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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
7章 続・町を守ろう
135/240

13話 つかの間の休息

ユニークアクセス数が1万人を超えました。

初めての作品で、ここまで来られるとは思っていませんでした。

これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

「どうしてノルンさんがここに?」


「私も今日は非番だったの。それで街をブラブラしてたんだけど……」


昨日ぶりのノルンさん。昨日はカメリアと一緒になって、結構酒を飲んでたと思うんだけど、さすがはできるお姉さん。カメリアと違って、休日を有効活用しているようだ。


「え、じゃあこの店に入ってきたのは偶然ですか?」


「偶然……って訳でも無いのよね」


そう言ってノルンさんが外に視線を向ける。釣られて俺たちも店の外に視線を向けると……。


「わぅ?」


外から中の様子を見ようと、チラチラ顔を出してるポロンがいた。


「ああ、ポロンか」


「これ以上ないってくらいの目印でしょ?」


確かに俺の知り合いなら、ポロンがいれば俺かハンナちゃんがいると思うのが自然か。それにしても……。


「ポロンがチラチラ顔を出してくるの、可愛いね」


「なんか、ギュッとしたくなってきちゃう」


少女2人は、服よりも愛嬌のあるポロンの仕草にメロメロになってしまっていた。そして、2人だけじゃなくノルンさんもポロンを見て顔を綻ばせている。


「かわいい……」


「あの、お客さん?」


俺達が買うのか買わないのかハッキリしないから、店員さんがどうしていいか迷っているみたいだ。せっかく服を選んでくれたのに、ちょっと悪いことをした。


「あ、ごめんなさい。買いますんで、見せてください」


慌てて店員さんが持ってきてくれた服に目を通す。持ってきてくれたのは、どれも街中で良く見るタイプの服だ。それぞれ微妙に色合いとかが違っているけど、俺にはそれ以外にどこが違うのか解らない。よくよく考えれば、日本にいたときも俺は服に頓着したことが無い。基本野球ばっかりやってたし、たまに買う時も町のファッションセンターとかで適当に見繕って買っていた。こんな俺が、異世界で……しかも小さな女の子の服を選ぶって、今更ながらに無理ゲーとしか言えない。


「う、うぅむ……」


「……お兄ちゃん?」


「大丈夫?なんか顔色悪いよ?」


2人の少女に心配されてしまった。だけど、言った手前ちゃんと選んであげないとエスカちゃんに悪い。この子の場合、気に入らなくても遠慮して喜んだふりをしそうだからな。


「あら、ホクトさんが服を選んでくれてるの?良いわね」


「うん……でも、なんかお兄ちゃんが辛そう」


大丈夫、大丈夫だからそんな顔しないで!額に嫌な汗をかきながら、一生懸命にエスカちゃんに会う服を選ぼうと悪戦苦闘する。


「へぇ、こういう襟の形も可愛いわね。私が子供の時には無かったわ」


すると、さりげなくノルンさんが出された服の違いを教えてくれた。あまりの嬉しさにノルンさんを見つめてしまう。やばい、惚れそう。


「うっ、コホン……」


少しわざとらしく咳払いをするノルンさん。いかんいかん、あまりの事に我を忘れてノルンさんを見入ってしまっていた。再び目の前にある服に視線を向ける。確かに言われれば、それぞれ微妙に襟元の形が違う。どれが流行りなんてわからないから、ここは純粋にどれがエスカちゃんに似合いそうかで考えよう。


「それにボタン、これも可愛いわ。これは、全て大きさが違うけど形はまったく同じね。こんなボタンがあるなんて……」


またもやノルンさんからキラーパスが飛んできた。ふむふむ、ボタンの違いもあるのか。


「これは最近の流行で、ある魔物の角から削りだしたボタンなんです。見た目以上に軽くて、形もほら……少し楕円になってるんですよ」


なんと、ここで店員さんからもキラーパスが来た。見ると、店員さんは俺の方をチラチラと見て一生懸命説明してくれている。ああ、本当にこの町は良い人がいっぱいで涙が出てくる。


ここまでしてくれたんだ、今の俺には目の前の服たちが全て違う個性を持っていることがわかる。後は、その個性のどれが一番エスカちゃんに合うかだ。慎重に慎重を重ねて吟味を続け、俺は1つの服を手に取る。


「これがエスカちゃんには似合うんじゃないかな?ほら、襟の形も可愛いし並んだボタンも可愛いよ」


「え……あ、ほんとだ。すごくかわいい!」


手に取って自分の身体に充ててみるエスカちゃん。今にもその服と一緒に踊り出しそうだ。どうやら、相当気に入ってくれたようだ。そんなエスカちゃんを見て、ホッと安堵の息が漏れた。


エスカちゃんには悟られないように、ノルンさんと店員さんに目でお礼を言う。


「私この服がいい。この服が気に入ったわ」


「じゃあ、それをかお……」


「一着だけだと、着まわせないから何着か買っておいた方がいいわよ」


さりげなくノルンさんがフォローしてくれる。そうか、せめて二着買わないと洗った時とか困るな。またまたノルンさんに助けてもらってしまった。


「じゃあ、もう一着は私が選んでいい?」


ハンナちゃんが手をあげる。それを見たエスカちゃんは笑顔で頷く。よかった、2人とも楽しそうだ。


その後店員さんまで巻き込んで、あれじゃないこれじゃないと色々物色する女性陣。終いには店員さんが別の服まで持ってくるしまつだ。当然、俺が選んだとき以上に時間をかけてハンナちゃんたちは更に一着の服を選んだ。


「ふぅ、やっと納得がいくところまで選べたね」


「うんうん、ありがとうハンナちゃん!」


お互いに両手を取り合って、ブンブン上下に振り回している。良かった、本当に良かった……これ以上長引いたら寝てしまうところだった。やっぱり、女性の買い物は長い。


「では、この二着でよろしいですね?」


「はい、それでお願いします」


「あ、でも……私お金が」


「良いわよ、一着は私が払うわ。もう一着はホクトさんが出すんでしょ?」


そう、エスカちゃんは当然お金を持っていない。それを知っていて買い物に連れ出したのだ。ここは元より俺が払うつもりでいた。


「そのつもりでしたけど、良かったんですか?ノルンさんは別に出さなくても……」


「出させて。ここまで関わっちゃったし、私もエスカちゃんのお役に立ちたいの」


俺としては、別に二着でも問題なく払えるけど……ここは、ノルンさんにも払ってもらった方がみんながハッピーになれそうだな」


「では、お願いします」


「はい」


一着はこのまま着ていくことに――俺が最初に選んだ服をエスカちゃんは選んだ――残りの一着は袋に包んでもらって店を出る。空を見上げれば、太陽は中天をやや超えていた。途端に『ぐぅ~』と可愛らしいお腹の音が鳴る。音の発生源に視線を向けると……。


「は、恥ずかしい……」


「恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。お腹が空くのは元気な証拠。ね、お兄ちゃん」


「そうだな、どこかで食べていくか。ノルンさんも一緒にどうですか?」


服を選ぶときに助けてくれたお礼に、ご飯をご馳走したいと思ってたんだ。ノルンさんの方を見ると、満更でもなさそうだ。


「私も一緒で良いんですか?」


「いいよ、ノルンお姉ちゃん一緒に服を選んでくれたんだから、一緒にご飯食べようよ」


ハンナちゃんのおねだり攻撃が始まった。そして、今回はエスカちゃんも一緒になって上目遣いでノルンさんを見上げている。あれ効くんだよな……ほら、ノルンさんが口元をぷるぷるさせて震えている。あれは、悶えるのを我慢してる証拠だ。


「じゃあ、一緒にご飯を食べましょう」


「「やった~!」」


ノルンさんの手を掴んで、エスカちゃんが歩き出す。それに合わせてノルンさん、そしてポロンが付いて行く。それにしてもエスカちゃんは大分変ったな。俺だけじゃなく、ノルンさんが一緒でも楽しそうにしている。


「良かったね、お兄ちゃん」


「ハンナちゃん?」


「エスカちゃん元気になって」


ああ、ハンナちゃんも心配してたんだな。


「そうだな。みんなで服を選んだって事が思いのほか楽しかったのかもしれないな」


「もう、焦ったんだからね。女の子の服を1つ選ぶのに、あんなにオロオロしちゃって……ほんと、お兄ちゃんは私が付いていないとダメなんだから」


嬉しそうな顔でハンナちゃんからダメだしされる。もはや、完全に出来の悪い弟を窘める姉の構図だ。おかしい、俺の方がハンナちゃんよりもずっと長く生きてるのに……。


「ほら、お兄ちゃんも早く行こう」


俺の手を握って走り出すハンナちゃん。エスカちゃんたちは、大分行った先で俺達を待っていた。さて、俺も腹が減ったし食べ物を売っている区画に行ってみるか。





「今日は屋台屋さん、やってるね」


「ハンナちゃんとエスカちゃんで、食べたい物を買ってきていいよ。はい、これお金ね」


「いいの?」


「せっかくだから、美味しそうなのを買ってきてね」


「わかった!絶対美味しいのを買ってくる。行こう、エスカちゃん」


「うん!」


少女2人は手を取り合って、何軒もある屋台に特攻していった。俺とノルンさんは、近くにあったテーブルに陣取って腰を下ろす。


「ありがとうございました、ノルンさん」


「いいえ、私も楽しいですから」


「今日非番なんでしょ?態々付き合ってもらっちゃって……」


ほんと、ノルンさんには頭が上がらない。普段からキリッとしていて、色々とサポートしてもらっているのに、非番の日にまで迷惑をかけちゃうなんて。


「私も良い気分転換になりました。やっぱり、最近は気が滅入る事が多かったですから……」


そうだよな、今はスタンピード中。俺以上に気を張り詰めているのがギルドの職員たちだろう。きっと、顔見知りの冒険者も何人かは帰らぬ人になっているんじゃないかな。


「非番の日にこんなことを聞くのはマナー違反な気がしますけど、門の外は大丈夫なんですか?」


「そちらは大丈夫そうですよ。他の町から来てくれた冒険者の人たちもいますから、余裕を持って魔物を倒しているそうです。ダッジさんも、今日は休んでますしね」


そうか、ダッジさんも今日は戻って来たばかり。英気を養うために休みを取っているんだ。


「そもそも明後日には、第四陣が射程圏内に入ります。それまでに、できるだけ休んでいた方が効率はいいはずです。ですから、ホクトさんも気に病む必要はありませんよ」


当たり前の事なんだけど、どうも気後れしてしまう。こればっかりは、日本人気質だから仕方ない。とにかく、今日は1日ハンナちゃんたちに付き合って、英気を養おう。


「難しいお話終わった?」


気付くと、目の前に料理を持ったハンナちゃんがいた。すぐ後ろにはエスカちゃんもいる。ちょっと仕事の話に意識を振り過ぎたな。その間にもハンナちゃんとエスカちゃんがテーブルの上に買って来た料理を置いて行く。


「大丈夫、軽く今の状況を聞いてただけだから」


「そう、なら早くご飯にしよう。お腹ペコペコ……」


「そうだな、今日は余計な事を考えずに2人と目一杯楽しもう」


この後も、ハンナちゃんとエスカちゃん、ノルンさんの4人と街を見て回った。当然ポロンは常にエスカちゃんの横だ。結局羊の夢枕亭に戻ってきたのは、オレンジ色の夕日に街中が照らされるころになってからだった。

ホクトくんは、日本でも服を買うときはガッと行って、サッと選んで、パッと帰るタイプです。


ちなみに筆者は、最近服をネット以外で買った事がないです。

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