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ハッピーエンド-ご都合主義-




桜の木の下で、手を合わせている女性がいた。



 というか、私だけど。今日は桜くんの命日だから。私が警察に通報したから、桜くんの遺体はもうない。だけど私にとってこの桜は沢山の思い出の象徴。あれから2年経って、私は大学生となった。やはりどこにも変人はいるようで、友達も何人かできて、合コンに何度か引っぱられて行ったことがある訳だけど、無表情女の異名も伊達ではない。最初はにぎやかな合コンのメンバーも、私の能面が常にあるため、だんだんいらいらしてケンカふっかけるか、しゅんと畏縮するかのどちらかだった。

 

 ―私、まだまだ桜くんのことは忘れられそうにない。


 最近やっと気がついた真実だ。別に一生独り身でいるつもりはない。でも、桜くんへの気持ちが思い出に変わるまで、恋はしない…―


 「そら、困るな」

 

 パキッと枝を踏む音と共に後ろからかけられた声。記憶よりすこし低くなってはいるけど、間違いない。この声は、

 「さ、さく…ら…くん……?」

 自分でも恥ずかしくなる位震えた声。

 「ただいま」

 そっと、後ろから華奢な、しかし力強い腕に抱きしめられた私は、

 「お、帰…り…」

 戸惑いながらも、驚愕しながらも、興奮しながらも、心臓が爆発しそうな位嬉しくても、私は彼に告げる。私の愛しい人に。

 ―桜くんがどうして戻ってきたのかというと、長くなるらしいから、一言で言うそうだ。え―とっ


 「なんや女神様に一目ぼれされてしもたからそれを利用して戻ってきた」

  

 だとさ…これは色々な意味でひどいな。向こう―天国―とこっちの時間の流れはちがうらしいから、私にとっての2年は桜くんには2日にしか感じなかったらしい。桜くん曰く、


 「せやかてそうでもせな、利沙は敬語やろ?」


 ということで、実は私より1歳年上だったのが、1歳年下になってしまった。それはそこまで気にしてはいないのだが、桜くんが戻ってきて、その体はどうしたのかどうしても気になって質問したら、


 「ああ、俺の死体は消えとるな。せやかてこの体、蘇生したし」


 普通に心霊現象な真実を教えてくれた。家族とかどうするつもりなのだろうか。でも、とりあえず、私は今、幸せだということだけはわかった―


 ―女神はん、今頃血まなこやろな…―


 ~Fin~

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