いつもの森とダンジョンと
「私たちがいつも練習してた森だけど様子がおかしいの」
秋野は歩きながらそう話していた。
「精霊たちが騒いでいる様に感じる、とても嫌な予感がする。なので一緒に見に行ってほしい」
「お前、精霊と会話できるのか?」
「いや、感じるだけ。見えもしないし声も聞こえない。でも、感じる……私にもよくわからないんだけどね」
「お前がそういうならそうなんだろうな。場所は解るのか?」
秋野さんの周りにいつも浮かんでいる3つの光が今日はせわしなく飛び回っている。確かに何かおかしい。
「なら行ってみよう。ただ、異常がわかったらすぐに戻るぞ、俺達だけでどうにか出来るとは限らないし、お前を危険な目にあわせる訳にはいかない。いいな!」
「わかっている。私もこんな事で死にたくない」
そういいながら森に向かっていく。
近づくにつれて感じる異様な雰囲気。何か空気が重いような感じだ。
「確かにこれは何かありそうな感じだな」
森の中はいつもより暗い気がした。
念の為にニルヴァーナを手に取る。
「どう見ても様子がおかしい、慎重に行くぞ。絶対に離れるなよ」
「わかった」
そう言うと秋野は俺の服の裾を掴んだ。
2人でゆっくりと森の奥に向かう。いつも魔法の練習をしている広場はそれほど遠くないので直ぐに着くはずだ。周囲を警戒しながら静かに進むと、いつもの広場が見えてきた。
「あれは、コボルトか?」
「その奥に見える入り口は何?」
「なんだろう? 昨日まではなかったよな。この異様な雰囲気はあれのせいか」
「多分そう。もしかしたらダンジョンかもしれない、できるときは突然できると聞いた」
「マジかよ! これはさっさと戻って学校に報告だな。早急に対処して貰わないと怪我人が出るぞ」
そんな話をしているとコボルトがこっちを向いた。
「まずい、ばれた!」
「この距離で?」
「あいつら頭が犬っぽいしな鼻も利くんじゃねーか? それより逃げるぞ!」
そういって秋野の手を取って駆けだす。
案の定見つかっていたらしくコボルトが向かってくるのが見えた。
「グゥゥゥ!」
「お前は先に逃げて学校に報告してくれ」
「御剣はどうするの? 一人じゃ危ないよ」
「俺は大丈夫、早くいけこのまま2人で捕まるほうがまずい」
「わかった、すぐ戻るから無理しないで」
「わかってるよ」
秋野が駆けていくのを見送り俺は振り返る。
『フラッシュ』
まずは目潰しの魔法をかけてみる。鼻で追いかけてきていれば無駄な可能性もあったが一瞬怯んでくれた。立て続けに魔法を打ち込む。
『ライトアロー』
光の初級魔法である攻撃魔法をかける。3匹の内、真っ先に飛び込んできたコボルトに命中し絶命させる。
「一発かよ! 意外とこれ強いのか?」
【主様だからだと思いますよ】
「今はおまえも使ってるしな、魔力操作に苦労してたのが嘘みたいに楽に使えてるよ」
【そう言って頂けると私も頑張りがいがありますね】
『ブレス』
自身に強化魔法をかける。慌てて忘れていたが、これ全能力強化なんだよな魔法の威力も上がるなら最初にかけとくべきだったな。
そんな事を考えながら杖を持ち替え剣を抜いた。
ニルヴァーナから抜いた剣は以前と同じ様に輝いていた。鞘は左手からすぐに消え服になった。
「あの時と違って相手は2匹だけど、今なら負ける気がしないな」
【当然です】
ゴブリンと戦った時とは違う。今は少しだが魔法も使える。身体能力もブレスで上げた。魔力も上がっている。油断はできないが負ける気はしなかった。
2匹並んで向かってくる向かって左のほうが少し早い様だ。
目の前に来た所で向かって左のコボルトが右手の爪を振り下ろしてくる。
そこで俺は左足で思いっきり腹を蹴り飛ばしてやった。足はコボルトにクリーンヒットし5メートル程吹っ飛んでいった。もう一匹が入れ替わるように少し右から襲ってくる。そこで俺は蹴り上げた左足を前に出し一歩進むと同時に右手の剣を振り抜いた。何の抵抗もなく振り抜けてしまったのだが、そのまま倒れたコボルトは胴体が真っ二つになっていた。
蹴り飛ばしたコボルトが苦しみながらも立ち上がり向かってくるかと思ったのだが、そのまま俺に背を向けて逃げようとする。ここで逃げられると拙い事になりそうだ。俺は左手で『ライトアロー』をコボルトの背に向けて放った。しっかり命中し最後のコボルトも動かなくなった。
「この状態で魔法使っても杖持ってる時と変わらないんだな」
【いえ、魔力制御は変わらないと思いますが威力は半分くらいになってると思いますよ】
「そうなのか? 全然わからないんだが……」
【それは主様の魔力が強すぎるのと相手が弱すぎるからですよ】
そんな話をしているうちにコボルトは魔石になった。俺は3つの魔石を拾ってポケットに入れると、森の入口の方から大勢の人が向かってくるのが見えた。
「おーい大丈夫か?」
どうやら秋野が応援を連れてきてくれたみたいだな。
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