殺戮と滅亡 47~マタとの冒険ごっこ
「ファル様。これは急がねば到底追いつけない。」
『オランダは何か地図の様な物を持っているのか、あるいは方向を示す物。』
「わかりませんがぁ、、ジョラの村、、いやカザマンス王国にはどれくらいの者達を残して来ているのですか?」
サバが聞いた。
『女子供と年寄だけ。ざっと150人ほど。』
「それでは如何んせん、このオランダに見つかりでもしたら、一網打尽のイチコロではないですか!」
『兄上が知っているジョラの村ではないよ。その奥。フランス軍の侵略を恐れて、その先の山奥に越した。』
「今、そこを守っている者はおられるのですか?」
『今は、オレと同じ歳のニジェというものが、、』
アランが突然、話に割った。
「ファル様。これではないでしょうか?」
その軍服の胸ポケットに手を入れてガサゴソと何か取り出した。
『なんだそれは?』
「方位を測る物であります。」
『見せてくれ。』
ファルが手に取ると、薄い鋳物の円柱。ガラス張りの中の針がグルグルと揺れ動いていた。
『これをどう使うのだ?』
「ん~、この密林では使えない代物ですな。磁力が滅茶苦茶。廻っちゃってます。」
『廻ってはいかんのか?』
「はい。この針が東西南北を示すのですが、これでは方角はわからない。」
アランはファルに渡した方位磁針をそう判断した。
話の腰を折られたサバであったが、サバもまたそれを手に取った。
「見た事がある。父上バル王も持っていた。」
「ほう、バル王様が。どこかヨーロッパの国からの貢物だったんでしょうか?」
「たぶん。」
「お使いになった事は?」
「方角がわかるというのも父上のバルから聞いておってな。子供の頃よく宮殿の裏山。俺達がさっきまで逃げ込んでいた山だ。その林の中に持って行っては、冒険ごっこをしていた。マタという第6夫人の子がおってな。そいつが頭良くてさ、それを見ながらスイスイと林の中を擦り抜けて行きおった。」
『、、、マタ?マタ。第6夫人?』
「ん?」
『兄上!!そのマタと言うのがニジェの事ですよ!!』
「えっ!生きておったのか!マタッ!」
『そのマタが今カザマンスの国を守っております。今は、ニジェと名を変えております。』
「まさか、、会いたい。」
『そのためにもこのオランダ軍をなんとかせねば。』
「ガーラの奴、そんな事一言も俺に言わなかった。」
『サバ王子に会えて、全てぶっ飛んでいたのですよ。きっと。』
「急ぎましょう!」
『急ごう!!』