試練の終わり、そして
「わっ」
突然、周囲が白い光に包まれる。その光がどこから来たのかわからない。そのまぶしさに、ラディとレリーナは目を閉じた。
初めてカロックへ来る直前も、地図が光ったことを思い出す。それと同じなら、次に目を開けた時は問答無用で自分の世界へ帰されているのだろうか。
一瞬、不安に思ったが、目を開けても二人はカロックにいた。さっきまでいた草原だ。変わっていることと言えば……ジェイがいない。
「あ、あれ? ジェイ? どこに行ったんだ?」
まさかさっきの光で飛ばされた訳ではないだろう。あんなに小さくても、竜である。
「ジェイ、どこなの?」
レリーナもきょろきょろと周囲を見回し、ジェイの姿を捜す。
「ラディ、レリーナ」
リーオンに呼ばれ、二人はそちらを見る。
「上だ」
言われて二人は空を見上げる。途端に二人の目が丸くなった。
ロネールの講堂の屋根よりも高いであろう位置。そこに巨大な何かがあった。いや、いた。
ただ、ほぼ透明に近いのでよくわからない。それでも、視界に入りきらない何かが浮かんでいるのだけはわかる。光の加減でわずかに影ができ、かろうじて存在が認識できる、という程度だ。
「まさか……あれがジェイ?」
「ああ。大竜の姿に戻ったジェイだ」
「で、でも……大きいってだけで、どこが顔なのかもよくわからないわ」
巨大な何かは流れるようにして動いているようなのだが、その先端がわからない。
「遠くからの方が、全体像がよく見えるだろうな。真上にいるから、近すぎて身体のどの部分を見ているか、私にもわからない。ジェイ、ちゃんと顔を見せてやれ」
「えー、さっきからここにいるだろ」
どんな声がするかと思いきや、さっきまでの小さい竜と同じ声が聞こえた。その声に、ラディとレリーナはずっこけそうになる。
「はは……本当に大竜だな。ジェイ、大きすぎるよ。俺が想像していた以上だ。そっか、これだけ大きくなるから、最後はこういった広い草原で終わりになるんだな」
「うん、まぁ、そんなとこだ」
目で追って行けば、いつかその身体の端に、つまり頭かシッポ部分がわかるのだろうが、どう見ていけばいいのか。しかも、ほぼ透明だからなおさら。どこを見ても、ジェイの顔がわからない。たぶん、ジェイは見せているつもりなのだろうが……。
「以前、ラディのケガを治すのにジェイの本当の手っていうのを見たけど……本当にあれでも小さい方だったのね」
ラディの頭を簡単に隠せてしまう程に大きな手を、ジェイは一度だけ出したことがある。レリーナはそれを見ていて、あの時も大きな手だと思った。
でも、今はそれ以上。はっきり言ってあの時とは比べものにならない。
レリーナがその手を見た時、天翔王のセルディスが自分の身体をつまみ上げられる、と話していた。人間三人が乗っても余裕な程に大きな身体のセルディスだったが、その彼をつまみ上げるなんてどれだけの大きさなんだろうとレリーナは想像するのが難しかった。
今なら、確かにこれまで協力してくれたどの魔獣でもつまみ上げられそうに思える。翼を広げた時のロック鳥だってひよこ以下に見えるだろう。
もっとも、今のジェイの手がどこにあるかはよく見えなかった。身体が大きいから、それに見合って手も大きいはずだ、と思うばかりだ。
「ラディ、レリーナ。ありがとな。二人のおかげで、試練は終了だ。やっと元の大きさに戻れた。どーだ、おっきいだろ」
顔はわからないが、その口調は子どもが自慢するかのようだ。二人は、そしてリーオンも思わず吹き出した。最後の最後まで軽い。
でも、ジェイはこれでもちゃんと感謝しているのだ。
「俺達も竜の手伝いができて、光栄だよ。それにしても……こんなに大きいのに、魔力は全然感じないな。リーオンのそばにいる方がずっとその魔力を感じられるけど」
「大竜が魔力を感じさせることは、まずない。我々以上に、自然の中に溶け込んでいるのでな」
「うん。それに、あんまり魔力を放出してたら、他の奴を興奮させたりするかも知れないだろ。向かって来る奴はいないけど、強い魔力を感じたら妙に血が上る奴がいるんだ」
闘争本能を刺激されたりするのだろうか。もしくは、恐怖で混乱状態になってしまうのかも知れない。このサイズで魔力を放出していたら、恐らくラディ達でさえ力の勢いにはね飛ばされかねないだろう。
「そうなのか。だけど、どうして透明なんだ? ジェイの属性って何?」
「何でもあり」
ラディの質問に、軽い返事があった。
「火の竜とか水の竜とかあるじゃない。ジェイはどれにでもなれるってこと?」
「ああ。火山に行けば火竜になって身体が赤くなる。水辺に行けば水竜、森へ行けば緑や土色になるし、風に同化すれば今みたいに透き通るんだ」
どうやら本当に何でもあり、のようだ。それだけの力を有している、ということだろう。透き通っているのは、さっきまで風の力を使ってかけらを捜していたかららしい。
「このままだと、また魔物みたいだって言われるかな」
言いながら、ジェイの身体が少し白みを帯びた。そのおかげで、よくわからなかったジェイの身体が改めて目に入る……いや、やはり視界に収まらない。
ゆったりととぐろを巻いてるような形になっているが、それでもかなり遠くの方まで見ないと身体の端が見えないのだ。真っ直ぐになったらどれだけ長いのか。
ようやくその位置がわかった顔は、今まで見ていたものとそう変わらないようにも見える。そのサイズは文字通りに桁違いだが。
ただ、やはり大きくなったからか、幼さのようなものはあまり感じられない。
「すごい……やっぱり竜はすごいわ」
「オレがこの姿になれたのは、二人のおかげなんだ」
「だって、俺達は協力者なんだし」
「それはそうなんだけどさ。二人が一緒にいてくれたから」
ジェイの言葉の意味を掴みきれず、二人は首を傾げる。
ラディとレリーナがしていたのは、かけらが見付かるように魔法を使うことと、魔獣を呼ぶこと、そして魔物が邪魔したらそれを排除すること。
二人が呼ばれたのだから二人で一緒にカロックへ来るのは当たり前のことだし、ジェイに対して特別何かした覚えはなかった。
「本当のところはさ、オレの協力者が二人だってことは初めからわかってたんだ。オレがそうしてくれって言ったから。でも、それってかなり厳しい条件なんだよな。二人が毎回カロックに来てくれなかったら、オレはこうはなれないから」
通常は一人の協力者が呼ばれる。そして、数回の試練の後、巣立ちが認められるのだ。
だが、ジェイには二人の協力者が呼ばれた。
実は試練が始まる前、ジェイ達はどちらにするかを選べるのだと言う。ただし、ラディ達が経験してきたように、協力者がカロックへ呼び出される回数はかなり増えるのだ。
それを最後までこなせば、今のジェイのように全属性になれる。
とは言え、単に数だけをこなせばなれるものではないのだ。どちらか一人が一度でも、今回は行けない、ということになれば失敗になる。
竜にとっても、全属性になることはとても難しいのだ。
失敗と言っても試練そのものはちゃんと進み、最終的には巣立ちが許されるが、今のジェイのように全属性にはなれない。その竜の一番突出した力、火であれば火竜に、水であれば水竜になる。「協力者は一人」を選んだ竜と同じ結果になるのだ。結果が一気に変わってしまうのである。
初めて会った時にジェイは少し不安そうに協力してくれるか、と尋ねていたが、ラディとレリーナどちらかが拒否したら、ということを思っていたのかも知れない。
最初から一人が拒否する場合もあり、過去にチャレンジして駄目だった竜も多い。まず二人の協力者にするところから、難易度は格段にアップしているのだ。
訪れる回数の増加とそれら全ての参加。協力者両名の皆勤が条件なのである。自分だけの力ではどうしようもないことがあると認識させるのが試練の目的であり、協力者を二人にすればさらに難易度が上がるのは当然。
ジェイの身体が最初は黒に近く、次第に色が抜けてゆくように白くなっていったのも、そういった点が絡んでいる。
二人が順調に来てくれていたから、ジェイはだんだん今の姿に近付いていったのだ。どちらかが今日は無理、となれば違う色へと変化していた。
だからと言って、全属性になるために必ず二人が来てほしい、と告げることは許されない。それはいわゆるカンニングと同じなのだ。あくまでも、協力してくれ、と頼み、二人が来てくれることを願うしかない。
身体の色が変わって来ている、と二人に指摘されてもあからさまにはぐらかしていたのは、二人が来てくれることでこうなるから、と話せないからだ。
何度か飛び入りの協力者がいたが、ジェイにとってはラディとレリーナが来てくれればそれでよかった。なので、飛び入りがあっても問題はない。拍子抜けする程あっさりと許可してくれたのも、二人が来てくれるなら他に増えても構わないからだ。
ジェイがこうして話すまで、ラディとレリーナはもちろんそのことを知らなかったし、ヴィグランも知らない話だろう。彼は一人でカロックへ行っていたから。
ラディとレリーナも、どうして二人になったのかな、という何となくの疑問は持っていたが、二人でヴィグランの話を聞いていたからだろう、くらいにしか思っていない。自分達が毎回来ていたことでジェイが最高の竜になれるなんて、予想すらもしなかった。
「オレ達は協力者の人数を選べるけど、どんな見習い魔法使いが来るかまでは決められない。そういう点でも、オレはすっごく運がよかったんだ。ラディのじいちゃんがカロックに来ていて、二人がこの世界に親近感を持っていてくれたからな。だから、いつも二人が必ず来てくれた。おかげで力を得られたんだ。ほんと、ありがとな」
ジェイが軽かったのは、協力者にカロックへ来ることを負担に思わせないためだったのだろうか。扉から姿を現しながら「また頼むよ」と言って、その裏で今回も来てくれるかな、と不安だったのでは……などと思う。
同時に、そんなことは全然考えてなくて、ジェイだからあんな対応だったのだろう、などとも思う二人だった。
「こちらこそ、だよ、ジェイ。俺達もカロックへ来るようになって、魔力や技術がすごく向上したんだ。レリーナもそうだと思うけど、お互いに迷惑かけないようにって少しでも力を付けようと今まで以上にがんばったしさ」
「うん。あたしも、カロックに来なかったら授業でもたもたしてたと思うわ。来られてよかった。ジェイやリーオンや、他の魔獣達とも会えたもん」
「ああ。それにじいちゃんが話してた体験を自分でもできたことって、すごく大きいよ。ジェイ、呼んでくれてありがとう」
「へへ、オレの協力者、やっぱり最高だな」
ジェイの笑ったような口調。いつもと変わらない。
ふと気配を感じてラディがそちらを見ると、扉が現れていた。帰るための扉だ。
これを通れば、もうカロックへ来ることは……ブラッシュ達のように誰か別の協力者の飛び入りでもしない限り、ない。
これで、本当に最後だ。
もう一度ジェイの姿を見収めておこうと、二人がもう一度空を仰ぐ。
「あれ?」
扉の方を向いたのは、ほんの数秒。なのに、今は空だけしかない。視界に入り切らなかった大竜の姿がなくなっているのだ。
おかしいと思って下へ視線を戻すと、目の前にジェイがいた。今までと同じ姿で。
「ジェイ? どうしてまた縮んでるんだよ」
「縮むって何だよ。大きすぎて見えにくいだろ? 見送りはいつものようにしようと思ってさ。世話になった協力者を見下ろしたままなんて、失礼だろー」
「ジェイってば、もう……」
レリーナが目の前に浮かんでいる小さな大竜を抱き締めた。ラディはそのレリーナごと抱き締める。
しばらく誰もが無言のままでいたが、やがてラディが離れた。それから、レリーナがジェイを離す。
「言う必要はないと思うけど……ジェイ、元気で」
「もし今まで協力してくれた魔獣に会ったら、よろしく言っておいてね」
「おう。ラディとレリーナもしっかり一人前の魔法使いになれよ」
ラディとレリーナは、大竜の小さな前脚にハイタッチした。
「リーオン、来てくれてありがとう。リーオンに力がついたって言われて、本当に自信が付いたよ」
二人は青い炎馬に礼を言った。
「お前達なら己の力に奢ることもないだろう。魔獣に嫌われない生き方をしろ」
リーオンの言葉に、二人は大きく頷いた。
来る時と同じようにラディが伸ばした手を、レリーナが掴む。
そして、ラディは帰るための扉を開けた。
「それじゃあ」
小さな大竜と炎馬に見送られ、二人の見習い魔法使いは扉を閉めた。
☆☆☆
黒い炎を出して、魔物が燃え尽きる。これで最後の魔物が消滅した。
「大した魔物ではなかったな」
「いや、十分大したことあったって」
カイザックの言葉に、ラディが少し息を切らしながら苦笑する。
「よし、これで今回の仕事も完了だな」
ブラッシュが労うように、ラディの肩を叩いた。
異世界への扉が消えてから、五年。
ラディは魔物退治の仕事に明け暮れていた。
性格も魔法も相性がいいらしく、ラディはよく……いや、ほとんどの仕事をブラッシュと組んでいた。お互いを相棒とするのは二人の希望でもあったし、協会側もこの二人を組ませておけば仕事が確実に、そして早く済むので彼等を組ませることが多い。
今も魔物退治に来ていた二人は、ラディの最後の魔法で依頼されていた魔物を消したところだ。これでまた、名実ともにロネールで一番腕のいいバディだという評判が流れることだろう。
ラディが「ロネールで一番の魔法使いになる」とヴィグランの墓前でした誓い。
ブラッシュという強い先輩で、最高のライバルがいて自分が一番とは言いにくい。だが、胸を張ってその賞賛を受け入れていいんだとブラッシュに言われ、ほんの少しだけ言葉が変わって「ロネールで一番実力のある魔法使いバディ」になった、と報告したのはつい最近だ。
「今回も無事に帰れるよ。ありがとう、カイザック」
ラディとブラッシュは、それぞれ自分達の相棒としている魔獣に声をかけ、帰還の途につく。
「そう言えば、ラディ。レリーナとはどうなったんだ?」
唐突なブラッシュの言葉に、ラディは詰まった。カイザックの背にいなければ、きっとつまづいていただろう。
「どうって……いきなり何だよ」
「お前さぁ、いつまでこういう状態でいるんだよ。この前、ターシャも言ってたぞ。どうするつもりなんだって」
ラディとレリーナが恋人同士である、ということは二人の知り合いならみんな知っている。特に、付き合い始めた頃を知っているブラッシュやターシャは、ずっと気に掛けているのだ。
「ターシャに直接突っ込まれて、お前は彼女が納得できる答えを返せるのか?」
ターシャはレリーナを妹のようにかわいがっている。ラディがレリーナを泣かしたりしたことはないが、もしそんなことをしようものならラディはきっと凍らされるに違いない。
冗談抜きに。
「えっと……この前、プロポーズした」
「遅いっ」
ぼそっとつぶやくラディに、ブラッシュだけでなく、カイザックの声までかぶった。
「どうしてカイザックまで言うんだよ」
「普段は大して物怖じもせず、迅速に動くラディが、レリーナに対しては何をもたもたしているのかと歯がゆく思っていたところだ」
「……はは」
魔獣に結婚のことまで心配される魔法使いも、そういないだろう。
「それで? 式はいつにするんだ?」
「まだそこまでは決めてないよ」
「お互いの気持ちは確かめられてるのに、どうして今更足踏みしてるんだ」
「レリーナの仕事が一段落したらだよ。もうすぐ出版だから」
レリーナは魔獣の図録を作る仕事をしている。挿絵とその魔獣についての解説を書いているのだ。
炎馬フィーアのことはもちろんだが、フィーアが自分の友達や友達の友達を連れて来てくれる。なので、レリーナが契約していなくても呼び出さなくても、色々な魔獣と面識を持つことができた。そして、彼等の話を聞いてまとめ、その姿を描く。
そういったことを続け、ようやく一冊の本にまとめることができた。もちろん、出会っていない魔獣は他にもたくさんいるから、順次出していくつもりでいる。
慌てて作り、雑なことはしたくないからというレリーナの意向もあり、出版はスローペースになるだろう。
でも、レリーナ自身はそれでいいと思っているし、ラディやターシャ、それにブラッシュも彼女らしいと思っている。
「そうか。準備でばたばたしていたら、出版日なんてすぐだな。……グリフォンについてはカイザックがここにいるからいいとして、ジェイのことも書けたらいいのになぁ。よそにいる協力者以外の魔法使いがみんな驚くぞ」
竜をしっかり見たという人は、今のところほとんどいない。いてもそのほとんどが遠目で、中にはちょっと注目を集めたいからという下心で適当なことを言う人もいる。なので、正確なデータがあまりなく、詳しい生態はわかっていない。
そこにレリーナがジェイのことを詳しく書いたりしたら、感心されるか、想像で書いているんだろうと批判されるかだ。
「うん。協力者がみんな集まって書けば、少しは信用してもらえるかな。だけど、よその世界の竜だから、図録にしても仕方ないとか言われそうだよ」
絵はともかく、ラディだってジェイの説明ならいくらでもできるのだが……。
「んー、そうだよな。残念だ。竜の項目はともかく、レリーナの図録なら興味深いものができそうだな。式はそれが出てからか。二人の子どもが楽しみだ」
ブラッシュの言葉に、ラディが焦る。
「ブラッシュ! どこまで想像してるんだよ」
一緒になろう、という話をしただけなのに。
ちなみに、ブラッシュにはかわいい娘が一人。来年の春には彼女もお姉さんになる。
「お前達の子どもだぞ。魔法使いを目指すのかなって思うじゃないか。ラディが忙しくても、きっとレリーナがカロックの話をするだろうしな。それに興味を持って……呼ばれて。本人以外の人間が将来を決めるのはかわいそうだけど、俺は行ってほしいなぁ」
それはラディも思う。あのわくわくを感じてほしい。実際に行けば、わくわくだけでなく大変なこともたくさんあるが、貴重な体験だ。
「ジェイにお前達の子どもを見せたら、どう言うだろう。ジェイのことだから、喜んでくれそうに思うけど」
「うん……。あの軽い調子で、そっくりだー、とか似てないな、なんて言うんだろうな」
「案外、どこかで見ているかも知れないぞ。ジェイは何でも面白がっていたから」
カイザックが言い、それもありえる、と二人の魔法使いは頷く。あの大竜なら何でもあり、のような……。
「あ、もしかしたらジェイの子どもが大竜の試練を受けることになって、それにラディ達の子が呼ばれる、なんてことがあるかも知れないぞ」
カイザックの言葉に、ラディは目を輝かせた。
「うわ……そういうのって……いいなぁ」
そんな大竜と協力者は過去にいるのだろうか。なければ、ぜひ第一号になってほしい。
「そうなったら、俺も飛び入り参加できるかな。ブラッシュやターシャみたいに」
「実現したら、ラディが一番張り切りそうだな」
ブラッシュの言葉に、みんなが笑う。
空を流れる雲が、あの日のジェイに見えた。
「異世界マップ」は2012年~2017年の間に書いた物語です。
きっかけは、私の大好きなシンガーソングライター谷山浩子さんのアルバム「夢みる力」から。
収録曲「夢みる力」の中に「地図は微塵に砕けて」というフレーズがあります。
そこから、地図が砕けるって何? 地図なら燃え尽きる方がしっくりくる。やっぱり石版系か……などと考えるうちに、カロックの地図ができました。
あのワンフレーズだけでよく二十話まで話が引っ張れたもんだ……。
カロックへ行ってかけらを捜すというワンパターンで、物語としては盛り上がりに欠けているかも知れませんが、少しは楽しんでいただけたでしょうか。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。





