夏休み
少しずつでも読んでくれている方が増えてきてくれていてうれしい限りです。
「ねぇ、みんな夏休みはどうするの?」
いつものように俺と日下部の部屋に加藤さんを連れてきた遥香がそう切り出した。
大陸とはいえ一応ここは日本であり夏休みも存在する。
「ワシは帰るのもかったるいからの、ここに残って剣技と魔法を磨いてるわい」
「私は一度帰るつもりです。両親も心配しているでしょうから」
日下部は残る。加藤さんは帰郷するらしい。
「誠也はどうするの?」
「俺か? 帰るつもりはないかな、こっちに来てまだ3か月だろ? 大丈夫かもしれないが向こうでまた風邪なんか引いたらたまらないからな」
「あ、もしかして誠也がこっちに来たのって病気にならなくなるからとか?」
「それだけではないが、一因ではあるな。大体なんで俺だけ毎年インフルエンザやら風邪やらにかかるのかと困ってたからな。普通免疫とか出来て罹りにくくなるもんじゃないのかと」
「インフルエンザは型が変わると免疫も効果無いとか言われてるけど……毎年はないよね」
「そういうわけで俺も帰らないつもりだ」
「遥香ちゃんはどうするの?」
「私も残ろうかな、魔法使うの楽しいからね。もっと練習したい」
「お前らしいな。子供の頃魔法少女になりたいとか言ってたもんな」
「バカバカバカ!ここでそれを言うなぁ、子供の頃の事でしょうが」
「はははは、まぁ、こんなとこに来とるんはファンタジー好きのおめでたい奴だけだからな気にする奴はおらへんて、多かれ少なかれみんな魔法使いたくて来とるんやからな」
「そうそう、その辺は私も変わりませんよ。ファンタジー小説が好きでそんな世界があるなら行ってみたいと思って私も来ましたから」
「そうそう、ワイはゲームやけどな! VRもいい感じにはなって来とるけど本物には勝てへんからな、ワイは本物の冒険がしたいんやしな」
「夏休みは学校はほとんどの施設が自由に使える様に解放されるらしいから3人で練習しましょ」
「そうやな、自由練習なら御剣も一緒にできるだろ?」
「ああ、基本的なところしか合わせられないかもしれないがな」
光魔法使いは精霊魔法が使えない、逆もまた然り。でも基本は同じはずだ、お互い指摘できるところもあるかもしれない。
「こっちの海は入れないのがつらいよね」
「夏限定で校庭にでかいプール出来てたろ? あれじゃダメなのか?」
「気分よ、気分」
「そんなもんかいなぁ」
そんな話をしながら夏の予定が決まっていく。
俺は3人に話を合わせながら、そういえば秋野はどうするんだろう?と少し気になった。帰郷しないなら誘ってみるかと考えていた。
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夏休みが始まった。
加藤さんは早速荷物を纏めて帰省していった。
残った俺達は図書館で魔法の資料をかき集めたりプールに行ったり、街に買い物に出たりしながら、毎日欠かさず魔力コントロールの訓練を行う。特に俺は未だに増え続けている魔力によって苦労していた。
「誠也ってすごい魔法の威力みたいだけど、あんまりコントロールできてないよね」
「せやな、見た感じ力ずくで押さえつけとる様に見えるの」
「うるせーよ、これでも必死にやってるんだよ。魔力そのものが全然安定しないんだ、仕方ないだろうが」
「私もまだまだ安定はしてないけど、このくらいは出来るよ」
そういって遥香は指の先に小さな水玉を作ると口の中に放り込んだ。
「魔法の水って全然味が無いんだけどね」
それはそうだろう、魔法で水を作るだけならそれはおそらく超純水になる。ミネラルなんかを入れないと味はしないはずだ。
「1年の1学期はまだ魔力が安定しない為に、魔力コントロールが中心で危険な魔法は使わせてくれないから手で使っているけど、2学期からは杖を使ってもよくなるみたい。杖を使える様になれば少しはましになるかもね」
遥香はそんな事を言っている。とはいえニルヴァーナは使えないよな……
「杖か、魔法の威力アップや魔力の制御力向上の効果があるらしいな。集中しやすくなるとか聞いたがどうなんだろうな」
そんな話をしていると
「はぁはぁ、やっと見つけた」
秋野さんが走ってきた。
「どうしたんだ? エアリーボード無くしたのか?」
普通なら秋野も光魔法使いなのでエアリーボードを使えば走る必要などないはずである。
「御剣にちょっと話があるの、ついて来て」
そういうと秋野さんは俺の手を取りつかつかと森のほうに歩いていく。
「すまん2人とも、気にせず練習続けてくれ」
「何やってるの、あいつ!」
遥香がメチャクチャ怒っていて怖い。
どう見ても俺のせいじゃないだろうが……
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