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Chapter 1 テンプレ婚約破棄(スタートボタンでスキップ可)

スピカ・パトリシアは、その日、前世を思い出した。


グランツ王国の宰相であるパパが、政争に破れ、即日逮捕のうえ処刑された。中世なので、法律とか関係なし。

父親の失脚は、娘であるスピカの将来が閉ざされることを意味する。

スピカは、ショックのあまり意識を失った。

そして、今、前世の記憶を思い出したのだ。


「これって……悪役令嬢パターンかしら?」スピカは、明かりの消された自室のベッドで呟く。


スピカの婚約者は、グランツ王国の第一王子である。

第一王子は、最近、別の女性にお熱だ。

スピカは、後ろ盾であるパパが処刑され、王子の寵愛を失った。そして謀ったかのように、来月には、王子が出席するパーティーが開かれることになっている。


はい、役満。

パーティーで婚約破棄の流れだ。


「前世の記憶を思い出したから、もう婚約なんてどうでもいいんだけど、幽閉されるのだけは、ゾッとするわね。

悪役令嬢モノは、流行っていましたけど、いざ自分の身に降りかかると……」

 

そして、ため息をつき大きく息を吸い叫んだ。


「ホラー映画の世界が良かったのにいいいいい!!!!!」


スピカは、ホラー映画が大好きなのだ。前世は、アマチュア映画サークルで同人映画を作ったこともある筋金入りである。


 

スピカの叫びは廊下まで聞こえたようで、部屋へ向かってくる足音が聞こえる。 

ノックの後、ドアが開き、部屋の明かりがつけられた。


「お嬢様!お目覚めになられたのですね!」


中年男性がスピカに駆け寄る。ガタイのいい男で、スピカのボディーガード兼執事のドランだ。

前世を思い出す前のスピカは、彼にわがままをよく言っていた。

もしかして、パパという抑止力が死んだ今、これまでの激務の復讐をしにやってきたのでは?

スピカは、内心ビクビクだが、高飛車な口ぶりで内心の動揺を見せないようにする。


「ドラン、他の使用人達はどこに?」スピカは言った。

「旦那様が、処刑されると分かった途端、皆逃げ出しました」

「そう……あなたは逃げなかったのね」

「スピカ様のお世話を旦那様に命じられていますゆえ……」ドランは答えた。


『これが最後のお世話だ!』そう言って、ドランはスピカにナイフを振り下ろす。

なんて、ことはなかった。

ドランは、スピカに付き従うつもりのようだ。持つべきものは、忠臣だね。



屋敷のなかをとりあえず散策する。

スピカは、記憶が混濁している。

普通のサラリーマンだった前世とお嬢様の記憶がごっちゃになっている。そのため、庶民感覚で、異様に天井が高い廊下や、棚に入った高級なワインとかを見つけてビビってしまう。


「お嬢様、幼い頃から過ごした屋敷を去るのは、なごり惜しいかと思いますが、早く、脱出いたしましょう」とスピカの後ろをついてきたドランは言う。


スピカが、観光客気分で豪邸である自宅を散策していたのを、ドランはスピカが悲しんでいると勘違いする。


「脱出するとはどういうことかしら?」

「招待状が届いています来月のパーティーでは、王子は必ず婚約破棄を申し入れてきます。そうなれば、スピカ様は王子の婚約者ではなくなります。その瞬間に失礼ですが、スピカ様の不逮捕特権は失われ、ただの人になってしまいます。あとは、捕縛されるのが目に見えております。

くっ、王子め、憎たらしや……」ドランは唇を噛み締めながら言った。


第三者から見ても、婚約破棄ルート確定。悪役令嬢の鏡だ。


「没落した私が、逃げる先なんてあるのかしら?」

「はい。すでにいくつかルートを確保しております。帝国貴族とのコネを使って……」

「却下よ」スピカは即答した。

「どうしてですか!このままではお嬢様は……」

「帝国は王国の同盟国。魔王との戦いで、共同戦線を張っている両国は揉め事を嫌う。同盟国の失脚した重臣の娘なんて揉め事の種、即刻、王国へ引き渡されるに決まっているじゃない」

「しかし、他に亡命先は……」

「あら?何を勘違いしているのかしら?私は逃げも隠れもしないわよ」


スピカは、本棚に手を伸ばすと、最新版の魔王国年鑑を手に取った。

パラパラと本をめくると、スピカはあるページを開いた。そして、ドランが今まで見たことない、影のある笑みを浮かべる。

ドランは、思わず後ずさった。


「このページの人と、コンタクトをとりましょう」スピカは言った。



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