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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
8章 探索者になろう
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9話 猛炎の拳グレードアップ計画立案

あの後、また町をぐるっと回って宿まで帰ってきた。今日は、久々に心の底からゆっくりできた1日だったな。今までも冒険者として、依頼を受けない日ってのはあったけど訓練だけは続けてたからな。


「あ、ホクトくん!ずっと姿が見えなかったけど、どこかに行ってたの?」


アサギとカメリアが食堂で夕食を取っている。俺も2人がいるテーブルに座って――今日はカメリアの隣だ――店員に夕食を注文する。この宿屋は、一泊に朝と夕の二食が付く。朝は1種類だけ、夕食は2種類から選んで食べる。テーブルの上を見ると、アサギが魚の塩焼き、カメリアが鳥かな?ソテーだ。今日は長時間散歩をしたとはいえ、あまり運動をしていないから、アサギと同じA定食。魚の塩焼きにした。


「どこに行ってたんだよ」


「特に目的もなく、ブラブラしてた。午前中は装備品についてゴドーやダッジさんにアドバイスをもらいに、午後からはただ町をブラブラと……」


「あら、随分素敵な休暇を過ごしたのね」


「そうか?目的もなく、ただブラブラするなんて時間の無駄だろ。アタイにとっては、地獄のような時間だね」


同じパーティメンバー同士なのに、こうも真逆の感想が返ってくるのが面白い。まあ、キャラ的にも2人の答えは性格が良く現れてる。


「はいよ、A定食お待ち!」


2人と話していると、俺の前に木皿の上に盛られた魚の塩焼きが置かれた。この辺りは海から遠いから、この魚も川魚だろう。地球に居た頃は、殆ど食べたことが無かったけど、こっちに来てからは魚と言えば川魚だ。最初は腸に抵抗があったけど、しばらく食べてたら気にならなくなった。やっぱり、こういうのは慣れだな。


「たまには良いじゃないか。俺も、こんなにゆっくりリーザスの町を歩いたのは初めてだったんだよ。できれば、スタンピードの前に綺麗な状態の街並みを見てみたかったな」


魚にフォークを突き刺し、頭から思いっきり齧り付く。下品なんて言わないでくれよ、このあたりでナイフとフォークで上品に魚や肉を食べる奴なんていない。アサギなんかは、両手で持って少しずつ食べるけど、カメリアは俺と同じ頭から丸齧りだ。というか、俺の食べ方はカメリアから学んだ結果だ。


「それで、何か面白い事でもあった?」


「…………ゴクっ、初めて願いの塔の真下まで行ったよ。そしたら、ソウルたちと鉢合わせしてな。あいつら、もう願いの塔に潜ってたよ」


「ちっ、追いついたと思ったらこれだ。いつか、あいつらを追い抜いてやるぜ」


カメリアもソウルたちに対して、悔しいと思う気持ちがあったか。まあ、あれだけ毎回毎回自分たちの上を行かれたら、だれでもそう思うか。


「他所は他所、うちはうちでいいじゃない。あんまりソウルくんたちの事ばかり見ていると、足元を掬われるわよ。こういうのは、最初負けてても最終的に追い抜いていればいいの。それに、最後の最後に追い抜いた方がカッコいいじゃない」


笑顔で言うアサギだけど、言ってる内容は俺達と大差ない。結局はソウルたちの事を意識していると言ってるようなものだ。


「その為には、一刻も早く探索者になりたいと思う。それで2人に相談なんだけど、明日探索者ギルドに言って、登録しないか?」


「随分急……でもないか。スタンピードが終わって1週間。確かに、そろそろ探索者登録をしても良いわね。休養も取れたし、私は賛成よ」


「アタイだって文句ねえ。というより、ずっと我慢してたんだ。とっとと探索者になって、願いの塔に行こうぜ」


決まりだな。


「よし、じゃあ明日みんなで探索者ギルドに行こう」


「おう!」


「ええ!」


いよいよだ。アサギに連れられて、リーザスに来てから約半年。いよいよ明日、俺は探索者になる。





「ところでホクトくん、ダッジさん達に装備の話を聞いたんでしょ?私も相談しようと思っていたから、ちょうどいいわ。何か言ってなかった?」


「明確な答えじゃないんだけどな、まずは探索者として生き残れる程度の装備品は最低でも必要そうだな。俺は、スタンピードの報酬を新調に充てようと思ってる。明後日にはゴドーの所に行くから、その時一緒に行くか?」


「……そうね。ゴドーさんの所に私が装備できる防具があれば良いけど」


そうか、アサギは魔法使い。俺達みたいに鎧を装備したりと言う事はしない。せいぜいがローブの中に厚手の服を着るくらいだ。そう言えば魔法使いの装備って、

どこで見繕えばいいんだ?


「アサギ、無理にゴドーの所で揃える必要は無いと思うぞ。そもそも、俺は魔法使いの装備を売ってる店を知らない。アサギが贔屓にしているところがあるなら、そっちで揃えた方が良いんじゃないか?」


「確かにそうなんだけど……ゴドーさんなら、なにか面白い物を見繕ってくれそうで。一緒に行って、気に入らなければいつものお店で揃える事にするわ」


「ホクト!アタイ、アタイも一緒に行くぜ」


アサギと一緒にゴドーの店に行く話をしていると、カメリアも食いついてきた。カメリアも、そろそろ装備を新調しても良いかもな。今の装備品は、俺とリーザスに来た時に新調したものだ。スタンピードを乗り越えて、俺と同じで色々ガタがきてそうだもんな。


「そうだな、カメリアも一緒に行こう。最低限、願いの塔の最初で即死しない程度には全員をグレードアップしないとな」


「考えてみると、タイミングとしては丁度良かったわね。スタンピードが無かったら、装備品を揃えるために必死になって冒険者の依頼を受けているところよ」


確かに。俺達は今、ある程度まとまった金を持っている。これは、スタンピードで活躍して手に入れた物だから、その前だと一新するほどの資金が無かった。まあ、アサギだけは持ってそうだけど……。


「アタイも特に欲しいもんが無いからな。報酬全部懸けても良いから、良いものを手に入れてえな」


「明日は探索者ギルドに行って、もし時間があったら、そのままゴドーの所に行ってみるか?俺の頼んでる装備品は、まだできてないだろうけど2人の装備品を見るなら付き合うよ」


二度手間になるけど、こういうのは一緒に行って色々探す方がイベントっぽくて好きだ。そのためなら、何度ゴドーの店に通う事になっても気にしない。俺はそう思ってたんだけど、アサギに苦笑されてしまった。


「気持ちは嬉しいけど、別に喫緊で必要なわけではないし。それに、明日探索者ギルドに行って登録したとして、即自由になる訳ではないと思うわよ」


「え、そうなのか?」


初耳だ。やっぱりアサギは頼りになる。俺は冒険者ギルドと同じで、申請したら即探索者になれると思ってた。見ればカメリアもそうだったようで、驚いた顔をしている。


「……呆れた。カメリアは、昔っから探索者になりたかったんでしょ?なんで探索者になる方法を知らないのよ」


「う、うっせえな!たまたま忘れてただけだ……」


カメリア、ここは素直に認めた方が楽だぞ。ここで無理してアサギに張り合うのは、茨の道だ。見れば、カメリアの目元と口元がヒクヒクしている。こいつ、本当に嘘をつくのが下手だ。それを見たアサギが、魔女のような笑顔を見せる。アサギも基本Sッ気があるから、こんなカメリアはカモでしかないだろう。


「ふ~ん。なら、私に教えてくれない?」


「……えっ?」


「ほら、私は別に探索者になるつもり無かったから、探索者の事とか良く知らないのよ。前から探索者になりたいと思ってたカメリアなら、教わる相手としてうってつけよね」


眩しいほどの笑顔。なのに、腹の中が真っ黒だと幻視できるほど禍々しい笑顔だ。ほら、カメリア。早く嘘を告白して謝れ。今なら、まだ傷は浅いぞ。


「やっ……ほら、たままた忘れちまったから」


「じゃあ、覚えてる事だけでいいわ。それでも、何も知らない私よりは色々知ってるはずだもの」


ピシッ


あ、カメリアが固まった。だから言ったんだよ、さっさと謝っとけって……あ、口に出してなかったか。


「そ、それが……な。ど、どどどういう訳か、たた探索者のこことについてだけ、忘れちちまってな……ハハハ、いや面目ねえ。せせせっかく、アサギがたたた頼ってくれたのに…………な」


カメリアの冷や汗が止まらない。蛇に睨まれたカエル、もう視線が左右にブレッブレで挙動がおかしい。もう、誰の目から見ても嘘をついているのがわかっているのに、なぜカメリアはこうも引き際が悪いのか。


「そう……それは残念だわ」


「ハ、ハハハ……いやぁ、すまねえすまねえ」


アサギの目が、細く瞑られる。カエルに飛びかかる寸前の蛇のようだ。これは、俺の方から助け舟を出さないとカメリアが発狂して暴れそうだ。止めよう。


「だったr……」


「あ、アサギ!今は良いんじゃないか?どうせ、明日ギルドに行ったら説明されるだろうし……俺もアサギも知らないんだ。そこで教わろう」


「えっ…………そ、そうね」


アサギが渋々頷く。良かった、追撃を止めてくれた。全く、カメリアを揶揄う時だけ喜々として揶揄うんだから。まあ、仲が良いって事にしておくけど……あんまりやり過ぎないでほしい。


「ほら、カメリアも汗を拭け。お前は知ってるのかもしれないけど、俺達と一緒に忘れた分を思い出そうぜ」


「お、おう!そうだな!」


ああ、嬉しそうに。お前は気付いてないけど、目の前のアサギがまだ諦めてないぞ?これ以上下手を打ったら、もう助けないからな。


「なら、明日が本番なんだ。今日は早めに寝ようぜ」


これ以上はボロが出ると思ったのか、カメリアが普段は寝ないような時間にも拘らず就寝宣言をする。


「……そうね。私もそろそろ休むわ。お休みホクトくん」


「ああ、お休み」


「お休みホクト!」


「お休み、カメリア」


2人が二階に上がっていくのを見送る。さて、いよいよ明日だ。アサギの言い方だと、すんなり申請が通って終わりって感じじゃなさそうだ。気負う必要は無いけど、目標に近づく一歩だ。絶対に躓かないように気を付けよう。

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