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第二十五話



「それで話とは何かね?」


 俺はヘスを部屋に招き入れた。


「……率直に言えば、イギリスと和平交渉へ出向きたいのです」

「……それはヘスがするのか?」

「ヤー。今、和平交渉をすればイギリスも名誉ある引き分けを選ぶでしょう」

「……確信はあるのか? 俺としてはイギリスは名誉ある勝利を選ぶぞ?」

「ルフトヴァッフェが軍需工場を爆撃して生産ラインを傷つけています。イギリスも負けるより引き分けを選ぶ可能性もあります」


 ……恐らく無理だろうが、ヘスは何としてでも行きたいだろうな。


「……分かった。ヘス、君を和平交渉の代表としてロンドンに向かいたまえ。ただし、パイロットと君だけが行くのだ。何せ極秘だからな、味方にも知られたらえらい事になる」

「確かにその通りですね」

「……最悪、捕虜になるかもしれんぞ? それでも構わないのか?」

「構いません。全てはマインフューラーのためです」


 ヘスはそう言い切ったのであった。


「……分かった。頼んだぞ」

「ハイルッ!!」


 ヘスは敬礼をして部屋を退室した。それから三日後、ヘスは密かに飛行機でイギリスへと向かった。

 しかし……。


「た、大変です総統ッ!?」

「どうしたボルマン?」

「ヘス副総統がイギリスで捕虜になったという情報が入ってきましたッ!!」

「……やはり無理だったか……」

「……その様子ですと、総統は知っていたようですな?」

「済まないなボルマン。ヘスが意気込んできたからな。交渉が成立するならそれで良しと考えていたが……」

「最早和平の道は断たれたわけですな」

「うむ、イギリス空軍が根を上げるのも時間の問題だ。我々は都市爆撃をせずにひたすら軍需施設を爆撃すればいい。レーダーの海軍もUボート部隊が大活躍しているようだしな」


 都市爆撃をしてもイギリスには無意味だしな。軍需施設を爆撃して首を締めたらいい。



――イギリス、バッキンガム宮殿――


「……では我がRAFはほぼ壊滅状態だと言うのかね?」

「は、その通りであります陛下」


 チャーチルはバッキンガム宮殿でジョージ六世にそう報告をしていた。

 イギリス空軍(RAF)はドイツ空軍ルフトヴァッフェの度重なる爆撃と空戦で数を減らしていた。

 更に開戦当初からルフトヴァッフェは一貫して軍需施設や航空基地、レーダー基地を爆撃していたため、スピットファイヤーやハリケーン戦闘機の生産が追いつかなくなり爆撃で生産ラインが破壊されたりと空軍に補充する機体が無くなっていたのだ。

 結果、RAFの残存戦闘機は百五十機を切っており数回の空戦で無くなると予想されていた。


「……チャーチル、脱出の準備をするのだ」

「陛下、それは……」


 ジョージ六世の言葉にチャーチルは唖然とした。脱出とはまさか……。


「カナダが良かろう。カナダで亡命政府を樹立してヒトラーの野望を撃ち倒すしかあるまい。無論、余も参ろう」

「そ、それでは我がイギリスは……」

「チャーチル、貴様は退陣してチェンバレンかハリファックスにでも後を譲ればいい」

「……分かりました。退陣しましょう」


 そして九月二八日、チャーチルは首相を退陣して前首相だったチェンバレンが再び首相となった。

 そしてドイツに対して停戦交渉を発表したのである。


「やりました総統ッ!! チャーチルが退陣しましたッ!!」

「うむ、取りあえずは一段落だがチャーチルの動向を気にしろ」

「なにかしらあるので?」

「あの葉巻中毒の事だ。ただ退くだけではないはずだ。最悪の場合、カナダに亡命して亡命政府を樹立するかもしれんぞ」

「そんなまさか……」

「俺の勘違いであればいい。だが、万が一もある」

「分かりました。チャーチルの動向を監視しましょう」


 ヒムラーはそう言った。確かに杞憂であればいいが……。

 そして停戦交渉が始まり、両軍は戦闘を停止した。

 しかし、その間にチャーチルとその主要な要人、ジョージ六世以下王室関係者を乗せた潜水艦はイギリスを脱出してカナダへと向かっていたのであった。


「……予想が当たってしまったな……」


 停戦会見場でジョージ六世に会談したいとチェンバレンに言ったらまさかのイギリス脱出とはな……。

 やはりイギリスは中々食えんな。今さら追いかけても無理だろうな。

 カナダ方面に行けば米海軍が出てくるし、アメリカとの開戦は避けたい。


「イギリスがそういう立場を取るなら此方も用意しよう。ボルマン、カナリスを呼べ」

「ヤー」


 そして十五分後に国防軍情報部部長のカナリスが入室してきた。


「私に何でしょうか総統?」

「カナリス、今すぐある人とコンタクトを取れ」

「ある人とは?」

「……この人だ」


 俺は写真をカナリスに見せた。


「ッ!? まさか……」

「そうだ。ジョージ六世と対等の人だ」


 俺はニヤリと笑った。

 そして十月十五日、独英は停戦を決定しイギリスは海上封鎖や爆撃される心配が無くなるのであった。

 しかし、それはイギリスが我がナチス・ドイツの軍門に降る事になるのだ。

 イギリスは停戦としての対価としてドイツに艦艇を譲渡する事になったのだが、イギリス側は密かに海軍の脱出を指示しており結果的に譲渡されたのは巡洋戦艦レパルスと建造中のフォーミダブル、ヴィクトリアス、インドミタブルの大型艦四隻である。

 キングジョージ五世級はイギリス側が残してほしいと言うので脱出したキングジョージ五世以外はイギリス海軍の物となった。

 俺としては正直に言えば旧式戦艦やキングジョージ五世級はいらなかったからどうでも良かったがイギリス本国から脱出したのが気に食わなかったけどな。

 まぁ停戦してたから戦闘は禁止にしてたからな。こういうところは腹黒紳士は上手いな。

 まぁ巡洋戦艦のレパルスや空母を接収出来ただけでも御の字かもしれんな。


「レーダー、脱出した本国艦隊やH部隊は何処に逃げたと思うかね?」


 俺はレーダーに訊ねた。


「恐らくはエジプトのアレキサンドリアでしょう。此処には地中海艦隊がいます」


 レーダーは世界地図のアレキサンドリアにトントンと指を鳴らす。


「ふむ、俺も一時的に駐留するだろうと考えているが最終的には此処だろうな」


 俺はセイロン島に指を指した。


「……でしょうね。インドは是が非でも死守したい場所ですからね」

「うむ、だが今すぐに攻めこむ話ではないがな」


 となると次は……。


「……エジプトだな」




御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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