第十話
「ユウ兄ちゃん……」
「さて、どうするか」
袖を握る妹を見て相手を見据える裕樹。
相手が格上の場合はそれ相応の対応をせねばならないことを理解している彼だからこそだろう。
「みなさん、私が囮になるのでその隙に逃げてください」
彼女の体から熱がでてきていのか蒸気がでてきている。
ぷしゅーという排気音もでてきているようだ。
「なに言ってるんだ!」
「ソうデす! 一緒ニ戦いマショウ!」
秀久が叫ぶと明香も同意してみなもに近寄る。
「………気持ちだけでもありがたいです。 だけど、私はもう……」
目を見開いてから悲しそうに見つめてそう話すみなも。
体がすでに限界であるからこその対応なのだろう。
「そいつの言う通りだ。 そいつはもう動くのすらやっとだ。 こうやって戦うのすら限界だろうぜ?」
事情をしっているのかローブの男はちゃかすように言うと悔しそうに唇を強くかむみなも。
事実だけに否定すらできないのだ。
「明香、どういうことだ!?」
「ソ、それハ………契約者がいなイと私タチにも限界ガでテくルでス。 体のチョーシとか命トカ」
腕をつかまれて揺さぶられる明香は困ったように話す。
「なら、それをなんとかする方法だってあるだろ!?」
「…………あるニハありマす。 契約者を再び作るコトでス」
秀久の言葉に明香はまっすぐ見つめてそう告げた。
「なら、俺と契約すれば!」
「ダメです! すでにあなたはその子と契約をしています! 二つのディエンド(戦闘兵器)と契約は契約者の命を縮めます!」
秀久の発言にみなもは大きな声でそう告げた。
「それくらい別に……」
「別になんの負担もないと思っているでしょうけど、結構な負担になるんですよ!?」
秀久の頬を叩いてみなもはそう言った。
「なら、俺がみなもと契約すれば。 本来の力をだせるということでいいんだな?」
「あ、できたら、わたしも!」
裕樹がそう言うと裕香も手を挙げる。
「それは………もう二度と平穏な暮らしができなくなるかもしれないと同意義ですよ?」
視線を向けて裕樹と裕香を見つめる。
「ここから撤退するためにも必要なことなら、俺は構わないさ」
「いえ、ここでやつを倒すべきです。 こちらの情報を流されでもしたら‥‥厄介です」
裕樹がそういうとみなもは首を横にふり、ローブの男を見るとローブを脱いで雨が突然降りしきる中で、手がたなを舐めて笑っていた。
「そうね。 あいつを倒すことは必須かもしれない」
突然、明香の口調が流暢になっていた。
彼女の髪が手のような形になり、両手も鋭い獲物となっていた。
切れあじはかなりいいと思われるだろう。
「お? なんか、俺にも力があふれているような」
秀久は明香の変化に驚きもしつつ、自分の体の変調にも驚いていた。
ちゅいんと音がして振り向くと拳銃をもった黒服の女性が秀久に向けて照準を向けていた。
「ヒデ!」
とっさに明香がかばいにはいり、銃弾を腹にうけて座り込む。
「………っ、う」
「あ、明香!」
慌てて抱き起す秀久を虚ろな目で見上げて頬に触れる。
「ヒデ、怪我………ない?」
「あ、あぁ、ないけど」
明香の問いに彼はうなずいたそれを聞いて安堵する明香。
そんなことが起きている頃、裕樹たちの方では‥‥。
「うっ、が!ああああああ!」
ぐつぐつと燃え滾る炎の中で先ほどの男はのたうち回っていた。
なぜ、こんなことなっているかというと…。
みなもたちめがけて接近していた男にみなもは裕樹と裕香の手に触れて契約したのだ。
今を切り抜けるにはこれしかないと思ったからだ。
そして、二人の手は刺青が浮かび、みなもには首輪ができる。
「なっ!?」
「マスターには手出しさせない」
そう言ってみなもは片手をかざして炎と溶岩の組み合わさったような熱風が男を包み込んでもえさかっていた。
「おっと、俺もいるぜ?」
その隙をのがさないように裕樹はいつのまにか出てきた刀で縦に切りつける。
それによりさらに炎がまじわり、男は絶叫をあげて溶けてしまった。
それを見た女は逃げようとするが、ふいに秀久に殴られて吹っ飛んで追い打ちに走りこんだ秀久が心臓を槍で貫いていた。
「が、はっ!」
「悪いな、俺は今機嫌が悪いんだ」
秀久の姿はどうみてもみなもや明香と同様の姿をしていた。
それに女は驚きを隠せないまま、意識を永遠に失ってしまう。
土砂降りのような雨が降りしきる中、裕樹は呆然としている秀久に近寄り、ぺしっと叩いて意識を向けさせる。
「ユウ兄ちゃん、警察がくるよ!」
「今のままではちょっと部が悪いので離れましょう」
「そうだな、行くぞ」
「あ、あぁ」
「ヒデ、私なら大丈夫すぐに治るから」
そんな会話をちらほらしてこの場を去ると、死体と消し炭は砂となって消えていった。




