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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
7章 続・町を守ろう
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15話 総力戦

「アマンダさん!」


「待ってたよホクト、それにアサギたちもね」


東門で俺達を待っていたのは、全員揃った涼風の乙女のメンバーだった。それにしてもアマンダさんがいるなんて……もう身体は大丈夫なんだろうか?


「アマンダさん、身体は大丈夫なんですか?」


「大丈夫よ、ほら」


そう言って腰を捻るアマンダさん。確かに怪我をする前と変わらないように見える。だけど、その動きは……。


「なんか、エロいね……」


「アサギ……俺が言うのを躊躇ったセリフを」


そう腰の動きがエロいのだ。腰を左右に捻ればいいのに、なぜかクイッ、クイッとキレのある動きをする。あれだ、フラダンスとかの腰つきと同じ感じ。


「そう言ってやるな、アマンダとしては小僧に元気なところを見せようと張り切った結果なんだ……」


「それが例え、男を誘うような下品な動きでも……」


「私たちには止める事はできないわ……」


「そう思ってるなら、止めてよ!」


顔を真っ赤にして蹲るアマンダさん。あれ狙ってやってたんじゃなくて、素でやってたのか……案外アマンダさんも天然なんだな。


「コホン、それよりも。あなたたちに少し話があるの。詳しい話は中で話しましょう」


そう言って、門の側にある詰め所を指す。懐かしい、あそこは初めてこの町に来た時にケントさんに連れていかれた場所だ。そう言えば、ケントさんは大丈夫だろうか。俺達が休んでいる間も、この門を守っていたんだろう。少し心配だな……。


「アタイたちは良いけどよ、他の連中はどうすんだ?」


歩きながらカメリアが後ろを指さす。そこには、今回の作戦に参加したDランク以下の冒険者たちの姿があった。みんなどうしたらいいのか、戸惑っている。


「そうね……確かに、一言言っておく必要があるわね」


そう言うと、アマンダさんは集まった冒険者たちの前まで行って姿勢を正した。


「みんなよく来てくれたわ。私はこの東門を預かる涼風の乙女のリーダー、アマンダ。これからあなたたちをいくつかの班に分けます。基本は職能によって分けますが、どうしてもパーティ単位が良いと言うものは事前に言っておくように。詳しくは、このアイラから聞くように。アイラ、後は頼むわね」


「わかりました。それでは、これから皆さんにいくつか質問してきますので……」


アイラさんは、その場にいる冒険者たちに色々聞いて回るようだ。他にも何人かアイラさんに付いて行ってるから、その人たちも手伝うんだろう。


「待たせたわね、行きましょうか」


すでにスイッチが切り替わったのか、さっきみたいに天然な空気は微塵も感じさせない……俺も良く知る涼風の乙女リーダーの顔をしたアマンダさんがそこにはいた。


俺達と一緒に詰め所に行くのはアマンダさん、ビオラさんとキリュウ。ミルさんとディーネさんは門の前で待機している。


「今も外には魔物がいるんですか?」


「今はほとんどいないわ。今日までに警備隊の力も借りて、東門の周りにいる魔物はほぼすべて殲滅済みよ」


やっぱり警備隊も狩り出されていたのか。ケントさん、大丈夫かな。


アマンダさんに連れられて詰め所の中に入ると、そこには見知った顔があった。


「ケントさん!?」


「ホクトか、なんか久しぶりに会う気がするな」


「なんでケントさんがここに?」


「彼は、この東門に詰める警備隊の隊長よ。色々と聞くことがあったので、今回の会議に参加してもらう事にしたわ」


え、ケントさんってそんなに偉かったのか?普段は門の前で立っているだけだから、てっきり平の隊員なのかと思ってた。俺のそんな思いを見てとったのか、ケントさんが苦笑している。


「ちょっと前までは一隊員だったよ。だけど、今回のスタンピードで隊長以下上層の隊員が軒並み怪我を追ってしまってな。今残ってる隊員の中で、俺が一番年上なんだ……」


……何と言う貧乏くじ。普段は飄々としているケントさんが、今は若干青い顔をしているのがわかる。あれは、大分胃に来てるな。


「ホクトはケント殿と知り合いなの?」


「ええ、俺がリーザスの町に来た時からの知り合いです」


「そう……ケント殿も、気心がしれた仲間がいるなら多少は気が楽になるでしょう」


アマンダさんの言い方から察するに、ケントさんは俺たちが来る前からあんな感じなんだろうな。今度、何か差し入れを持っていこう。


「で、話しって何ですか?」


勧められた椅子に腰を掛けながら、アマンダさんに質問した。ここに連れて来られたって事は、どうせ碌な内容じゃないんだろう。それも、偵察のキリュウが一緒って段階でだいたい察しは付く。


「……ひょっとして、第四陣に何かありましたか?」


「……察しが良いわね。そうよ、すこし厄介な事になっていてね。ホクト達猛炎の拳の力を借りたいと思って呼んだのよ」


俺だけじゃなく、猛炎の拳に対しての要請のようだ。これは、俺達も貧乏くじを引いたか?


「キリュウ、お願い」


「……うん。実は、昨日のうちに四陣に変化がないか偵察をしに行ったんだけど……前に見たときよりも、大分様相が違ってたんだ」


キリュウが見た事を話していく。それによると、前に見たときは少なくともCランク以上で構成されていた群れに、DやEランクの弱い魔物たちが混じっているのを見たらしい。最初は見間違いかとも思ったけど、どうも近くにいた弱い魔物たちが四陣の進行に合わせて合流をしたんじゃないかと言う事だ。


「それって、混成部隊ができつつあるって事ですか?」


アサギから質問が飛ぶ。


「そうよ、ただでさえ厄介な第四陣だったのに、違う面倒事が加わってしまったわ」


「別の面倒事?」


確かに数が増えるのは厄介だ。俺達東門に割り振られた冒険者の数は60人程度、他の門にも同じくらいの人数が割り当てられてるから、こちらは総勢240人くらいの集団と言う事になる。元々四陣は数が予想よりも多いと言う問題があったのに、更に数が増えるのは守る方として大分苦しくなる。


「……違うのよホクト。問題は数だけじゃないわ」


俺の思考を読んだのか、アマンダさんが難しい顔をして俺に告げる。


「Dランク以下の冒険者も、外に出して戦闘に参加してもらう必要が出てきたって事ですか?」


アサギは何かを察したようだ。


「その通りよ。強力な魔物は、自ずと我々のような上位のランクの冒険者が対応することになるけど、それでは下位の魔物まで手が回らない。そこで、同じグループに上位の冒険者と下位の冒険者を入れて役割分担をすることにしたの。もちろん、ホクト達は上位枠に入ってもらうわよ?」


「それは……まあ、予想してましたからいいですけど」


「本来であれば、場内からの援護のために集めた下位冒険者だったけど、現状では場外で戦ってもらうのが最善と判断したわ。心苦しいけど、やってもらうしかない。もちろん、その分上位の冒険者たちへの負担も増えるわ。あなたたちも、覚悟をしておいてね」


俺達はいい。元々想定していたことだからすでに覚悟はできている。だけど、そんなつもりで来ていない下位の冒険者たちはどうだろう?


「いくら自己責任とは言え、結構な数が犠牲になってしまうのではないですか?」


アサギの指摘に涼風の乙女の面々は押し黙る。もちろん、こんな話をすると言う事はアマンダさん達にも解っていたんだろう。それでも、それを命令しないといけない立場にいるのは涼風の乙女だ。だったら、俺達ができることは少しでも多くの魔物を倒して、涼風の乙女の感じているプレッシャーを肩代わりしてやることだ。


「俺達やりますよ」


「いいの?ホクトくん……」


「はっ、さすがホクトだぜ」


パーティ内に反対意見は……無さそうだな。アサギも反対と言うよりは、俺の気持ちを汲んでの最終確認ってところだ。


「ありがとう。それで、これからの事なんだが……」


その後は、グループを分けて交代制で場外に出て戦う旨を伝えられた。夜通し戦う事を考えると、丸一日戦えるわけがない。そこで、上位冒険者……プラス俺たちをいくつかのグループに分けて、そこに下位冒険者を入れて1つのグループにするそうだ。それが全部で4グループ作られて、2グループずつが場外で戦う。2グループのうち、1つが場内に入ったら場内から1グループが場外に出てくる。ようは、トコロテンのように入れ替わりで戦うって事だ。1グループにつき2ターン戦ったら外れるイメージだ。


「1ターンは、だいたい3時間くらいかしらね。2ターンで6時間の連続戦闘になるわ」


ビオラさんが補足を入れてくれる。6時間か、結構な長丁場になるな。


「だいたいは以上ね。あとはアイラたちが面接をした内容を見て、外に出せない冒険者を伝令や救護班として使っていくことになるわね」


「面接?」


「聞き取りをして、無茶をするタイプか力量は足りているかを判断してもらってるの。アイラだったら信用できるし、それで死傷者を減らせると思うわ」


ビオラさんが教えてくれる。何と言うか、そこまでやるのかって感じだ。これが上に立って指揮をするって事なんだな。いつかは俺もするんだろうか……。


「あなたたち猛炎の拳は、第3グループよ。作戦開始後、2ターン目で戦場に出てもらう事になるわ」


「わかりました」


これでだいたい作戦の概要はわかったし、俺達の立ち回りもわかった。後は時間が来れば戦うだけだ。こんなことを言うと不謹慎かもしれないけど、できるだけ早い段階で覚えたてのユニークスキルを戦闘で使ってみたい。肝心な時に初めて使うよりは、ある程度使い慣れてから強敵と戦う方がましだろう。


一通りの話し合いが終わって、場の空気が弛緩したところでケントさんが話しかけてきた。


「ふぅ、ホクト達もいつの間にか凄くなってたんだな。俺の中では、まだソロで森に入って一角兎に良いようにやられてた頃のイメージから上書きされていないよ」


「俺だって成長するよ。それに、強くならないと守りたい物も守れないしね」


「……強くなったんだな、ホクトは」


俺は強くなりたい。もう自分の力不足で、誰かを失う思いをしたくない。俺の言葉を聞いて、涼風の乙女のメンバーやアサギたちも黙ってしまった。みんな、思うところもあるだろう。


「今回の襲撃が終われば、全てが終わる。それまで頑張るよ」


「ああ、俺達も陰ながら助力しよう」


「ケントさん達は、場内の見回りとかしないといけないもんな」


警備隊の人たちは、俺達と違って外で魔物と戦う事はない。警備隊の仕事は、あくまで町の防衛。住民を守る事がケントさん達の仕事なんだ。


「俺達が、外で思いっきり戦えるのは中を守ってくれているケントさん達がいるからだぜ。多分、他の人たちも警備隊の人たちに感謝してるって。だから陰ながらなんていうなよ、ケントさん達だって主役なんだからな」


「そうだな……ああ、そうだ。俺はそれがしたくて警備隊に入ったんだ。弱気になってどうかしてた。ホクト、町の事は任せて思いっきり戦ってきてくれ。そして、リーザスの町を守ってくれ」


「ああ、任せとけ!」


長く続いたスタンピードも、今回を凌げば人間たちの勝ちだ。そのためにも、ここは意地でも守り通してやる。

気付けば15話も使って、一度も戦闘描写がありませんでした。

次話からいよいよスタンピード最後の戦いが始まります。

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