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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
6章 町を守ろう
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13話 命を懸けたかくれんぼ

気配感知を全開にしつつ、2体の魔物に近づこうとする。だけど、それ以上に3体の方が早い。お互い回り込むような動きで、俺を囲むように動いている。これは間違いなく連携を取っている動きだろう。


「向うとしては、先に3体の方が俺に接敵する方が都合がいいのか?」


俺が2体の方に進もうとすると、途端に3体の方が直線的にこっちに向かって来た。どやって連絡を取り合ってるのか分からないけど、最初から目を付けられてたのは俺だったって事か……。


「シッカの離脱に反応しなかったって事は、元から俺しか気づかれてなかったって事だな」


失態というより、隠密を持っているか持っていないかが今の状態を生み出したって事だろう。やっぱり偵察をするには、隠密が必要だったんじゃないか?帰ったらダッジさんに文句を言ってやる。


「まずは目の前の事だ。今のままじゃ、相手に良いように蹂躙されて終わりそうだ」


物陰に隠れ気配を消す。視覚の代わりに気配感知から得られる情報に集中する。伝わる情報からは、今だに一直線でこちらに向かってくる魔物の気配を感じる。自分では気配を消しているつもりになっているけど、今の状態は未だ相手に筒抜けだと言う事だ。


「もっと、もっと気配を殺すには……」


そもそも気配ってなんだよ。日本にいたときも、よく気配を絶つとかラノベや漫画で言ってたけど、実際どうすれば気配を絶てるのかまるっきりわからない。人の気配……呼吸や身動きしたときの音か?息を殺して身動きしなければ気付かないのかもしれない……。


「ふぅー……」


呼吸の仕方を変えてみよう。普段通りの呼吸から、極力音がしないような呼吸に変えてみる。慣れないから上手く息を吸ったり吐いたりできないけど、何度か繰り返したことで慣れてきた。結果的にだけど、心臓も緊張から早鐘を打つようだったものが徐々に静まってきた……さて、これでどうだ?


気配感知で、こちらに向かっていた3体に集中する。すると、一直線だった動きが徐々に左右にぶれるようになってきた。あいつら、この距離で俺の身体から出る音を聞いていたのか?


音を消すことが気配を絶つことに繋がると考えた俺は、更に自分の動作にも気を配るようになった。今俺は岩陰に背を預けて座っている。この状態は動いていないように思えて、実は少しだけ動いている。それは、呼吸に合わせた筋肉の収縮と衣擦れ音。自分の耳にすらほとんど聞こえない音だけど、音に敏感な奴からすれば音の塊なのかもしれない。そう考えて、呼吸と一緒に極力身体が動かないように心掛けた。その結果、向かってきていた魔物は更に右往左往する。実際には、まだこっちに向かってきているので、完全ではないだろう。だけど、最初よりは確信を持てなくなっているのかもしれない。


そろそろ相手との距離が50mを切ってきた。残りの2体の魔物は距離を詰めるでもなく、一定の距離を保って迂回してきている。これは、俺の背後を取るつもりか?それとも退路を断つつもりかもしれない。


追いつめられることに緊張をしそうになるけど、そこをグッと堪えて平常心を保ち続ける。ここで緊張したら、また身体からの音で気付かれそうだ。相手の気配に集中しつつも、近づいてくる魔物に気付かれないよう気配を殺し続ける。


そうしてどれくらい経っただろうか、ついに相手との距離が10mを切った。まさに今身を隠している岩の向う側に相手がいる。平常心を保つ努力をしつつも、額を流れる汗は止められない。


「フゴォ、フゴフゴ!」


「!?」


相手の鼻息が聞こえた。もう目と鼻の先に魔物たちがいる。ここで焦って身体を動かせば、今までやってきたことが無駄になる。恐怖心を抑えて平常心を保つように努力する。呼吸も早く浅くなりそうになるのを、さっきまでと同じようにと意識する。


気配はすでに5mを切っている。岩の向うからガサガサと、地面の草が揺れる音がする。これは……何かを草に押し付けている?聞こえてくる音から想像を働かせて考える。これは……地面の匂いを嗅いでいる!つまり、今手の届く距離にいる魔物は地面に鼻先を近づけて匂いを嗅ぐことを日常的にしている……四足で動く動物に近い魔物!


他にもチャッチャッと何かが地面をひっかく音がする。これは動物系の魔物が爪で地面をひっかく音だと思う。普段は意識の外にあった音の記憶が、今の危機的状況で呼び覚まされたのか、相手が見えていないにも関わらず相手がまるで見えるように感じる。極限状態だから感じるのか、それとも何かのスキルに目覚めたのか。どっちにしろ、今の俺には相手の場所が気配感知以上に感じる事ができる。


これはチャンスだ。さっきまでは見つかる事の恐怖があったけど、逆にこっちから奇襲をかける事ができるかもしれない。3体、いや3匹いる魔物たちに奇襲をかけられれば、上手く行けは今の状況をひっくり返せるかもしれない。逸る気持ちを抑え、上がりそうになるテンションを宥め、呼吸を一定に保つ。聞こえてくる心臓の音もいつも通りだ……トクン、トクン……大丈夫、俺はやれる。


一番近くにいた魔物の音が変わった。心なしか距離が離れているように聞こえる。これは、相手がこちらに背を向けた?そう感じた瞬間、俺は岩陰を飛び出した。


目に飛び込んできたのは女性の背中。しまった、人型だったか!?


「クソッ、もう止まらねえ」


それでも後ろを向いていることには違いない。それにここには3匹の気配しかない、つまり人がいるはずないのだ。極力音を立てないように魔物に近づき、その背中に向けて左拳を当てる。


「浸透」


「キィイェ!?」


振り替える女性……の姿をした魔物。よく見れば女性なのは腰辺りまで。そこから下は漆黒の毛並みを持つ犬系の動物のものだ。


スキュラ。


咄嗟に思い出したのは、そんな名前。確か美女の上半身と狼の下半身を持つ魔物だったか?振り返った女性の顔は確かに美女と言って問題ないくらい整っている。でも、今その顔は驚愕に彩られている。まさに見返り美人だな。


俺は止まらず、近くにいたもう1匹のスキュラに駆け出す。ここで、やっと俺と言う存在に気付いたスキュラ達。ここまでくれば奇襲は成功、俺は一気に魔力を足裏に集めて一気にスキュラに肉薄する。


「ブースト!からの……」


下半身に力を貯めるような動作。スキュラがこちらに向けて跳躍しようとしているのだろうが、そうはさせない。飛び出すと同時にカウンター気味に、スキュラの狼の方の鼻面に俺の膝がめり込む。


「ギャン!!」


鼻骨を砕かれた狼部分は、上半身と違った鳴き声で悲鳴を上げた。見れば上半身はその爪を俺に叩きつけようと手を広げている。狼の部分の痛覚と上半身の人型の部分の痛覚とは繋がっていないみたいだ。これじゃ、狼部分に浸透を当てても止まらないかもしれないな。


「キィェイェェ!」


両腕を広げて爪を振り下ろす。美女の抱擁にも見えるその攻撃、だけどそれが届くことは無い。一歩前へ踏み込んだ一撃が人型の顎を捉える。


グシャ!


「キェッ!?」


顎を潰された拍子に漏れる、スキュラの声。どんなに人型で美女だろうが、やっぱりこいつらは魔物だな。とても人間が出せるような声ではない。


目の前で顔中の穴から血を噴き出し崩れ落ちるスキュラ。良かった、初めて戦う魔物だったけど、浸透一撃で倒せた。人と獣のキメラだけど、頭は関係なく弱点なんだな。


「さて、残りの1匹は……」


最後の1匹の方に顔を向ける。仲間の2匹を目の前で倒されて尚、動かない3匹目。2匹に攻撃を加えている間も気配感知で追ってはいたけど、なんでこいつは俺に襲い掛かってこないのか……。


「キィィィ……」


失禁、俺が見た3匹目は目の前の状況に恐れをなしたのか、狼の股間部分から盛大に失禁していた。上半身が美女と言う事を考えると、随分と煽情的なビジュアルだ……まあ、当然何も感じないけど。人型である上半身についている美女の表情、そこに見えるのは恐怖。恐らく、ここにいる2匹のうちのどちらかが残った1匹よりも強く、この群れを統率していたんだろう。それを倒した俺に、反撃する意志さえ見せずに恐怖している。


「確かに見た目も若いか?人だったら、多分中学生くらいか……。だけど、残念ながらお前をここから逃がすつもりはない」


一歩残ったスキュラの方に踏み出す。多分、酷いのは俺の方なんだろう。戦意喪失した、見た目中学生の女の子(上半身限定)をこれから殺そうと言うのだから。自分でも何か感じると思っていたけど、残念ながらそんな感傷は無い。こいつらは魔物だ、さっきまで俺を殺そうとしていた奴らだ。


「俺も死ぬほど怖かった……だから、悪く思うな」


更に一歩、そこからは早かった。助走をつけて一気に加速する。向かってきた俺を見て、咄嗟に逃げ出そうと背中を向けるスキュラ。最高速度は俺よりも速いかもしれないけど、今この瞬間は俺が届く方が速い。


「浸透!」


魔力を練り上げた左拳がスキュラの後頭部に当たって爆ぜた。





「ふぅ……何とか3匹倒せた。ちょっと後味悪いけど、こっちだって死にたくない。弱肉強食の世界と言う事で諦めてもらおう」


戦闘が終わってしばらくすると、意識の外にあった痛みが戻ってきた。


「っく、治療しないで戦闘なんてやったから……さっきよりも痛え」


少しでも右腕を動かせば、激痛が襲ってくる。だけど、今はそれを気にしている余裕はない。それよりも、別にいる2体の方が気になる。気配感知では、こっちがスキュラ3匹と戦闘に入った頃から動きが無くなった。スキュラとの戦闘に意識を向けていた俺を挟撃するチャンスだったと思うんだけど、その2体は動かなかった。


「どういう事だ?仲間……じゃないのか?」


普通に考えれば魔物同士に仲間なんて概念は無いと思う。だけど、渓谷で見たあの光景が俺にその考えを捨てさせない。あらゆる種族が整然と並ぶその光景、あれは人の……それも軍隊とかの動きだ。俺だって本物は見たことないけど、映画なんかで整然と更新する某国の軍隊のシーンなんかは見た事がある。


「ひょっとして、こいつらはあの群れとは無関係……なのか?」


たまたま俺たちを見つけたから追いかけてきた。たまたま2つのグループから見つかって、それぞれが偶然に連携を取るような動きで俺たちを追いつめた。そんな偶然があり得るんだろうか?


「とにかく、さっさとシッカと合流しないと。そのためには、あの2体も倒していかないと合流するのが危険だ」


さっき意識してできるようになった、呼吸と動作。それを意識しながら、2体の魔物に近づいて行く。すると、そいつらは俺とは逆の方に向かって移動を始めた。


「あいつら、どこに行くんだ?」


今の歩き方でも、2体よりは俺の方が速い。このまま行けば、後少しで視界にも入ってくるだろう。だけど、なぜこのタイミングで俺から距離を取るのか?考えられる原因は……。


「シッカが見つかったのか!?」


その考えに至ったら、居ても立っても居られず全速力で駆け出した。今の俺は、かなり無謀なことをしていると理解している。だけど仮にシッカが見つかっていた場合、シッカは戦闘力は大した事がない。どんな魔物か知らないけど、ソロで2体を相手に出来るとは到底思えない。


「くそ、スキュラ達を倒した時点で、とっととシッカと合流する方向で動けばよかった」


幾ら言っても後の祭り。今は急いで2体に追いつき、シッカを守らないと。右腕が揺れる度に感じる痛み。額から脂汗となって身体を伝い落ちる。それでも、歯を食いしばりながら2体に魔物に追いつく。


「シッカ!」


「クエェ?」


「クイィ?」


だけど、そこにはシッカの姿は無く、2体の蜥蜴が俺を不思議そうに見ている姿だけがあった。


「……あれ、ひょっとして……俺の勘違い?」


突然現れた俺を見て、不思議そうな表情をする二足歩行の蜥蜴2体。あれってリザードマンってやつか?こんなところで、異世界の定番魔物リザードマンに会えるとは……。だけど、こんな状況じゃないときに出会いたかった。そして、俺は自分の早とちりを今になって気付くのだった。



名前:ホクト・ミシマ

性別:男

年齢:17

レベル:28↑

職業:拳闘士(Lv6)

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体力 :303(+14) +10↑

精神力:189     +6↑

攻撃力:200(+10) +8↑

防御力:193(+20) +4↑

敏捷 :389(+3)  +12↑

知能 :2

魔力 :161     +8↑

運  :42

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スキル:

ダーレン大陸共通言語(Lv3)

鷹の目(MAX)、集中(MAX)

気配感知(Lv4)↑、魔力制御(Lv4)

跳躍(Lv1)拳術(Lv2)

隠密(Lv1)NEW、集音(Lv1)NEW


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称号 :

初心者冒険者(体力に小補正)

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装備 :

銀の籠手(攻撃力+10)

ショートソード(攻撃力+5)

群青の鱗鎧(防御力+20)

グリーブ(敏捷+3)

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