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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
6章 町を守ろう
119/240

23話 第三陣ボス攻略戦(前編)

長くなったので分割します。


5万PVを超えました。ここまで見てくれた皆さん、ありがとうございます!

当初の目標は1万PV行けばいいと思っていたので、凄く嬉しいです。

物語はまだまだ続くので、次は10万PV目指してがんばります!

一体どれだけの時間が経ったのだろうか、周りからはユニークが居なくなっていた。俺がシッカの死に泣いている間に、みんなはユニークの掃討をしてくれたんだ。


「落ち着いた?」


アサギが声をかけてくる。今の俺は地面に座り込んでいるから、アサギを見上げるようなかたちだ。もうしばらくすると夕方になるだろう、太陽を背に表情の良く見えないアサギ。だけど、なぜか微笑んでいるように見えた。


「……みんなでユニークを倒したのか。ゴメンな、俺1人手伝わないで」


「ううん、みんなで決めたの。ホクトくんはそっとしておこうって。凄いんだよ、みんながねホクトくん1人に背負わせてしまったって……だから、ホクトくんが動けない今は自分たちがホクトくんの代わりに戦う番だって」


そうなのか、俺は自分のエゴでシッカを殺した。それ自体は後悔していない。だから、他の人たちが俺に対して何かを感じる事はないと思うんだけど。


「例え彼女を殺すことで、自分たちが助かるのだとしても、やっぱり自分の手で殺したい人なんていないよ……よいしょっと」


俺の隣に腰を下ろして、顔を覗き込んでくるアサギ。その顔はどこか悲しそうで、俺を気遣うような表情をしていた。参ったな、アサギにそんな顔をされるといたたまれなくなる。気分を変えようと、別の話題を振ってみる事にした。


「この辺りのユニークは、粗方片づけたのか?」


「……うん。もう、この辺りに魔物はいないよ」


「そうか……」


会話が続かない。普段なら、軽いノリで話せるのに……。そんな風に思っていたとき。


「グオォオォォォーーー!!!」


「!?」


「な、なんだ!?」


遠くの方で、獣?の咆哮が聞こえた。


「魔物は全部殺したんじゃ?」


「そう思ってたんだけどね……どうやらまだ終わりじゃないみたい」


俺が立ち上がるのと同時に、アサギも立ち上がる。そして、自然と集まってくる冒険者たち。


「よお泣き虫、もういいのか?」


ソウルが揶揄うように近づいて来た。こいつだけは、普段のノリで話しかけてくれるからこっちも気が楽だ。


「うるせえよ、ちょっと埃が目に入っただけだ」


「うわぁ~ん!って、声出して泣いてたじゃねえか」


「お前ね、そこは触れないのも優しさじゃないの?」


いつもと変わらないやり取り。それが、今の俺にとっては何よりもうれしい。ソウルとの掛け合いで、何とかいつもの調子を取り戻せそうだ。


「で、さっきのは何の声なんだ?」


「さあ?あのカメが、まだ吐き出し忘れてた奴を外に出した……とか?」


相変わらず巨大なカメはその場を動こうとしない。ここから見る限りじゃ、今回のスタンピード中は無害なんじゃないかと思えてくる。すると、そのカメの背中から一斉に鳥が空に向かって飛び立った。


「ギャアギャア」


「カァーアァー」


「な、何だってんだよ。なんであの鳥たちは、いきなり飛び立ったんだ?」


鳥が一斉に飛び立つ現象を俺は知っている。数年前、太平洋側の東北地方を襲ったあの大震災。東京にいた俺も強い揺れを感じた。あの時、それよりも前から集まりだしたカラスに不気味さを感じていたら、いきなり一斉に飛び立ったのだ。そして、その直後に立っていられないほどの強い揺れが東京を襲った。今目の前で起こっている現象は、あの時と同じものだろう。


「動物が本能で感じる命の危機。それが、俺たちに近づいてるんだろう」


「え、ホクトくんは、あの鳥たちの行動がわかるの?」


「昔、同じように鳥が一斉に飛び立つのを見たことがあるんだ。その時は、その直後に大地震が発生した。今回も、動物の本能に訴えかける危機が近づいてるんだと思う」


「本能……動物って、命の危険を感じるとそんな行動を取るのね」


それが何なのか分からない。だけど、間違いなくここに向かってきてるんだと思う。目を凝らして遠くを見つめる。すると、最初は感じなかった微弱な揺れ。それが徐々に身体に感じるほどの揺れに変わっていった。


「おいおい、本当に地震なのか?」


「いや、この揺れは巨大な何かが歩いてるときのもんだ」


ソウルが遠くを睨み付けて、揺れの正体を伝える。俺に見えない何かが、ソウルには見えているのか?


「あそこだ、カメの右側……とんでもないのが出てきたぜ」


ソウルが指さす方を見る。まだ距離はあるけど、確かに何かがこっちに向かってきている。あれは……いったいなんだ?


「総員戦闘態勢!」


アサギが声を張り上げ、戦闘準備を促す。それだけで、ここまで生き残った面々は各々の武器を携え散らばっていく。ここにいる冒険者たちは、もう細かい指示を必要としていなかった。


……シン……ズシン……ズシンズシン……ズシン……


「な、な、なんだあれは!?」


俺の眼にも異形な姿が映っている。他の冒険者たちも、自分の目に映るものが信じられないのか、ゴシゴシこすっている奴もいる。俺たちに近づいて来たもの、それは今までに見たことも無いほどの巨大な鬼だった。


「あれはオーガ?」


「あんなオーガ見たことないぞ?それよりも、あいつの持ってる武器……鉄の棒か?あんな巨大でぶっとい棒、あれを振り回されたらあっという間にミンチになっちまうぞ」


身の丈3m、身体中を強固な筋肉に覆われ、もはや山と言われてもの信じられるほどだ。そんなムキムキマッチョが、腰蓑だけを纏って右手に巨大な剣を持って歩いてくる。みんなオーガって言ってるけど、俺にはピッタリな単語があると思った。


「鬼……」


「なんだホクト、鬼って」


「俺の故郷の昔話に出てくる妖怪だ。鍛え上げられた肉体と巨大な金棒、そして額から伸びる2本の角。俺の思い描いていた鬼そのものだ」


「それって、本当にいた生物なのか?」


「架空の生き物だよ。そんな奴が仮にいたら、世界は人間じゃなくて鬼に支配されてたよ」


「……あの姿を見たら、そうあってもおかしくねえな」


俺たちが戦闘態勢のまま動けないでいる間に、仮称鬼は俺たちの目の前まで来て止まった。果たして、こいつもスタンピードに含まれるのだろうか?


「……グゥゥ、お前たちか?ワシの部下を殺して回っているチンケな人間どもは」


「しゃ、喋った!?」


こいつ魔物じゃないのか?今まで出会った魔物で喋ったのは、ホブゴブリンくらいか?それでも片言でしか喋らなかったのに、こいつは随分と流暢に人間の言葉を使う。驚いたのは俺だけじゃなかったみたいだ。周りの奴らも、魔物が喋ったことが信じられないのか開いた口が塞がらない。ソウルまでも、驚いた表情で固まっている。


「あ、あなたがこの群れのボスですか?」


果敢にもアサギが鬼とコンタクトを取る。黒い部分の全くない眼球がアサギの方を見る。アサギも良く見れば足が震えている。そりゃ、いきなり規格外のやつが目の前に現れれば恐怖もするよな。


「そうだ、人間のメスよ。ワシが、この群れで一番強い。本来ならワシの出番なぞ無かったのに、貴様らがいらん手間をかけさせるから……許さんぞ人間よ!ワシの部下を殺してくれた礼、たっぷりその身に味わえ!」


右手に握りしめた金棒を振りかぶり、一気に地面に叩きつけた。


「回避!」


地面を抉り、クレーターを作り出した金棒の威力。岩石をも砕くその破壊力は、そのまま範囲攻撃になる。飛び散った人の頭ほどもある岩石が、俺たちを襲う。


「ちっ、なんて無茶苦茶な奴だ!」


俺のいる場所は鬼から少し離れていたこともあって、岩石弾を避けるのは難しくなかった。だけど、至近距離でそれを食らった冒険者たちは、岩石共々吹き飛ばされていく。


「ぐひょっ!?」


巨大な岩石をその身に受けた冒険者は、岩石にぶつかるとその身を真っ赤な液体に変えてミンチにされた。他にも、避けるのに失敗した者たちは悲惨の一言だ。ある者は腕をもがれ、ある者は身体に無数の穴をあけ、ある者は両足を失いその場から動けなくなった。


「た、たった一撃でこの有様かよ」


正に地獄絵図だ。さっきまで一緒に戦っていた戦友たちが、逃げ惑うだけで理不尽に殺されていく。その中で、果敢に鬼に立ち向かう冒険者たちもいたけど、悉く叩き潰されている。岩石弾を避けながら、どうすればあいつを倒せるのか考えているけど、あれは人間に倒せる存在なのか?


「みんな、バラバラに攻撃しないで!1人じゃ無理でも、力を合わせれば攻撃は届くわ!」


アサギが周りの冒険者たちを纏めようとしている。だけど、目の前の恐怖にみんながみんな好き勝手な行動を取っている。ここにいるのは、リーザスでも上位の冒険者たちが集まっている。にも拘らず、目の前の鬼はそれを気にもしないで蹂躙していく。


「ガハハ!他愛ない、貴様らはそれでもここまで生き残った冒険者か。何と脆弱な生き物よな、人間と言うものは!」


金棒で吹き飛ばし、空いた左手で冒険者を掴んでは握り潰す。足元にも踏み潰された真っ赤な血の後だけが残っている。


「……こんな奴、俺たちだけでどうにかできるのか?」


既に俺の心は折れかけていた。目の前の光景に現実感がない。こんな生き物がいていいはずがない。そう結論付けて自分の殻に閉じこもろうとしていた俺、そんな俺を笑い飛ばすかのようにソウルが叫ぶ。


「美味しいシチュエーションだなホクト、あいつを倒せれば今回の作戦のヒーローになれるぜ!」


それは、まるで自分の敗北なんて考えてもいない。そんな自信に溢れた眩しい表情だった。

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