第3話 トルチャンチっていいね!
ペギルと呼ばれるお祝いは、生まれて100日目のお祝いだった。
この度のお祝いは、トルチャンチと呼ばれる、生まれて二年目の誕生日に行うイベントなのだ。
つまり、満一才の誕生日に行う誕生日パーティのことである。
家族と親戚で行うお祝いで、トルサンというお祝いの膳を囲んで、どんちゃん騒ぎをする。
トルサンと呼ばれるお祝いの膳は、御餅や果物を中心にした料理が主で、果物は大皿に持って上座の台に飾ることが多い。
この日も私が主役で、お祝いを開いたのだ。
主役の私は、チマチョゴリと呼ばれる衣装に身を包み、唐衣という礼服を上から着て、額の所に飾りがついた帽子、チョバウィをかぶる。
この格好はトルボッと呼ばれ、トルチャンチの時にだけ着る、民族衣装である。
今までは赤ん坊のおくるみだとか、肌着ばかり着ていた......着せられていた......ので、可愛い色合いの飾りがついた服を着られて、本当嬉しい。
ニコニコと私を見て笑う家族や、親戚の姿に、自然とテンションも上がるのだ。
このときには、少しは食べられるようにはなっていたので、食べられそうだと、お母さんが判断したものを少しずつ口にして、トルチャンチを楽しんだ。
「そろそろ、あれをやってみるか?」
「そうね、あんまり後にすると、スンミ寝ちゃうかもしれないから」
ギギョムは妻のナンヒャンに抱かれて、果物を食べているスンミを見た。
美味しそうに食べる姿に目尻が下がり、トルチャンチのメインイベントの、トルジャビを行おうとナンヒャンに問いかけた。
トルジャビとは、赤ん坊の目の前に色々なものを置き、何を掴むかで将来を祝う占いのイベントだ。
糸、筆、お金、刃が無い包丁、などなど。それぞれには意味があり、糸は長寿、筆は学者など頭が良くなることを示す。そしてお金は金持ちを、包丁は料理が上手になることを示す。
各家庭やそれぞれの地域にもよるのだろうが、目の前にたくさんの物を置いて、何を取るのか、どれにしようか迷う子供の姿を見て騒ぐ、とても楽しいイベントなのだ。
ギギョムは執事に目で合図すると、目の前の膳を避けさせ、様々な物をスンミの前に並べ始めた。
糸、筆、お金、包丁、本、美しい唐衣、果物。
どんちゃん騒ぎをしていた家族や親戚の者も、トルジャビが始まる為、少し静かになり、お酒を飲みながら、やいのやいのと話ながら、スンミが何を掴むかを予想し始めた。
「おうおう! スンミは、何を掴むかなぁ」
「アンタ! 飲み過ぎなんだよ、少しは控えな!」
「私の時は弓だったが、スンミは何を掴むかな、兄上」
「うーん、私は筆を掴んだのだが、女の子だしな、」
スンミはナンヒャンの膝の上から下ろされた。
どれにしようかなぁ。どれも掴んでみたいのよね笑
手が小さいから、そんなに持てないからなぁ。
スンミは目の前の物を見て、考え込んだ。
最終的に掴んでいたものが、占いの結果とのことで、スンミは悩みながらも、色々と物色し始めた。
その姿に一喜一憂する声をもろともせず、スンミは悩んだ末に3つの物を手に取った。
包丁、果物、美しい唐衣。
果物は将来食べ物に困らないことを示し、そして唐衣は、もしかしたら、王の女になることを示す。
この結果には酒も入っていたからか、大いに盛り上がり、後々スンミが大きくなってからも、からかわれる一つのネタになった。
大抵は一つを掴んで終わりなのに、3つも掴むなんて! とのことらしい。
この日は夜遅くまで笑い声が絶えることはなく、いつまでも楽しい宴が続いた。
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トルジャビの、果物、美しい唐衣、について
勝手に考えて付け加えた内容なので、実際とは食い違っているかもしれません