[エピソード4-1]いわゆる自己の危機ってやつ
大学へ入ると嫌でも分かる、高校とは違う雰囲気。
髪を茶色に染め、ゆるふわウェーブをかけ、花柄のスカートと透け感ブラウスを着て歩くフローラルなおなごたち。
ナチュラルな仕上がりのファンデでカバーした顔面にチークをのせ、ブラウン系アイシャドウとマスカラで校内を闊歩する女子大生たち。
そしてそれらを高く評価し、己の性欲の捌け口にするために近づいていく男子大生たち。
ナメていました、世の中を。キャンパスライフを。
私は「大学は、1人1人が将来のために経験を積んだり、勉強をしたりする場所。互いに切磋琢磨して、高め合っていける場所。小中高とは違って、見た目のみで人を判断するような人や、集団を形成して特定の人物の悪口を言い合うような人はいない場所。」
と思っていました。
全然違った。
カルチャーショックでした。
何が起きている?というレベルのショック。
大学ってきっとスバラシイところ!脳内おはなばたけ!だった私は、夢のキャンパスライフにて以下のような人たちと対面することになります。
自分勝手に異性と交際して酒で暴れて人々に迷惑かける経験を「遊ぶ」と称して、「大学生のうちに遊んでおかない奴はダメ」と言っている人
学生たちのために工夫した授業を用意してくる先生たちを、「授業が難しい」「課題が多い」「単位を楽にとれない」という理由だけで批判する人
やたらと評価を気にして授業をとりまくり、本で読んだ内容をそのまま他人に言い聞かせて、自分が意識高い学生であると過信している人
自分と異なる価値観の相手とコミュニケーションがとれないゆえに、似たもの同士で集団を形成して“異質”なものを半無意識的に追い出す人
「酒の失敗」が「大人」になるための切符だと勘違いしている人
「オシャレをしていない人」や「自分たちのノリに合わせない人」を「インキャ」と称して見下す人
えとせとら、えとせとら。
進学する大学をまちがえたかもしれない。
もはや「ジェンダー」云々の悩みどころではありません。
授業の企画モノのために話合いをしている際、問題が残っている点をどうするかと発言したら、「あなたが余計な発言をしたせいで、丸く収まりそうだった案がまとまらなくなったねw」と言われたこともありました。
それまで正しいと思っていたことが何も通用せず、マジメに授業を受ければ受けるほど批判されまくるので、自己を喪失して引きこもりました。
ちゃんちゃん。
大学時代は、「もうどうしたってうまく大学に馴染めない自分が嫌だ!死にたい~!」という強烈な気持ちが新たに芽生えてしまっていたため、「男になりたい」という気持ちを「はいはい、構ってちゃん乙」と自分で否定してしまっていました。
同時に、「どうせ男にはなれない」「たとえ手術で姿形が変わっても、生殖機能は持てないし、今まで女として生きてきたから男社会を知らない。なにより、自分は女だったという意識をずっと持って生きることになる。だから男にはなれない」という諦めも大きくなっていました。
大学という「社会の縮図」に直に触れたことによって、あらゆる面で現実が見えてきたとも言えますね。
しかしまあ、それでも懲りずに半年に1回は乳房切除の手術にかかる費用をググっていましたけど……
大学に入って一発目の関門はこの「チャラチャラ大学生マジわけわからんショック」でしたが、無慈悲にも程なくして二発目の関門がやってきます。