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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
3章 ダンジョンに行こう
46/240

12話 小さな違和感

追記:文末の・・・を……に変更しました。

無言で見つめ合う2人。おかしいな、昨日で厄払い終わったと思ってたのに、なんで会っちゃうかな……。


「……」


「……」


気まずい空気に動けない、今動いたらなんか負けな気がしてくる……。とは言え、このままって訳にもいかないだろ。何か話さないと。


「……お、おはよう」


「……あ、ああ」


ダメだぁ……コミュ障同士の会話かよ!昨日ギルドでの一件で手打ちになってるんだ、いつまでも引きずって良い訳ないな。


「あんたも防具を新調すんのか?それとも修理か?」


突然俺から話しかけられたことで、鬼女が面白いくらい動揺してる。


「え、ああ……いや。ここのおっさんとは顔馴染みなんだ。だから……」


その先が続かない。こいつ、キレてるときはあんなにガンガン喋るのに、普段は大人しいのか?


「へぇ、俺この町にちょっと前に着いたから店とかあまり知らないんだよ。

 あんたは、この辺り詳しいのか?」


「……」


あれ、黙っちゃった。眉間に皺を寄せて、なんだよまた喧嘩売ってくんのか?


「……あんたじゃない。アタイはカメリア・フレイム。

 年下にあんたあんた呼ばれるのは気分が悪い」


「……すまん。いや、ごめんなさい。

 そう言えばちゃんと自己紹介してなかったな、俺はホクト・ミシマだ」


そうだよな、手打ちにしたんだからちゃんと年上として接しないと。お互いに自己紹介もできたことだし、これで少しはまともに会話ができるんじゃないか?


「……アタイ帰るわ」


「え!?」


そう言って、鬼女改めカメリアは店を出ていった。


「ちょ、何なんだよいったい……」


そんなに俺と話すのが嫌なのか?表情を見た感じ、そんな風にも見えなかったんだけどな……。


「誰か来てなかったか?」


ちょうど入れ替わりに奥からおっさんが戻ってきた。


「ああ、お客さんが……赤い髪と目をした女が」


「……カメリアか」


「知ってるんですか?」


「ちょっとな、それよりこれどうだ?」


おっさんが新しい皮の鎧をカウンターの上に置く。見た感じ今まで使ってたのと大差ないな……これならリーザスに戻るまでは大丈夫だろう。


「これ買います」


「そうか……ちょっと付けてみろ。手直しはサービスしてやる」


「マジッすか。ありがとうございます」


さっそく今着けている鎧を外して、新しい皮の鎧を身に着けていく。俺の身体にあった調整をおっさんが施す間、なんとなくカメリアのことを聞いてみたくなった。


「さっきのお客、カメリアってよく来るんですか?」


「……お前、あいつの知り合いか?」


この場合、なんて答えたらいいんだろう。知り合い、と言うには密度が濃かったな。友達、らしいことは何一つしてない。喧嘩仲間、も違う気がするけど……これが一番しっくりくる気がする。もう、正直に話しちゃおう。


「実は……」


おっさんに昨日までに起こったことを話した。すると、あんまり愛想のないおっさんが少し笑った気がした。


「そうか、あのカメリアとな……」


「あの、カメリアってどんな奴なんですか?」


「カメリア・フレイム、鬼族のDランク冒険者だ」


「鬼族、やっぱりあの槍を振り回すパワーは鬼だからなのか……」


ダンジョンで暴れ回っていたカメリアの姿が脳裏に浮かぶ。あまりの光景に魅了されたように動けなくなったのを鮮明に覚えている。


「お前、あいつが戦っている姿を見たのか?」


「ええ、たまたまダンジョンで一緒になりまして……まあ、それが原因で喧嘩になったんですが」


「そうか……。あいつ、未だにDランクで燻ってるが、本来はもっと上を狙える奴なんだ。ただ、あの戦いぶりを見た奴らと色々あってな。それでいつもソロで活動している」


あいつがソロでダンジョンに挑んでいるのは、そんな理由があったのか。


「確かにすごかったですよ、大きな槍を流れるように振り回す姿は痺れました」


「……お前、何も思わなかったのか?」


「何もって……だから槍で戦う姿に痺れたって」


今度はハッキリとおっさんが笑った。


「そんな感想を言った男はお前だけだ」


「え?」


「他のパーティを組んだ男どもは違った。あいつの力を恐れるもの、男として敵わない事に嫉妬するもの、まあ様々だ。それが理由でパーティから離脱したり陰でグチグチと女々しい言い訳をしたり。それをあいつは、まあ不器用ながらに何とかしようとしたんだがな……結局誰もパーティに誘わなくなった」


ウドベラの冒険者って、ちょっと情けなくないか?確かに圧倒されるパワーだったけど、男なんだから陰口叩くくらいなら、特訓して見返せばいいのに。


「よし、これでいい。ふっ、お前思ってることが顔に出てるぞ」


「まあ、俺だったらってちょっとは思いました」


「今度ダンジョンで会うような事があったら、ちょっとは気を使ってやってくれ。あれでも、うちの上得意なんでな」


「それは無理じゃないですか?俺とあいつ、相性最悪ですよ?」


「そうか……それなら、それで仕方ない。防具が壊れたら、また来い。

 お前だったら格安で修理してやる」


「ありがとうございます、その時はお願いします!」


おっさんにお礼を言って店を出た。でもおっさんも変なこと言うよな、あいつと俺じゃ喧嘩する未来しか見えないって……。





外で待っていてくれたポロンを伴って町を出た。さて、今日もダンジョン攻略がんばりますか!


1人と1匹で他愛ない会話(主に俺だけ)をしながら、ダンジョンの入り口が見えるところまで来た。すると、普段は人気のない入り口に珍しく人影が複数見えた。


「あれ、俺たち以外にダンジョンに入っていく人って初めて見た」


「ワン」


しかも、その人影の中に最近やたらと会う機会の多い女を見つけた。


「あれってカメリアだよな……なんだ、あいつソロ以外でもダンジョンに潜るんだな。おっさん、気を回し過ぎなんじゃないか?意外と上手くやってるんじゃないか」


そう、今ダンジョンに入っていくパーティにカメリアがいたのだ。さっきおっさんから聞いた話と随分違う。ウドベラの冒険者も捨てたもんじゃないな。


「よそ者の俺がとやかく言う必要は無さそうだな」


「わぅ?」


首を傾げるポロン、まあ言っても分からないよな。


「とはいえ、あいつの後に潜ったんじゃまともに魔物と会えなそうだな。仕方ない、今日は魔力制御の練習に変更だ」


俺は左手浸透の練習の為、広場の空いたスペースで魔力制御の練習をすることにした。


「すいません、あそこの空いてる場所使っても良いですか?」


一応ダンジョンの門番さんに確認を取る。


「え、ああ。あまりうるさいのや、派手な事でなければいいぞ」


「わかりました!」


さて、昨日試して思ったのは右手に対して左手の方が魔力の集まりが悪い事。これって利き腕とか関係あるのかな?魔力を左の拳に流してみる。


「……う~ん、やっぱり集まりが悪い。これは推測通り利き腕が関係ありそうだな。無理して左手で投げたときの様というか、これじゃ無い感というか違和感みたいのを感じるな」


でも、それなら問題なさそうだ。要は練習して慣れれば右と同じようにできるって事だ。


「今の雑に流しているのを、もっと細く一定になるようにしてみよう」


こうして俺は2時間ほど魔力制御の練習に没頭した。お蔭で少しは自然に操れるようになった。





魔力制御の練習もひと段落して休憩を取っていると、ダンジョンから男3人組が出てきた。あれ、あいつらって俺たちが来た時に中に入っていった奴らじゃないか?


「なあポロン、あいつら何かおかしくないか?」


「わぅ?」


首を傾げるポロン。そりゃそうだ、こんな漠然としたことを聞かれてもポロンには答えようがないだろう。だけど何だろう……この漠然とした違和感は。間違い探しの最後の1つが分からないようなもどかしさ。


「う~ん、気のせいか?」


「どうした?」


門番さんに変な顔をされた。


「いや、なんか違和感と言うか何かが間違っているというか……」


「何のことだ?それより、入るのか?」


「あ、ああ……入ります」


門番に1000ゼム払って、俺とポロンは中に入る。


でも、このときの俺は重要なヒントを見逃していた。外に出てきた男たちのことをもう少し気に留めていれば違和感に気付いていたかもしれない。男たちと一緒にダンジョンに入ったカメリアが居ない事に。

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