現れて言った。

 

彼は禁術の詠唱指導など、パトロンだけでなく演出係としても関わっている


「教えていただいた禁術で、この小島で死んだ者はゾンビになる呪いを発動させました。バッチリですわ。今から、追い込み漁を始めるとしましょう。

コール刑事、出番ですよ!」


むくりと、人影が動いた。


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