表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
9章 仲間を探そう
201/240

3話 初陣

翌日、装備も一新して俺たちは探索者ギルドの前に来ていた。探索者ギルドでは、冒険者ギルドと同じように依頼を受けて報酬を得る事ができる。初めて入る願いの塔だけに、どんな依頼、どんな魔物がいるのか解らない。まずはギルドで聞いてみて決めるとしよう。


「依頼については、アサギに任せていいか?」


「うん。冒険者の時もそうだったから、探索者になっても大丈夫よ」


こういう交渉事は、アサギに任せるのが一番だ。ぶっちゃけ、俺やカメリアはどんぶり勘定な上に適当に依頼を受けるので、今までも結構損をしていた。とは言え、交渉したら上手くいったかと言うと……まあ、無理だっただろう。アサギがパーティにいてくれて、本当に良かった。


ギィイィィィ……


探索者ギルドの扉を開けて中に入る。とりあえずお試しで願いの塔に入る予定なので、ピーク時から少しずらしてギルドに来た。相変わらずギルドの中は閑散としていて、俺ら以外に探索者の姿はちらほらとしか見えない。カウンターにも、相変わらずカリンさん1人。本当に大丈夫なのか、このギルド……。


「私はカリンさんに話を聞いてみるから、ホクトくんたちは掲示板の方を見てて。気になったのは覚えておいて、カリンさんに聞いた内容と合わせて受ける依頼を考えましょう」


「おう」


アサギと別れて、カメリアと一緒に掲示板の前まで来る。さて、探索者への依頼ってのはどんなものがあるのか……。


「えっと……薬草の採取に、魔物の素材…………なんだ、冒険者とほとんど同じだな。違うのは、願いの塔限定の素材って事くらいか」


「この辺の報酬が高いのは、多分上に行かないと出てこない魔物の素材ってとこか……」


カメリアと一緒に、一通り依頼を見てみる。これと言って真新しい依頼は無かった。今の俺達でも受けられそうなのは……お、これはこれは。


「ん?なんかニヤニヤしてるけど、どうしたんだホクト」


「いや、懐かしい名前を見つけたから……」


掲示板に張られた以来の中の1つ、『レッド・コメットの角3本』って依頼が俺の目に止まった。レッド・コメット……俺を鍛えてくれたレッド・コメット先生。懐かしいな、願いの塔だと普通に出てくるんだ。俺が見かけた森では、ユニーク個体ってなってたけど……実は違う種なのか?


「お待たせ……って、どうしたの?なんか嬉しそうだけど」


「アサギまで……そんなにあからさまか?」


「うん、口元がヒクヒクしてる。何かあった?」


アサギに指摘されて、意識して治す。


「で、どうだった?」


「色々と聞けたわ。それをもとに依頼を受けましょう」


そう言って、アサギは掲示板から依頼書を何枚か手に取った。残念ながら、その中にレッド・コメットの素材集めは入ってない。って事は、結構レベルの高い依頼だったのか?アサギが受けた依頼は、『麻痺草の採取 10本1セット』『眠り草の採取 10本1セット』『薬草の採取 10本1セット』の3つと、『ホブゴブリンの牙 2本1セット』の計4つだった。


「ホブゴブリンって、願いの塔の中だと大量に湧いてるのか?」


「そんな訳ないでしょ。群れを率いているホブゴブリンを見つけて、それを倒して1セットよ。今日受けたのは、常時依頼が入ってる物ばかりだから、多く持ちかえればそれだけで報酬がもらえるわ。お試しとしては十分よね」


そうか、こういうのが願いの塔の中では常時依頼になるのか。まずはこれが問題なくこなせないと、願いの塔の中で稼ぐことは難しそうだ。


「そんな毒草ばかり集めて、なんにするんだ?」


「毒草って言うのは、逆に回復するための薬にもなるのよ。願いの塔の中では、それだけ状態異常を起こす可能性が高いって事ね。私たちも、常備薬としていくつか買ったでしょ」


今まで冒険者として活動してた時には買う事がなかった、状態異常系を回復するための薬を何本か購入した。探索者として活動するためには、これらの薬は常にストックを確認するように心がけよう。


「よし、依頼も受けたし出発しよう」


「おうよ、早く入りたくてウズウズしてたんだ。おら、さっさと行こうぜ!」


そう言って、一番に外に出て行くカメリア。


「張り切ってるね、カメリア」


「夢だったんだろ、探索者になるのが。だったら、ここで張り切るなって言っても無理だろ。そう言う俺も、やっとここまで来れたって事でテンションは高めだ」


「ふふ、冒険者になる前から言ってたもんね。願いの塔を踏破して、願いで元の世界に帰るって……」


「ああ、そのための第一歩だ。躓く訳にはいかない」


アサギと一緒に、カメリアの後を追う。いよいよ、願いの塔に入るんだ。





探索者ギルドを出て、西門へ向かう道から願いの塔へ向かう道に入る。周りには俺達しかいない。少し遅いだけで、こんなにも探索者に出会わないものなのか?疑問に思いながらも、こんなものかと納得してみる。なんにしても、初めての事だらけで道理がわからない。しばらくは、慣れる事に集中しよう。


「うしっ、着いた!」


カメリアが、両腕をあげて吠える。いや、まだ中にも入ってないんだから、そこで満足するなよ。


「ほら、恥ずかしいから落ち着いて。もうっ、気持ちは解るけど少しは落ち着いてよ。恥ずかしいな……」


願いの塔の前にある広場に到着した。ここには、さすがに探索者と思われる人たちがちらほらといる。その人たちから生暖かい視線を受ける俺達猛炎の拳。視線を向けられてるカメリア本人は、全く動じていない。俺とアサギだけが恥ずかしい思いをしているってのは、どうも納得がいかない。


「ほらっ、さっさと入ろうぜ」


カメリアに急かされて、願いの塔の扉の前まで連れていかれる。気持ちは解るから、腕を引っ張るな!痛いって……。扉に近づくと、すぐ傍に黒い石の塊が地面から生えていた。生えていたってよりも、打ち込まれてって方が正しいのか?とにかく、扉の横に黒い石があるって事だ。


「う、うがぁ!……って、開かねえぞ?どうなってんだ?」


「もう!いい加減落ち着きなさい。さっきカリンさんに聞いたんだけど、塔の中に入るには、そこの石にギルドカードを登録する必要があるようよ」


「石?」


そう言って、横にある黒い石に目を向けるカメリア。ちょっと驚いた顔をしているところを見ると、こいつ全く気付いてなかったな。


「で、ギルドカードをどうするんだ?」


「えっと……あ、これね。石にスリットがあるでしょ?そこにギルドカードを差し込むみたい」


そう言って、アサギが石に開いているスリットに自分のカードを差し込んだ。すると、どういう原理になってるのか解らないけど、石の表面を光が走った。そして、その光は上段の左から右へ、端まで行ったら1つ下に移ってまた左から右へ……これって、PCの起動画面に似てるな。書かれてる文字は全く読めないけど、何かを起動しているっぽい動きをしている。


プププププ……プププ…………プププププ……


しばらく文字が走っているのを全員で見ていると、1ブロックだけ明滅していた文字がスウッと消える。そして自動的にアサギのギルドカードが、外に吐き出された。一瞬飛び出すかと思ったけど、ちゃんとストッパーが付いてるようで、取り易いように外に出て止まった。


「……これで、登録が完了したのかしら?」


「さっき石に写ってた文字って、アサギ読めたか?」


「全然。今まで見たことが無い文字だったわ……」


アサギでも読めないって事は、とんでもなくマイナーか、とんでもなく古いかのどちらかかな。まあ、俺には読めないから結局一緒だけど。


「で、どうだったんだ?登録って言うのは、無事に終わったのか?」


「えっと……うん。大丈夫みたい。カードの方に、今まで無かった回数表示があるわ。多分、このカードで扉は開くはずよ。中に入るには、登録が必要みたいだから、全員登録を済ませてしまいましょう」


アサギに続いて俺、カメリアも登録を行った。2人のカードにも、無事回数表示が出ている。これで踏破した回数が解るようになったって事だな。


「もういいか?今度こそ、中に入れるのか?」


「だから、落ち着けって……。アサギ、この後はどうするんだ?」


興奮してテンションがおかしいカメリアの頭に手刀を落とす。対して力を入れてないから、ダメージは無いだろうけど、ビックリしたカメリアがこっちを睨んでいる。落ち着きがないお前が悪い。


「後は、扉に付いている端末にカードを通せばいいみたい」


そう言って、アサギが扉の横――石とは逆側――の壁に備え付けられた板?みたいなものにカードをあてた。すると、板が一瞬淡い光に包まれた。そして……。


ゴゴゴゴゴ……


ゆっくりと願いの塔の扉が開いた。中は暗くて見えないけど、これで入る事ができそうだ。


「カードをかざすのは、全員しなくてもいいのか?」


「パーティ登録をしていると、ひとりのカードで全員入れるみたい。ただ、次の階層に移ったときは一度全員カードの更新をする必要があるみたいよ」


すげえな、このカード。現代科学よりも未来っぽい。マジマジとカードを見ていると、我慢の限界に来たのか、カメリアが声をあげた。


「んな事は良いから、とっとと入ろうぜ。アタイ、もう我慢の限界だ」


「そうね、ここで留まってても仕方ないわ。さ、ホクトくん。入りましょう」


「そうだな……」


さて、いよいよだ。俺を先頭に塔の扉を潜る。潜っているにも拘らず、中が真っ暗なのはどういう事だ?一瞬ビビったけど、覚悟を決めて足を動かす。しばらく真っ暗な中を歩くと、突然周りが光に包まれた。驚いて目を瞑って、そして開く。そこは……。


「うわぁ……」


「……」


「……すごい」


三人三様の反応。目の前には、塔の中とは思えない風景が広がっていた。


「辺り一面草原じゃないか……。ここって塔の中だよな。一体どうなってんだ?」


「塔の中は特殊な空間になっていて、広さはフロアによって全然違うみたい。聞いた話だと、1階はリーザスの町よりも広いみたいよ」


「マジか……」


「……」


アサギと話していても、さっきまでうるさかったカメリアからの反応がない。心配になって、横を見てみると……。


「……」


呆けた表情で固まっていた。インパクトに、脳がついて行けなかったみたいだ。そんなカメリアが再起動するのを待ってても良いんだけど、俺としても早くこの中を歩いてみたい。なので、カメリアの頭に手刀を落とす。さっきと違って、今度は反応があった。


「……痛えな、なにすんだよ」


「お、反応があった。そろそろ行くぞ」


「…………おう、おう!行こうぜ!」


少しの間の後、一気にテンションがマックスになったカメリアが叫ぶ。よし、これでカメリアは大丈夫だ。アサギの方を見ると、笑顔で頷いてくれた。いよいよ準備ができた。


「さあ、冒険の始まりだ!」

200話かけて、やっと塔の中に入る事ができました。

今後、基本的には願いの塔の冒険になりますが、他の場所に行ったりもします。

折角の異世界なので、ホクトにはもう少し色々な所を見てもらいたいと思います。

これからも、引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ