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先生と雀

 俺がしでかした大爆発は全く被害がなかったとはいえ大事件になり、その後ビッグバン事件として語られる事になった。

 俺はというとこの失敗を繰り返さないように翌日から放課後一人で練習を繰り返すようになった。幸い俺にはニルヴァーナという心強い先生がいる。


 「なぁニルヴァーナ、あの大爆発は何で起こったのかわかるか?」

 【あれは小さくするイメージが魔力の圧縮として顕現され、目を開けた際にその集中が解けたせいで魔力の制御が外れてしまい爆散したのだと思いますよ】

 「そうか、なら練習して慣れれば大丈夫なんだな?」

 【そうですね、尤も一度経験し原因が解っているので、主様なら二度と起こさないでしょう】

 「だといいがな」

 【心配なら私が制御のお手伝いをしますが?】

 「いや、今はいい、俺自身の能力を上げていかないとこの先困るだろ?」

 【そうですね、ただし危険と判断した場合は手を出しますよ、杖ですが】

 「ああ、その時はよろしく頼む」


 そのまま目を瞑り魔力の制御に没頭する。

 あの後、葵さんからは


 「魔力の放出は絞り出すようにゆっくりと。出てきたものを抑え込むのではなく留め置くイメージでやると良い」


 と聞いた。

 なので、俺はそれを実践する。

 焦らずゆっくりと、絞り出すようにそーっと掌の上で留めるイメージで操作する。

 ゆっくり目を開けると掌の上に小さな光が灯っていた。

 熱くもなく冷たくもなく。ただ光だけがある。そんな不思議な感じだった。

 なんとなく、そのまま上下にゆっくりと動かしてみる。

 そう思っただけで光はゆっくりと上下に動き出した。


 【さすがは主様、お上手です】

 「お前に言われると嫌味に聞こえるな」

 【何故ですか? そんなつもりは全くないですよ。私は純粋に……】

 「冗談だよ。ありがとう、俺もうまくいってちょっとうれしい。だが、俺は魔力が多いのだろう?本格的な魔法を練習する前にもっと完璧にしておかないととんでもない事になりそうだからな。お世辞は抜きで本気で指導してくれ。本物の大爆発とか洒落にならないからな」

 【承知いたしました。主様】


 そうして1週間が過ぎた……


----------


 「もうそろそろ魔力コントロールも出来るようになって来たと思う。本日からは魔法の練習も行ってもらう。だが、何事も基礎は大切だ、魔力コントロールが上達すれば魔法の威力も上がるし魔力消費も抑えられより多くの魔法が使える様になる。今後も練習は忘れないように」


 葵さんは話を続ける。


 「魔法には生活魔法、基礎魔法、初級魔法、中級魔法、上級魔法、超級魔法と便宜上6段階に分けられている。だが、お前たちは生活魔法が使えない。なぜなら光魔法には生活魔法がないからだ。なのでいきなり基礎魔法を覚えてもらう事になる。光の基礎魔法で有名なのは『ヒール』と『ブレス』だ。名前だけで効果は解ると思うが、『ヒール』は治癒。『ブレス』は祝福を与えパーティーメンバーを強化する魔法だ。どちらも基礎とはいえ精霊魔法を遥かに凌ぐ効果がある。『ヒール』は怪我や火傷、骨折であろうと使い手によっては一瞬で治せる。人々に最も感謝される魔法だな。『ブレス』は身体能力から精神力、魔力までを底上げする。戦場では重要な魔法だ。お前たちの中には冒険者にならない者もいるかもしれないが、わざわざここまで来てるんだ殆どが冒険者志望だろう? ならこの2つは基礎とはいえ最もよく使う魔法になるはずだ! 徹底的に鍛えておく事を推奨する。ではまず私が見本を見せる。全員よく見て覚えろ。必要なのはイメージ力だ、発動から効果、更に収束までしっかりと見ておくように」


 そういうと葵さんは生徒一人一人に目の前で指の先を少し切らせそれを治療して回った。自らが治療してもらう事でよりイメージしやすくする為らしいが、確かに傍から見ているだけとは違い自分がかけてもらう事で見た目だけでなく魔法の温かさや重さ、におい、空気感等、尋常でない感覚が得られ圧倒的にイメージしやすくなった。やがて全員にかけ終わった葵さんが言う。


 「全員覚えたな? では練習開始!」


 練習相手などいない。中には2人もしくは数人でグループを作る者もいたようだが俺は自分の指の先を傷つけ治療してみる事にした。すぐ治療するとはいえ人を気付つける気にはなれなかったからだ。


 左手の先を少し切り右手をかざす。そのまま目を瞑り魔力を集中させていく。右手に集中させ手の平に魔力を少しづつ絞り出す。そのまま目を開け右手を傷口にかざし魔法をイメージする。うっすらと右手が輝き始め傷口が綺麗に無くなっていった。


 「『ヒール』ってすごいな」


 思わず口に出てしまう。


 【主様ならすぐに他の魔法も使える様になりますよ】


 「そうかな、ニルヴァーナが言うと期待してしまうな」


 【期待しててください。微力ながら私もお手伝いいたしますので】


 「ああ、期待しているよ」


 「誰と話しているの?」


 「え!」


 驚いて振り返ると一人の女の子が後ろに立っていた。


 彼女は確か『秋野 雀』だったか。ここにいるという事は同い年だと思うのだが、とてもそうは思えない小さな女の子だ。ぶっちゃけ小学生にしか見えないのである意味目立っていた。


 「びっくりするじゃねーか」


 「ごめんなさい、誰かと話してるようだから何かいるのかと思った」


 「いるわけないだろ、それともお前には何か見えるのか?」


 「今は何も見えない」


 「今じゃなきゃ見える様な言い方だな」


 「そんな事はない、もう行く」


 逃げていった……あれは何か見た事あるんじゃないか? とは思ったが俺も一度しか精霊見てないし他にもいるのか解らないしな。気にはなるが下手に探ると墓穴を掘るんじゃないかと思う、しばらく様子見だな。しかし、どこまで聞かれたのか? ニルヴァーナとの会話が無意識に声に出てたのはまずったな。気をつけよう。

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