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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
7章 続・町を守ろう
164/240

42話 竜神の鉾VS巨人

総PVが10万を越えました。

読んでいただいた皆様、ありがとうございます。

これからもがんばりますので、よろしくお願い致します

口火を切ったのは竜神の鉾。メンバーは全部で6人、そして全員が竜人族だ。


「風よ! 全てを切り裂く刃となれ! ウィンド・スラッシュ!」


のっけから魔法か、巨人の顔目掛けて目に見える風の刃が襲い掛かる。あれは、鎌鼬か?さすがの巨人も両腕で顔を覆って防御に徹する。


「よし、ゆくぞ!」


前衛の3人が巨人に向かって駆けだす。竜神の鉾は、剣士2、槍術士1、弓術士1、魔法使い2の構成だ。元々竜人族って言うのは、肉体的にも魔力的にも人種よりも遥かに能力が高い。パーティに1人でも竜人族がいれば、それだけでBランクパーティに匹敵するくらいの能力になるそうだ。なんだそれ、どれだけチートなんだよ竜人族……って聞いた時には思ったものだ。とは言え、種族的に閉塞的な部分があるみたいで、竜人族自体には滅多にお目にかかれない。


「そんなチートが6人か……もう存在自体が反則だろ」


「何ブツブツ言ってんだ、ホクト」


「え、ああ……改めて戦ってる姿を見ると、竜神の鉾ってすげえなって」


「まあ、尋常じゃないくらい強いらしいからな」


ソウルから見ても、竜神族ってのは反則級に強いのか。改めて巨人と戦っている竜神の鉾に視線を向ける。開幕の魔法で、巨人の意識を上半身に集めておいて前衛で下半身を攻める。常道なんだろうけど、大きさの違いがあり過ぎて効果があるのかよく解らない。


「はあっ!」


「せいっ!」


剣士の2人が、巨人のふくらはぎを斬りつける。何度も何度も剣を叩きつけているけど、実際は言うほど効果がでていないようだ。やっぱり巨人の耐久力って半端ないな。


「あれ、剣でダメージ与えるのって難しくないか?」


「……難しいだろうな。俺だって、普通にやってダメージを与えられる気がしねえし」


ソウルもか。俺みたいに内部に直接ダメージを与えられる方が特殊だ。普通は、ソウルやグルドさん達みたいに武器をもって戦う。その武器も、だいたい斬撃と鈍器による打撃の2つに分けられる。そして、巨人の皮膚は斬撃に対して強い耐久性があるようだ。


執拗に右足のふくらはぎを狙っていた剣士2人だったけど、巨人が手で払うような仕草をすると、すぐに飛び退いた。そして、手が通過した後に再度右足に向かう。完全なヒット&アウェイだ。


「かぁ!良く攻めてんだけどな、如何せん相手が悪過ぎる。斬撃で巨人を倒すのは無理だろ……」


ソウルの言う通り、このままチクチクと斬り続けても皮膚を突き破る様な攻撃はできそうにない。巨人も段々イライラしてきたのか、何度も何度も手で払い除ける。そして、今度は右側に意識がいった巨人の左側からグルドさんが槍を構えて近づく。


「あ、グルドさんが……」


あまり大声で言うと、巨人に聞かれるような気がして、小声でソウルに告げる。ソウルもグルドさんの事は、視野に留めていたみたいで頷いている。


「戦術としては悪くない。実際、このパーティで一番攻撃力が高いのはグルドだろう。だけど……」


「……通用しないと思うか?」


「……」


ソウルも黙り込んでグルドさんの動作を追う。巨人は、まだグルドさんには気付いていないみたいだ。ここはチャンスなんじゃないか?


「剣技! 双竜斬!」


「剣技! 降竜閃!」


剣士2人が同時に剣技を放つ。狙いは、今度も右のふくらはぎ。


ガキン、ガギィン……


でも、やっぱり皮膚に食い止められる。攻めているはずの2人の表情は、どこか苦しそうだ。


「……多分、あんな風に止める事も出来ずに北門を破壊されたんだろう」


ソウルが、剣士2人の方を見て悔しそうな表情をしている。同じ剣士として、自分の攻撃が何の役にも立っていないと感じる事が悔しくて仕方ないんだろう。


「ウゴォアァァ!」


両手を組んで、頭上に掲げる巨人。そして、それを一気に地面に叩きつけた。その叩きつけられる衝撃に、剣士2人が呑み込まれる。一瞬見えたのは、砂塵の中を舞い上がる竜神族の姿だった。


「やられた!?」


「いや、まだ大丈夫……」


俺にはピンチに見えるけど、ソウルには、まだそう映っていないみたいだ。そして、叩きつけた姿勢のまま動かない巨人目掛けて、グルドさんが突っ込む。地面に接触した巨人の腕を伝って、一気に駆け上がる。


「おお、ワ○ダと巨像!」


意味もなく感動している俺の事など気にもしないで、顔付近にまで登ったグルドさんが、槍を持つ手に力を注いで、一気に突き出す。


「槍術! 雷光閃!」


槍の軌跡に沿って稲光が放出される。稲光は、巨人の身体を駆け巡って地面に吸い込まれていった。技を出し切ったグルドさんは、そのまま地面に飛び降りる。見れば、巨人の頬に一筋の傷痕ができていた。


「チッ、あれでもその程度のダメージかよ……」


頬の傷痕から毒々しい色の血が流れ出していた。グルドさんが槍で皮膚を突き破ったんだ。


「はは、すげえなグルドさん!あんな硬い皮膚をした巨人にダメージを通すなんて……」


俺は結果に対して浮かれていたけど、ソウルと……そして、何より攻撃した本人のグルドさんの表情は晴れない。とうの巨人はと言うと、傷つけられたことを何とも思っていないのか、しきりに拳を握ったり閉じたりしている。雷による感電も、多少は効果があったのか?


「……あれで、効いてないのか?」


「相手が悪いな。グルドの今の一撃、受け止めきれる奴なんてほとんどいないぞ。なのに、そのグルドの一撃を受けても、まるで何も無かったかのように振る舞う巨人の魔物……これじゃ、ジリ貧だぜ」


恐らく、北門を守っていた時も今のような攻防があったんだろう。そして、最後まで決定的なダメージを与えることができずに壁の破壊。魔物の流入へとつながったわけだ。


「それにしても、竜神族6人いても何ともならないのかよ……」


俺たち以外にも、この場には多くの冒険者たちがいる。そんな冒険者の中にも、すでに悲壮感のようなものを感じている者がいるみたいだ。ここまでの流れを見ていた俺だって、このままじゃ力尽きて倒れるグルドさん達の姿しか思い浮かばない。そう思っていると……。


「まだだ!」


吠えるような声で、自分を鼓舞するグルドさん。そして、それに呼応するように竜神の鉾の魔法使い2人が詠唱を始めた。


「……これは詠唱、だよな?何て言ってるか、解らないけど」


「魔法を使うのか?」


俺にもソウルにも、グルドさん達が何をしようとしているのか解らない。解らないけど、グルドさんや詠唱中の魔法使いたちの表情から、後戻りできない領域に踏み出している気がしてならない。


「おいソウル、なんかやばいんじゃないか?」


「ああ……この張り詰めた空気、良くない事が起こりそうな感じだ」


お互いに、このままでいいのかという思いはある。だけど、竜神の鉾に託した以上、俺達は彼らが諦めるまでは手を出さないようにしようと話し合っていた。


「頼むぜグルドさんよ……」


俺達が見守っている間も、剣士2人とグルドさんの攻撃や弓術士の精密射撃は続いている。だけど、どれもこれも巨人にダメージを与える事はできない。巨人の方も飽きてきているのか、さっきからグルドさん達への対応が雑になって来た。


「Aランク……それも竜神族が6人もいるパーティをもってして、ここまでの差があるのか」


隣のソウルが歯噛みしている。ここまで歯の鳴る音が聞こえてくる。俺だって、同じ気持ちだ。何とかならないのか……そう思っていた時、さっきから聞こえていた詠唱の音が止んだ。


「……詠唱が終わったのか?」


ソウルが魔法使いたちの方を見る。だけど、なぜか俺はグルドさんの方を見た。グルドさんは、俯きながら小さく口を動かしていた。俺に読唇術の覚えは無いけど、その口の動きは『すまない』そう言っているように思えた。


「グルドさん?」


その瞬間、訝しむ俺の耳に暴力的な咆哮が聞こえてきた。


「グルゥグアァァァ!!!」


「グゥガァァァ!!!」


余りの音量に、思わず耳を覆う。そして、音のした方を見ると……そこには、2匹の巨大な竜の姿があった。おいおい……竜だよ、本物のドラゴンだよ!え、なに?竜人族って、魔法でドラゴンに変身できるの?ドラゴ○ムかよ!


「はは、すげえ……俺、ドラゴンって初めて見た」


隣でソウルがキラキラした目でドラゴンを見ている。まあ、気持ちはわかる。俺だってこんな目の前に、ビルみたいに聳え立つドラゴンがいるんだ。震えが止まらない。


「そうだ、やっちまえ!巨人だろうが、ドラゴンが2匹いれば倒せない生き物なんていねえ!」


周りからも、目の前のドラゴンが竜神の鉾のメンバーだと解っているから故の声援が飛び交う。その声援を受けた2匹のドラゴンは、ゆっくりと巨人に向かって歩き出す。1匹は森を思い起こさせる深い緑色、もう1匹は溶岩のような赤黒い色、2匹のドラゴンは一定距離まで近づくと咆哮をあげて巨人に襲い掛かった。


「グルゥグアァァァ!!!」


「グゥガァァァ!!!」


巨大な怪獣が足を地につける度に、地震のような揺れが身体を襲う。2匹の突進を受けて、巨人の方も咆哮をあげて迎え撃つ。まさに巨大怪獣同士の戦いだ。こんなのテレビの中でしか見たことがない。大迫力の戦闘シーンだ。


「やれ、そこだ!」


深緑のドラゴンの爪が巨人を切り裂く。さっきまでが嘘のように、身体に爪痕がついて鮮血が噴き出す。よし、ダメージを与えている。思わず、堅く拳を握り込む。


「ウゴォオォォ!」


負けじと巨人の方もやり返す。拳が、足がドラゴンたちに命中する。それに怯むことなく2匹のドラゴンが巨人の身体に爪を立てていく。


「はっ、すげえ迫力!見ろよ、鳥肌が立ってきた……」


「俺もだ……なんだこれ、こんな戦いあっていいのかよ」


俺もソウルも、呆然として巨大怪獣同士の戦いを見守る。すげえ、とにかくド迫力だ。血が湧き立つ。俺は、この戦いを一生忘れられないだろう。


どれくらい戦っていたのか、巨人の身体はドラゴン2匹に切り裂かれ、まさに血塗れだ。だけど、深緑のドラゴンは片腕が動かなくなっている。赤黒いドラゴンも片目が潰されている。


「そろそろ決着がつくか?」


「そうだな……」


見守っている冒険者たちも、終わりが近づいていることに気づいているのか、握る拳に力が入る。


「グゥグォオォン……」


「グゥグルォオォン……」


2匹のドラゴンがお互いの顔を見て頷く。恐らく次が最後の一撃なんだろう。その覚悟が伝わってくる。


「……やれ。竜神族の誇りを見せてやれ!」


グルドさんが叫ぶ。それに合わせて2匹のドラゴンが咆哮をあげる。


「グルゥグアァァァ!!!」


「グゥガァァァ!!!」


巨人に向かって突進する2匹。対する巨人も、余力が残っていないのか受けの構えを見せる。この巨人の構えも、骨格が人間に近いからか、柔道家のようにどっしりした構えをしている。


巨人に先にぶつかったのは、赤黒いドラゴン。両腕で、巨人の肩口を掴んで捕まえる。そこから力任せに引き千切ろうとしているのか、両腕に力が入る。


「グゥガァァァ!!!」


取った、そう叫んだのかもしれない。だけど……。


「ウゴォオォォ!」


「グゥグギャアァァァ!」


巨人の抜き手が、赤黒いドラゴンの胴体を貫く。背中から突き出た巨人の手は、真っ赤な血に染まっていた。


「ああ!?」


「……やられた!」


周りからも悲鳴があがる。それでも、俺もソウルも諦めず事の成り行きを見守る。これで終わらない、きっと何かしてくれる。そんな期待を込めて。


深緑のドラゴンが、動きの不自由になった巨人目掛けて突進する。これは仲間諸共吹き飛ばす気か。


「グルゥグアァァァ!!!」


「ウゴォオォォ!」


ズブッ……


そんな音と共に、深緑のドラゴンの背中からも巨人の手が生えた。


「そんな、ここまできて届かなかったのか……」


「いや、あいつら……これを狙ってやがった」


ソウルの言葉に、え?っと思いながら塊になった巨大怪獣たちを見やる。すると、胴体を貫かれたドラゴン2匹が、徐々に前に進んでいる。それは、進むたびに自分の身体を激痛が襲っているはずなのに……2匹のドラゴンは、そんな事は気にしていないのか足を止めない。


「グルドさん!このままじゃ、あの2人が!」


思わず、グルドさんに仲間を止めるように懇願する。だけど、グルドさんはただ仲間を見ているだけだった。


「そんな、どうして……」


「竜人族の竜化は禁断の技だ。使えば命は無い」


「……えっ?」


「あの2人は、それを知った上で……命を賭して巨人を抑える道を選んだ。その覚悟を見届けるのが俺の務めだ。そう、2人を差し向けた……リーダーである俺の務めだ」


真っすぐに仲間を見つめるグルドさん。そこで、俺はさっきグルドさんが小さく謝っていた意味を知った。二度と戻れない片道切符の強力な力。それを使わないと勝てないと、前の戦いで気付いていたんだろう。今回、俺とソウルに頼み込んでまで、巨人と戦いたかったのは……最初から自己犠牲ありきのリベンジだったわけだ。


「そんな……」


「2人には、すまないと思っている。だが、われら竜神族はこういう種族だ。お前たちも、できればあの2人を褒めてやってくれ」


それだけを言うと、グルドさんは黙ってしまった。見れば、2匹のドラゴンは遂に巨人の首筋に牙を突き立てるところだった。身体を貫かれた瀕死のドラゴン。そして、そのドラゴンから致命傷の一撃を受けた巨人。最後にはお互いに絡まり合ったまま地面に倒れた。


「……倒したのか?」


その場にいる誰もが、動くことができなかった。目の前で相打ちで果てた、巨大怪獣の様をただただ見つめるだけだった。

ホクトの主観で話を作った結果、なぜかゴ○ラとそれを見守る自衛隊の

図になってしまいました。

だけど、やっとグルド……というか竜神の鉾の活躍が書けました。

グルドほとんど何もしてませんけど……。

残るは、リザードマンとの戦いだけとなりました。

長かった今章も、あと少しで終わります。

引き続きよろしくお願いします。

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