表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
257/345

殺戮と滅亡 27~うつ伏せのオランダ兵・仰向けのフランス兵

 『何が起きたというのだ。』

ファルは驚きの声を朴訥ぼくとつに変えて言った。


 宮殿から見下ろした眼下。

崩れ去った石の城壁。なぎ倒された木々。紅色にまみれた泥。

至る所、軍服姿のフランス兵とオランダ兵がドミノ倒しさながら、仰向け、うつ伏せと泥や側溝に浸かっていた。

そのほとんどが、数で圧倒していたオランダ兵であった。


 「なぜ、オランダ兵まで? オランダ軍はおるだけでも勝てたのではないか?この遺体の群れ、ジルベールが言っておった通り1万はいる。」

ガーラがひとり言のように、淡々としゃべった。


目に焼き付けたくない光景であった。

 『変わっていないのは空の色だけだ。』



「ファル様。わたし、下に降りてみます!」


 『ハラ!ちょっと待て!』

「えっ?」


 『どうもおかしい。皆武器を持っておったはず。撃ち合いになったとしても、こうも見事に互いに倒れるものか?』

「というと?」


 『これはもしかすると。』

「ファル様、何かお分かりに?」


 『この凄まじかった豪雨。オレ達がカザマンスの川の水路に残して来たいかだ。』

「あっ!もしや水門を突破して?!」


 『このマンディンカ一帯に流れ込んだのではないか?』


ファルがそう言うと、ガーラが腕を組み直して言った。

 「大いに有りうる。触れただけでも死を招く猛毒アコカンテラ。有りうる。」


 「あっぶねー!」

ハラは下りかけた物見の通路の階段を、後ろ向きのまま、また上がった。


 『そうだ!!気をつけねばならぬのはここではない!マンサ達75がおる畔だ!地底湖の!流れて来るかもしれぬ!早く報せてハラ軍の方に移動させろ!さすれば流れは地底湖で止まるはず!急げ!』


 ハラとアランはバタバタとアクラの部屋に戻り、開いたままの床からマンサに声を掛けた。


「マンサ様~!マンサ様~!お急ぎください~!毒が!毒が漏れ出してくるかもしれません!カザマンス川の方からです!急ぎ、わたしの軍の方へお移りくださ~い!!早く!泳いで!泳いで!」


 「何を言っておる?ハラ。もうとっくにンバイ様とマリマ様と会っておるよ。」

「えっ?」



ハラとアランはその場にガクと腰を下ろした。

 ふ~。


 「ところで、ハラ~!そんなに大きな声を出して大丈夫なのかい? フランス軍は?オランダ軍は?誰も生きてはおらぬのであろう?」


「えっ、マンサ様!なぜお分かりに?」

 「この戦闘で、物音が全くしないとはそういう事だ。」

「はあ、まあ、、」


「だから、急いでな。 ハラ!お前の方の部隊に移動したんだよ!」

 「どういう事?」


「このジルベールのおっさんの言う、オランダ軍1万が本当なら、、それが静まり返ったなら」

 「なら?」


「毒しかないであろう? 私達が持って来た大量のアコカンテラしか!」



 「マンサ様。誰よりも頭脳明晰。」



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ