13話 カメリア・フレイム
今回はカメリア視点です。
追記:文末の・・・を……に変更しました。
その日、アタイは定宿にしている『金の落穂亭』を出て町の出口に向かっていた。このウドベラを拠点にしてから、大分経った気がする。目的は『工夫達の洞窟』というダンジョンを制覇すること。だけど、なかなか上手くいかないもんだ。
アタイの名はカメリア・フレイム、24歳。ウドベラ冒険者ギルド所属のDランク冒険者だ。Dランクになって結構経つのに、なかなかCランクには上がれない。昔パーティを組んでいたときのメンバーは、みんなCランクに上がってるのにアタイはまだDランクで燻っている。それがすごいコンプレックスだった。それもあって、ダンジョンを攻略して実績を上げようとしてるんだけど、この町にいる冒険者たちとは組みたくない。それは、なぜか……。
「おう、カメリアさん。今日もおひとりでダンジョン攻略ですか?」
下衆の笑みを浮かべて男の冒険者が話しかけてくる。
「……」
こいつだけじゃない、この町にいる男の冒険者はみんなコイツみたいにアタイを馬鹿にしてくる。アタイには思い当たる節がないけど、どうも奴らのプライドを刺激したせいらしい(防具屋のおっさんが教えてくれた)。そんなことを言われても身に覚えは無いんだけどな……。
「あれあれ?わたくしのような下っ端とは会話もできないですか?」
ムカつく。今すぐにでもぶん殴って黙らせたい。でも、前に絡んできた奴を殴ってからギルドの目が厳しくなった。ギルドの奴らもおかしい、アタイの話しは聞く耳持たないのに、あいつらの言い分だけは聞きやがる。ギルドの奴でまともに話を聞いてくれるのはアーネだけだ。
「……フンッ」
アタイは冒険者たちを無視して、町を出た。あいつらは自分が何をしてもギルドから何も言われないことを良い事に、やり方がえげつなくなった。とにかくアタイが手を出しそうになったら、周りの奴に吹いて回るのだ。アタイが乱暴者だ、何もしていないのに手を出した……と。クソッ、だから軟弱な奴らは嫌いなんだ。
「早くダンジョンを攻略して、こんな町とはおさらばしてやる」
軟弱な奴らも嫌いだけど、この程度のダンジョンを攻略できない自分も嫌いだ。未だに半分も攻略できていない。このままじゃ、アタイは鬼族の面汚しになってしまう。
「でも、どうしたらいいんだ……。工夫達の洞窟はソロで制覇するのは無理だ。せめて後1人仲間がいないと、手数で競り負ける」
アタイだって自分の腕には自信がある。だけど、工夫達の洞窟はとにかく敵が多い。1つのグループと戦闘に入ると、仲間がどんどん寄ってくる。1匹2匹を倒すのはわけないけど、さすがに10匹20匹相手に連戦するのは骨が折れる。結局疲れ切って、毎回攻略が成功しない。特にここ1か月は階層の更新もできていない。
「……大丈夫だ。今日こそは先の階層に進んでやる」
アタイは気合を入れて、ダンジョンに足を踏み入れた。
3階層、ここはコボルドが出てくる。こいつらが曲者で、1グループ5,6匹でウロウロしていて、こいつらと戦闘に入ると戦っている間にどんどん仲間が増える。さすがに、それくらいじゃやられはしないけど、ここで体力を使い過ぎて先の階層になるとバテバテになってくる。ここを楽にクリアするためには、やはり前衛に1人ほしい。
毎日来ている場所だから、どっちへ進めばいいのかは知っている。アタイは普段通りに奥へ進んで行くと、前から見ない顔の男が歩いてきた。冒険者か?
「……」
「……」
アタイの嫌いな男の冒険者、初めて見る顔だけど自然と身構えてしまう。すれ違う時に相手もピリピリした空気に何かを感じていたようだけど、アタイとしては何事もなくすれ違えたことで気が楽になった……べ、別に緊張してたわけじゃねぇぞ?
男の冒険者とすれ違ってしばらくすると、前方からコボルドのグループがアタイに向かってくるのが見えた。さっそくぶつかってしまった……仕方ない、とっととやっつけて先に進もう。
「ハァ!」
気合を入れて背中に担いだ槍を打ち下ろす。アタイの生まれた村から出るときにもらった宝物だ。2メタを超える長さと重量、そこいらにいる男ではまともに持つこともできない。けど、アタイには頼もしい相棒だ。
「セイ!ハッ!ヤァ!」
薙ぎ払い、突き刺し、打ち下ろす。常人離れした鬼族特有の力があって、初めて十全に扱うことができるこの朱槍を縦横無尽に振り回す。その度にコボルドたちが宙を舞う。
最初に向かってきたコボルドたちが半分になるころ、別のグループのコボルドたちが集まってきた。
「……ハッ!いいぜ、どんどん来いよ。アタイが相手をしてやる!」
爪を振り下ろすコボルドの胸に槍を突き込むと、そのまま後ろにいる奴もまとめて槍で縫い付ける。2体を串刺しにした状態で、槍を持ち上げ脇でビビった顔をしているコボルドに叩きつける。気持ちいい、最高だ!
「ハァ!……ウリャァ!!」
肩口から切り裂き真っ二つにしたコボルドを蹴倒して、横にいる奴を薙ぎ払う。もっと、もっとだ……もっとアタイを楽しませろ!
「……!」
ふいに視線を感じて辺りを見てみると、さっきすれ違った男がアタイの戦闘を見ている。あいつ、アタイの後を付けてきたのか?一体何のつもりで……。
「ガァッ!!」
力任せに朱槍を叩きつける。それだけで頭のてっぺんから股下まで真っ二つになるコボルド。……まさか、アタイの隙をついて襲ってくる気か?男なんて、どうせ陰からコソコソと闇討ちする事しかできない奴らが、アタイの楽しみを邪魔する気なのか?それは、許せない……戦闘はアタイに取って大事なものだ。それを邪魔する奴は、たとえ誰であろうと我慢ならない。
「……ハァ……ハァ……」
怒りに我を忘れて、槍を振り回していたらいつの間にかコボルドの数が減っていた。……しまった、ここは体力を温存するつもりだったのに忘れていた。これでは次の階層すら怪しい。それもこれも全部あいつが……
「ワォーン!!」
すると突然横合いからコボルドが襲い掛かってきた。しまった、余計な事を考えていて出足が遅れた。一撃を覚悟していたら、コボルドの攻撃を拳で打消し蹴り飛ばした奴がいた。
「……」
あっけにとられるアタイには目もくれず、男の冒険者がコボルドを倒していく。ひょっとして、アタイを助けたのか?……アタイは、男の冒険者に助けられた?理解した瞬間頭が沸騰した。冗談じゃない、あんな軟弱な奴らにアタイの戦闘を穢された!
男は最後の1体を殴り飛ばして戦闘態勢を解いた。アタイは男に向けて歩き出し、あと数歩と言うところで男がこっちに振り返った。その瞬間……
バキィ!
「うがぁ!?」
綺麗に入ったグーパンに男は壁際まで吹っ飛ばされていた。ざまあみろ、いい気味だ。
「ってぇな、なにすんだよ!」
これがアタイと人間の男の冒険者、ホクト・ミシマとの出会いだった。
今思い返しても頭にくる。結局あの男の冒険者と別れて4階層へ上がったけど体力が続かず町に戻ってきた。何と言うことだ、今日は階層更新しようと意気込んで町を出たのに、まさか4階層すら超えられずに戻ってくるとは……。
「これも全部、あの男のせいだ!」
いきり立つアタイに近づく者は誰もいない。肩を怒らせながら歩いて、気付いたら自分の定宿の前に立っていた。
「今日は、飯食って寝る!」
アタイはその日、早々に眠りについた。明けて翌日、アタイは今日もダンジョンに潜る。朝早い時間からダンジョンに潜って階層更新を目指す。
「クソッ!こんなところで足止めを食ってる場合じゃないのに!」
やっぱり4階層が超えられない。今日は3階層でできるだけコボルドとの戦闘を避けて4階層に着たのに、ここも数の暴力に抗えず苦戦していた。
「ソロじゃ超えられないのか?誰か連れてくるしかないのか!?」
その日もアタイは階層更新することができなかった。
町に戻って『金の落穂亭』で夕食を取ろうと食堂へ向かう。そこでアタイは見たくない奴の面を見つけちまった。昨日ダンジョンで殴りつけた男冒険者だ。あいつ、アタイを追いかけて、この宿まで来たのか!?
「目的はなんだ?闇討ちか?他の奴と結託しての騙し討ちか?」
頭で良くない想像をしてしまう。仮にここにいる奴全員に襲い掛かられたら、さすがのアタイでも対処できない。
「……やられる前にやるか」
そう決意したアタイは、男が食事を取っている席まで歩いて行った。
「てめぇ、なぜここにいる!」
アタイの怒声にあっけにとられる男。
「答えろよ!なんで、てめぇがここにいる」
「……なぜって、ここに泊まってるから」
そんなはずはない、ここはアタイの定宿だ。こいつが前から泊まっていれば目に留まるはず……。
「なんだと!?今日まで見かけなかったぞ?」
「それはお互いさまだ、俺もさっきアンタを見て驚いた。偶然ってあるんだな」
こいつ、しらを切るつもりか!?
「そんな訳あるか!どうせ、アタイがここに泊まっていることを嗅ぎ付けて、ここまで来たんだろう?」
「……はぁ、俺がここの宿を取ったのは5日も前だ。信じられないなら女将さんに聞いてみるといい」
嘘をつくな!こいつ、どうあっても出ていかない気か?アタイの堪忍袋の緒もそろそろ切れそうだ。アタイは男が食べていた皿を思いっきり払ってやった。
ガシャ~ン!
それがまずかった……結局宿の女将から怒鳴られ、男だけじゃなくアタイまで宿を追い出される羽目になった。こんなはずじゃなかったのに……。
「これからどうしよう……。この町に来てから、宿屋はここしか知らないし。今から探して見つかるかどうかもわからない、参った……」
途方に暮れていると、頭にギルドで唯一親身に相談に乗ってくれた女のことを思い出す。
「アーネに相談してみるか」
アタイはアーネに会うために冒険者ギルドに向かった。
食べ損なった食事を屋台で済ませてからギルドに入る。目当てのアーネは誰かと話し中みたいだけど、こっちも切羽詰まってるんだ。
「おいアーネ、ちょっと聞いてくれよ。いきなり宿を追い出されて困ってんだ。
お前の伝手でどこか紹か……あ、てめぇは!」
驚いた、アーネが話している相手はまさかのあの男。ダンジョンでアタイの尊厳を踏み躙り、定宿にしていた宿を追い出される原因になった男。なんでこいつがアーネと一緒にいる?
「あ、カメリアさん」
「なんでてめぇがここにいる!」
アタイの頭は一瞬で沸騰した。
「……なんでって、アンタのまきぞえで宿を追い出されたからだよ」
「え!?ホクトさんが絡まれた人って、カメリアさんだったんですか?」
何と言うことだ、こいつは先回りしてアーネに嘘を吹き込んでやがった!
「絡まれた?てめぇはアーネに何を吹き込んだ!」
もう勘弁ならねぇ、アーネはアタイが信頼できる唯一のギルド職員だ。そのアーネまで嘘で篭絡しようとは、これだから男の冒険者は卑怯なんだ!
「ちょっとカメリアさん、落ち着いてください!」
その後場所をギルドの応接室に移して、3人で話し合うことになった。アタイはとにかくこの男が信用できない。それをアーネに分かってもらおうと、一生懸命説明したんだけど、結果は惨敗。いや、今回の件はアタイがむしゃくしゃしていた時に出会ってしまったこの男に八つ当たりしていたことが発端だとアーネに諭された。アタイが八つ当たり?……確かにあの日は、他の冒険者に馬鹿にされて頭に血が上りやすい状況だったことは否定できない。
「……うぇ、アタイの勘違い?」
男にとってはいい迷惑だっただろう……アタイのせいで宿を追い出されたのだから怒って当然だ。アタイだったら、顔の形が変わるまで殴る自信がある。なのに、この男ときたらダンジョンで拾った素材をアタイに全部よこしやがった。
「まあ勘違いだったってことで、お互い犬に噛まれたと思って忘れようぜ。俺も気にしないから、あんたも気にすんな」
こんなことを言いやがった。これじゃあ、アタイ1人が熱くなって騒いで馬鹿みたいだ……いつの間にかアタイも男だなんだと一括りにして見下していたのか?それはアタイが一番嫌いな行為だ。それを自分がやっていたと知らされて、恥ずかしいやら情けないやらで男の顔をまともに見れなくなってしまった。
「あ、カメリアさん。カメリアさんも宿を追い出されちゃったので、別の宿屋を用意しました。一応ホクトさんとは別の宿屋になりますので……大丈夫ですよね?」
アーネが親切にもアタイの分の宿も取ってくれたらしい。でも、今のアタイにはその親切すら追い打ちをかける。
「……あ、ああ」
なんとか絞り出してアタイはギルドを出た。
アーネが取ってくれた宿で寝た翌日。アタイの足は自然とギルドへ向かっていた。昨夜、無い頭を使っていっぱい考えた。どうしたらダンジョンの階層更新ができるのか、答えは既に出ていたのだ。男を見下さずに仲間に入れてもらう。あの男と出会ったことで、自分の未熟な部分を自覚させられた。今のアタイに必要なことは、誰かを見下す事じゃなくて、頭を下げて仲間に入れてもらうこと。それがダンジョン攻略に一番の近道だ。
「おや、カメリアさん。今日もおひとりですか?さすが我々とは出来が違いますな。我々などは徒党を組まないとダンジョン攻略など夢のまた夢」
いつもアタイを馬鹿にしてくる冒険者が、今日もアタイを見つけて冷やかしてきた。毎度毎度ムカつく奴だ。でも、あいつみたいな奴がいるなら男の冒険者も悪くないんじゃないか?確かにこいつはムカつくけど、確かアタイよりも攻略階層は上だったはず。
「……あんたに頼みがある」
男はギョッとした後
「へ、へえ……あのカメリアさんがわたくし如きに何を頼みたいと?」
我慢、我慢だ……。ここで怒ったら今までと何も変わらない。
「ダンジョンの階層攻略に手を貸してほしい」
「いいですよ、あなたに力を貸しますカメリアさん。ちょうど我々のパーティも今日はダンジョンに入るので、全員一緒で良ければお手伝いしますよ?」
やっぱりアタイの食わず嫌いだったのか?普段は見下すような雰囲気を出していた男が、こちらの頼みを聞いてくれた。頼み方ひとつでこうも変わるものか。
「ありがたい、それでいつ行くのだ?すぐか?」
「いえ、我々にも準備があるので……そうですね、1時間後に門の前で待ち合せましょう」
「1時間後だな、わかった」
男たちとはいったん別れ、アタイもダンジョンへ行く準備を整える。今日は防具屋のおっさんの所に行って、防具の修理を軽くしてもらおう。ここ最近防具の修理をしていないから、万全を期したい。
「わりぃおっさん、ちょっと見てもらえるか?」
手慣れたもんで、普段入り慣れている防具屋に入っておっさんを呼び出す。しかし、その日はおっさんの代わりに別の奴が店の中にいた。
「……あっ」
「……えっ?」
なんてことだ、まさか昨日の今日であの男に会っちまうとは……。でも、この男のお蔭で他の冒険者と渡りをつけることができた。改めて詫びとお礼を言った方がいいだろう。
「へぇ、俺この町にちょっと前に着いたから店とかあまり知らないんだよ。
あんたは、この辺り詳しいのか?」
しかし、こいつはいつまでアタイのことをあんた呼ばわりする気だろう。そう考えて気付いた、そういえばアタイまだこいつに名乗ってなかった。
「……あんたじゃない。アタイはカメリア・フレイム。
年下にあんたあんた呼ばれるのは気分が悪い」
「……すまん。いや、ごめんなさい。
そう言えばちゃんと自己紹介してなかったな、俺はホクト・ミシマだ」
ホクト・ミシマ、ホクトか。多分年下だけど、こいつはアタイが見込んだ男だ。カメリアと呼び捨てにされるのも悪くないかもしれない。
「……」
その考えに顔が赤くなる。アタイ何考えてるんだ?昨日まであんなに憎かった相手に呼び捨てにされて嬉しい?しかも年下に?……ダメだ、こいつといると調子が狂う。ここは出直して来よう。
「……アタイ帰るわ」
「え!?」
アタイは慌てて防具屋を出た。修理はできなかったけど、これは仕方ない。しかもあいつと、ホクトと話し込んだせいで時間も無くなってしまった。慌てて門に向かう。門にはすでに3人の男たちがいた。
「悪い、待たせたか?」
「いえいえ、我々も今来たところですよ」
「そうか……」
よくよく考えると、アタイはこいつらの名前を知らない。さっきホクトと自己紹介するまで、この町の男とまともに名乗り合った記憶がない。今更だけど、一緒にダンジョンに潜るならお互いに名乗り合った方が良いかもしれない。
「さて、時間も余りありません。行きましょうか?」
「……あ、ああ」
そのことを言おうとしたら、男たちはとっとと歩き出した。まあいいか。男たち3人と連れ立ってダンジョンに迎い中に入る。4階層までは、今までにない速度で攻略できた。3階層ですら4人いると、大勢で襲ってくるコボルドがただの的にしか感じなかった。アタイは、ここに来てからどれだけの時間を無駄に使ってしまったのか……それだけが頭の中で反芻する。
しばらくコボルドの相手をして、4階層に着いた。今日はここからが本番だ。
「どういうフォーメーションで行く?」
「私が斥候として先行します。敵を見つけたら彼とあなたで前衛を、わたしが中衛、彼が後衛でいいでしょう」
「分かった」
男の指示に従ってフォーメーションを組んで進んで行く。戦闘は実に楽だった。前衛、中衛、後衛がちゃんと機能するとここまで難易度が下がるのかと感心してしまった。しばらく進むと斥候の男が戻ってきた。
「あっちに隠し扉があります。恐らく、誰にも見つかっていない未発見の隠し部屋があると思われます」
隠し部屋、それはダンジョンにまれに見つかる曰くつきの部屋だ。基本的に隠し部屋に入るためには隠された鍵を開ける必要がある。しかも中に入っても罠の可能性もある、しかし実入りは断然良い。普段のアタイだったら気にもせず先を急いだだろう。だけど、今日は他にもメンバーがいる。ここは彼らの意見を尊重しよう。
「で、どうする?」
「わたしは入ってみたいですね。鍵も見つけましたし、そんなに難しい罠ではありませんでした。この程度なら苦も無く開けられますよ」
「なら、行ってみようぜ!罠の可能性もあるけど、中に宝箱でもあればしばらく遊んで暮らせるぜ」
「そうだな、ここは冒険しても良いんじゃないか?なんせ、俺たち冒険者なんだからな」
「ちげぇねえ、わっはっは!」
決まったようだ。
「なら、アタイも賛成だ。中に入ってみようぜ」
意気揚々と斥候の男の後を付いて行く。アタイにとっても初めての隠し部屋だ、妙にワクワクする感覚を覚えながら見守ることにした。
「では、開けますよ?」
斥候の男が隠し扉の罠を解除して、そっと中をのぞく。
「……おぉ、あります。ありますよ、あれは宝箱です」
「そりゃラッキーだな。よし、ならカメリア、俺、お前、最後にお前の順で入ろう」
「ん?斥候が前に出なくていいのか?」
「ここまできたら大丈夫だ。それに可能性としては魔物が出てくる方が高い。それなら、前衛が前に出ていた方がいい」
「そうか……よし、じゃあアタイから入るぞ」
そう言って、アタイは隠し部屋に入った。暗くて良く見えないが、確かに奥に箱のようなものが見える。
「なあ、あれが宝b……」
バターン!
その瞬間隠し部屋の扉が閉じられた。中にはアタイ独りだけ。
「お、おい。どういうつもりだ!?」
「ヒッヒッヒ……こんな簡単に嵌るとは、あんたバカでしょカメリアさん」
「え?」
「誰がお前みたいな奴とパーティを組むかってんだ。俺たちは最初からここにお前を誘い込むために連れてきたんだよ」
何を言われたのか一瞬理解できなかった……。誘い込まれた?嵌る?それって……
「でもざまぁないですね、カメリアさん。普段あれだ我々のことを見下していたのに、当の本人はこんな簡単な策に嵌るとは、クックック……これは笑いが止まりませんよ!」
「そこは俺たちが見つけた、モンスターハウスだ。せいぜい頑張って生き残ってくれよ」
つまり……アタイは騙されたのだ。信じてみようと思った結果がコレだ。所詮男なんて……こんなモノだ。騙されたアタイが悪い。でも、悔しい……こんな奴らに馬鹿にされながら死ぬのかアタイは!?
「……貴様らぁぁぁ!!!絶対、絶対許さねぇ……ここを出て貴様らを殺してやるぁ!!!」
「はん、どんなに叫んだってお前はここで死ぬんだ……よし行こうぜ」
男たちの声がしなくなった……男なんて。あいつも、あのホクトってやつも結局は同じだろう。あいつも所詮は男だ。
「クソッ、悔しい……悔しいよアタイは……」
自然に涙が頬を伝った。ここまで悔しかったことは、自分の人生で一度もない。このまま死ぬなんて嫌だ……だけど、それを許さない連中が湧きだした。
「オーク……寄りによってオークのモンスターハウスかよ……」
オーク、女にとってはこれ以上ない絶望的な状況だ。オークに襲われたら、ただ死ぬ以上に残酷な未来が待っている。例え数匹倒せても、モンスターハウスの中では焼け石に水だろう。アタイはここでオークたちに凌辱され、子を孕まされて用済みになったらボロ雑巾のように殺される。ああ、アタイはどこで選択を間違ったんだ……。




